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第五章
エルフ最長老 カリン
しおりを挟む今日の営業を終えて、部屋でゆっくりと過ごしていると、突然コンコン……と扉がノックされた。
「ん?フィースタの会議が終わったのかな?」
扉を開けると、そこにはフィースタと……彼女の他に何人かエルフが立っていた。
「お前がフローラが誤って連れてきた人間だな?」
そう問いかけてきたのは、先頭に立っていた一際身長の低いエルフの少女。
「こちらについてきてもらうぞ人間。聞きたいことがあるんだ。」
「は、はぁ……。」
そして俺は、彼女達に連れられて世界樹の方へと歩いていく。その世界樹のすぐ隣にある建物の中へと案内された。
「そこに腰掛けろ人間。話はそれからだ。」
「は、はい。」
周りにエルフしかいない中、椅子に腰掛けると……先程の背の低いエルフが口を開く。
「まずは、此度のフローラの失態でお前をこの国へと連れてきてしまったことを詫びよう。」
まず彼女は、不手際で俺がこの国へと招かれてしまったことを詫びた。
「厄介だった魔物を倒してくれたことも感謝している。お前には借りがある故、この国への滞在を許可したが……。こんな物を作って、売りさばき、一体何を考えているのだ?」
そう言って彼女はどら焼きを取り出した。その様子にフィースタは少々申し訳無さそうにしている。
「このどら焼きという甘味……はむっ、まったく持って度し難い。」
話しながら彼女はどら焼きを頬張り、ジッ……とこちらに視線を向けてくる。
「それを売り出したことに、特に意図はなくて、ただ利用されない食材で美味しいものが作れないか……試した結果がこれなんです。」
「……特に意図はないと申すか。エルフをこの甘味で籠絡しようと、謀っているわけでもないのだな?」
「もちろん。」
こちらの目の奥をジッと覗き込み、何かを確信すると、彼女は残ったどら焼きを口の中に放り込んだ。
「んむっ、良いだろう。その真っすぐで正直な目に免じて、この甘味を売り出すことを正式に許可する。」
「ありがとうございます。」
ペコリとお辞儀してお礼をいうと……。
「ただし、毎日我らにもこの甘味を献上せよ。もちろんただでとは言わん。これのように新たな甘味で我らを喜ばせた暁には……このエルフ最長老のカリンがお前の言う事を一つ、なんでも聞いてやろう。」
それは俺にとって願ってもない条件だった。
「今の言葉、飲み込まないでくださいよ?」
「もちろんだ。エルフに二言はない。その代わりお前も最高の甘味を毎日用意するのだ。」
こうして、俺はエルフの最長老だというカリンと契約を結んだのだった。
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