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第五章
ヒイラギの料理教室
しおりを挟むミクモと別れた後、俺は王宮に足を運んでいた。
「お待ちしておりました、ヒイラギ様。」
王宮の中へと入ると、すぐにメイドのレイラが出迎えてくれた。
「今日はよろしくお願いいたします。」
「あぁ、頑張って教えるよ。」
そして彼女に案内されて、俺は王宮の中にある調理場へと足を運ぶ。するとそこには、何人かのメイドさんがすでに待機していた。
今日俺がここに足を運んだ理由……それはシンの口に合う料理を、この王宮で働いているメイドさんに教えるためだ。
「「「本日はよろしくお願いいたします。」」」
「あぁ、よろしく頼む。」
こちらにお辞儀してくれたメイドさんたちにお辞儀を返してから、俺は一人一人に自作してきた本を渡していく。
「みんな行き渡ったな。それじゃあ、まずはこの本に書いてある内容から少し説明しよう。」
料理の教習に入る前に、まずは手渡した本の内容を説明する。
「この本には、シンが好きな料理と、好んで食べてくれると思われる肉を使った料理の作り方が記載されてる。基本的にここに記載されている作り方、分量通りに作れば美味しいものが作れるはずだ。」
メイドさんたちは本をぺらぺらとめくりながら、何度も頷いていた。
「ただ、料理には文章じゃあ説明できない技術ってものがある。それを今日、少しでもわかってくれれば嬉しい。」
本についての説明をしたところで、さっそく今日教える料理に使う食材を配っていく。
「今日教えるのは肉料理の基本中の基本……ステーキだ。ステーキはただ肉を焼いたもの…と思われがちではあるが、焼き方によって味が変わる。繊細な料理だ。その本の最初に書いてある通り、主に焼き加減は、レア、ミディアム、ウェルダンと三種類ある。」
ステーキ用に切り分けた肉に塩と胡椒を振って、一つずつ違う焼き加減で焼いて、メイドさん達に見せた。
「まずはこれ、ウェルダンだ。これは肉の中心部分までしっかりと火が入っている状態。生食できないような肉を焼く際に使う加熱方法だな。一番安全に肉を食べられる方法だが、肉のジューシーさは失われてしまう。」
メイドさん達は俺の説明をメモしながら、肉をよく観察している。
「次にミディアム。これは中心がほんのりと赤い状態。見てわかる通り、切ると肉汁が溢れ出してくるぐらいジューシーだな。このぐらいが一番ステーキらしい焼き加減で、美味しく食べられる。」
ただミディアムは、このほんのり中心が赤い状態でもしっかりと中には火が入っている状態だ。俺はこのぐらいの焼き加減が一番好きだな。
「で、最後にレア……これは表面を超高温でさっと焼いただけの状態だ。切ってみると中はほぼ生の状態だな。この焼き方は、生食できる肉じゃないとやっちゃダメだ。」
一通り焼き方を説明した後、今度は彼女たちに実際に三種類の焼き加減で肉を焼いてもらった。王宮のメイドに選出されるだけあって、みんな覚えが早く、あっという間に三種類の肉の焼き方をマスターしてしまった。
この分だと、あっという間に本に記載した他の料理もマスターしてしまうだろうな。シンの食事事情もすぐに解決を迎えそうだ。
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