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第五章
現れる雷雲
しおりを挟むエートリヒからの要件を全て聞き終え、彼と別れた後、俺は王都の市場を訪れて普段使うような食材の調達を行っていた。
「うん、このぐらいあれば三日四日は持つだろうな。」
家には大喰らいが三名いるからな。ランとレイとグレイスと……あの三人は胃袋が普通の人間のそれじゃないから、本当に食べる量がとんでもない。
「さて、後はハリーノ達の営業の様子を見て帰ろうかな。」
そしてハリーノ達の様子を確認するために通りを歩き、彼女達が営業をしている場所へと向かうとやはり行列ができていた。
「相変わらず大人気だな。ありがたい。」
その行列の横を通って、彼女達が忙しなくお菓子を売っている様子を眺めていると……。
「ん?」
先程まで雲一つ無い快晴だったのに、急に影が降りたのだ。
「なんだ?雨でも降るのか?」
そんな疑問を抱いていると、みるみるうちに空が黒い雲で覆われていく。終いにはゴロゴロと雷の音が鳴り始めた。そしてゴロゴロと音がした直後、俺の真上で雲を切り裂くように稲妻が走ったのだ。
「落ちたら大変だ。危険だから俺も手伝って早く終わらせよう。」
小走りで彼女達の元へ近付く。
「あ、社長~お疲れ様です~。」
「みんなお疲れ様。雷が落ちてくるかもしれないから、並んでるお客さんに対応したら営業は終わりにしよう。」
「わかりましたぁ~。」
そして俺も手伝いに入ろうとしたその瞬間だった。
「ッ!!殺気!?」
真上から強烈な殺気を感じて、反射で上を向くが……そこには今にも雷を落としそうな雲があるだけ。
「社長~どうしましたぁ?」
「みんな、屈んで体勢を低くしてくれ。何か来る。」
「わわ、わかりましたぁ~!!」
そう声をかけた直後、雲の奥で一瞬ピカっと光が輝く。その光が見えた瞬間、俺の脳裏にカオスドラゴンがブレスの構えを取った姿がフラッシュバックする。
「まさかッ!!」
俺は直感を信じ、強く地面を蹴り抜いて少しでも高く飛び上がる。そんな俺を狙ったように、雷雲の中から巨大な雷が落ちてきた。
これを避ければ、下にいるみんなが危ない。俺が上空で受け止めるしかない。そう判断した俺はできる限り龍化を進めながら雷へと突っ込んだ。
落雷のダメージは、ボルトドラゴンから受けた雷で把握している。問題なく受け入れるはずだ。
「ふんっ!!」
高を括って雷をマトモに受けたのだが、あの時ボルトドラゴンに落とされた雷よりも、遥かにこの雷のほうが強力だ。
全身がビリビリと激しくしびれて、体のあちこちが焦げている。
想定外はあったもののなんとか雷の直撃を受け切ると、雷雲を切り裂きながらこの雷を放った主が俺の前に姿を現す。
「クヒヒヒ……よォ、随分探したぜ?龍モドキィ。」
悠々と俺の前に姿を現したのは、イヤらしい笑みをいっぱいに顔に貼り付けたボルトドラゴンだった。
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