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第五章
異常な魔物の発生
しおりを挟む龍集会があってから数日経つと、各地で異常な行動をとる魔物が現れ始めたと、報告が出始めた。
その報告によると、その魔物は自分以外の生物を全て敵と見なしているようで、なりふり構わず襲いかかってくるのだとか。
今日はそんな魔物が発生し、困っているという獣人族の国にあるジンバにシンとともに訪れていた。
「どうやらここにいる黒乱牛を標的に、凶暴化した魔物が襲ってくるらしいのだ。」
「まだ俺はその魔物と戦ったことがないんだが……強いのか?」
「ハッキリ言って、強くはない。ただ、恐ろしいところは、痛みにも死の恐怖にも怯むことなく向かってくることなのだ。」
「痛みにも怯まないのか……。」
それはなかなか厄介かもしれない。痛みにも怯まないということは、剣で腕を切り落とされようが、骨を折ろうが、怯むことなく襲ってくるということ。つまり、一撃で命を刈り取る以外に安全な討伐方法がない。
「昨日はたまたまベルグがここに来ていた故、討伐はできたらしいのだが、そのベルグも腕に怪我を負い、しばらくは戦線離脱だ。」
「そっか、でもまぁそれだけで済んだのならよかったよ。」
「うむ。」
そして、ジンバの街の前でシンと辺りの警戒をしていると、眼前にある森から赤い瞳を光らせて、灰色の毛並みの狼が何匹も現れたのだ。
「来たか。」
「いや、あれは違う……。報告にあった魔物は群れないのだ。」
狼たちの様子を伺っていると、遠くの方から木々を薙ぎ倒しながら、何かが近づいてくるのを感じた。
「また来るぞ。」
「うむ!!」
身構えていると、今度現れたのは巨大な赤い毛並みの熊。目は血走っていて、口元からは絶えずヨダレがダラダラと零れ落ちている。
その赤い熊は近くの狼たちへと視線を向けると、問答無用で襲いかかり、惨殺してしまった。そして今度は俺達の方へと視線を向けてきた。
「ヒイラギよ、来るぞ。」
「わかってる。」
喉がはち切れそうなほど大きな雄叫びをあげると、赤い熊はシンの方へと一直線に走っていく。
「まずは我からか。上等である。」
振り降ろされた赤い熊の爪による攻撃を、シンは大剣で受け止めた。刃で受け止めている故、熊は腕から出血するが、報告通りそれで止まる様子はない。
「むん!!」
腕にめり込んだ大剣を強引に振り抜き、シンは赤い熊の腕を切り落とした。しかし、それでも熊は止まらない。
「グオォォォッ!!」
再びシンへと振り下ろされる一撃……それを今度は俺が受け止めた。
「今度の相手は俺だ。」
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