973 / 1,052
第五章
当番制適用後……
しおりを挟む当番制適用後 担当ドーナ
ヒイラギによる当番制が施行された後、まず最初に静葉の元へ食事を持ってきたのはドーナだった。
「入るよ。」
「ん、今日から当番制が始まったのか。」
目を開けた静葉は、食事を持って入ってきたドーナへと視線を向けた。
「そういえば自己紹介がまだだったねぇ、アタイはドーナっていうんだ。」
「ドーナ……か。丁寧にありがとう、私は八雲静葉。静葉と呼んでくれて構わない。」
お互いに自己紹介を済ませると、ドーナは早速今日の昼ご飯である親子丼をスプーンで掬って、静葉の前に差し出した。
「ほら、口開けな。」
「んぁ……。」
少し開いた口の中へドーナは優しくスプーンを入れると、静葉に食べさせた。
「んんっ、美味い。優しい故郷の味だ。」
そう感想を述べた静葉に、ドーナがある質問を投げかけた。
「そのシズハとヒイラギの故郷って、日本って言うんだろ?」
「そうだ。柊から聞いたのか?」
「あぁ、ちょこちょこ話してくれてねぇ。随分便利そうな国だって聞いたよ。」
「はは、こちらの世界の人からすれば……確かに便利そうに思えるかもな。」
静葉は乾いた笑いを浮かべた。
「どう言う意味だい?」
「こちらの世界でも法律や憲法なんかはあるんだろう?」
「まぁ、そうだねぇ。」
「私達がいた日本では、それがとても複雑に……そして厳しく定められていてね。そこに税金というものも加わって、生きているだけで金欠になって苦労したものだよ。」
「そうだったのかい。」
「ま、それはあくまでも日本に住んでいた私の感想さ。観光に来る分にはいいところだと思う。風情もあって、何より飯が美味い!!」
ドーナから親子丼を食べさせてもらいながら、静葉は目を爛々と輝かせてそう言った。
「違う世界に観光か……そんな事が出来れば良いんだけどねぇ。」
「ん?できないのか?」
素朴な疑問を投げかけてきた静葉に、少し戸惑いながらドーナは答えた。
「そ、それは……アタイにもわかんないよ。」
「ふむ、私や柊をこちらの世界へ呼ぶことができたのだから、その逆も可能なのではと思ったが……また話が違うのかな。」
「じゃ、じゃあ仮に戻れるとして……シズハは自分の故郷に戻りたいと思うかい?」
どんなにその質問に静葉はくすりと笑うと、こう答えた。
「そうは思わないな。今の私のいるべき場所はここだ。多分、柊も私と同じ答えを返してくれると思うぞ。」
「そうかい、後で聞いてみるよ。」
食後のデザートまでしっかりと静葉に食べさせた後、ドーナは彼女に別れを告げて部屋を出るのだった。
4
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる