720 / 1,052
第四章
潜入成功
しおりを挟む永遠にも感じられた、グレイスとの壮絶な飛行の時間もついに終わりが訪れたようだ。トップスピードから徐々に速度を落としつつ、グレイスは言った。
「ヒイラギさん、すんごいおっきな街が見えるっす!!」
「もう少し高度を落としてくれ、着陸できそうな場所を探すから。」
グレイスの目には下にあるその王都らしき街が見えているのだろうが、残念ながら俺には見えない。何せ、今はまだ雲の上にいるのだから……。
「了解っす。でもバレないっすかね?」
「漂っている雲に隠れながら行けば問題ないだろう。とにかく街が見えれば十分だ。」
街さえ目に入れば、後は人気のないところを見つけて着陸すればいい。そしてグレイスは少しづつ高度を下げていく。厚い雲を抜けると、そこにはマーレなどの街が比較にならないほど大きく、発展した街が見えた。
その街の中央には、まさに巨城……と呼ぶにふさわしい、大きな西洋式の建物があった。
「あれが城か。」
きっとあそこに国王がいるはずだ。目的地はあそこだが、直接向かうわけにもいかないな。
「あそこらへんがちょうどよさそうだな。」
城から少し離れたところ、かつ人通りが少なさそうな場所を見つけたので、さっそくグレイスに向かうように指示を出した。
「グレイス、あの端っこのほうに向かってくれるか?」
「了解っす!!」
指示通りグレイスは指し示された方向へ向かい、その直上でホバリングする。
「それじゃ、グレイス先に行くぞ。」
「うえっ!?ヒイラギさん何してるっす!?」
驚くグレイスを置いて、俺は背中からぴょんと飛び降りた。
「グレイスは体を小さくして、見つからないようにしてから来いよ~?」
落下しながらグレイスに手を振る。
「ちょ……マジっすか!?」
ぐんぐん俺の体は重力に従い、地面へと向かって、加速しながら落下する。そして地面が間近に迫った時、何かに肩を掴まれてふわりと宙に浮いた。
「さすがグレイス、よくやってくれたな。」
「あ、あとちょっと遅かったら危なかったっす!!こんなことはこれっきりにしてほしいっす。じゃないと自分の心臓が持たないっすよ~。」
俺の肩を掴み、パタパタと羽ばたきながら小さくなったグレイスが言った。意図を察してくれて助かったな。
「何はともあれ、王都に潜入成功だな。」
次に目指すはあそこだ。眼前にそびえ立つ、大きな城……。あそこに国王がいるはずだ。
2
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。


異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる