転生料理人の異世界探求記（旧 転生料理人の異世界グルメ旅）

第四章

フレイのお返し

　シアとメリッサの二人は、お腹いっぱいお寿司を食べると眠くなってしまったようで、早々に布団に入ってスヤスヤと寝息をたて始めた。

「シアとメリッサ、二人とも幸せそうな顔して寝てるわね。」

　そんな二人の姿を見てランがポツリと呟いた。

「あぁ、ずっとこの笑顔が続けば良いんだがな。」

　シア達の笑顔が絶えないような毎日になってほしいと願ってはいる。だが、もし今回の革命が失敗して戦争が勃発してしまった場合、もしかするとこの笑顔を見ることはできなくなってしまうかもしれない。

　戦争では多くの犠牲が出るのが世の理。もちろん見知った顔の人も……な。

「ヒイラギがいる限りは、シア達はずっと笑顔でいられると思うけどねぇ？」

「それはどういうことだ？」

「ドーナ、それはシア達だけじゃないでしょ？」

「それもそうだねぇ～。」

　どういう意味か理解できていない俺を置いて、二人はクスクスと笑いながら納得してしまっている。

「さて、じゃあワタシ達も明日に備えて寝ましょっか？」
 
「王都までは長旅になるから、ゆっくり体を休めておかないとねぇ～、それじゃヒイラギお先するよ。」

　そしてドーナ達もそそくさと布団に入ってしまった。シア達が布団の真ん中に寝てるから、今日はソファーの上で寝ることになりそうだな。
　ソファーに枕を置いてごろんと横になると、頭に違和感を覚えた。それもそのはずで、なぜかフレイの顔が目の前にあるのだ。

「……フレイ何してるんだ？」

「なにって…ひ、膝枕？」

　少し頬を赤く染めながらフレイは言った。彼女の手には、以前俺が使っていた耳掻き棒が握られていた。

「こ、この前はボクがやってもらったから……今日はボクがお返しにやってあげる。」

「あ、いや……だ、大丈夫なのか？」

「ふっふ～ん、大丈夫大丈夫っ。ちゃんとお姉様で練習したから。…………最初は下手っぴだったけど。」

　どうやらフレイは、リリンで耳掻きの練習をしたらしい。彼女にとっては役得……だったかもしれないな。

「そうか。それじゃあ優しく頼むよ。」

「えへへ、任せてよ。」

　自分以外に耳掻きをされるなんていつぶりだろうか……。すごい昔に師匠にやってもらったとき以来かもしれない。
　あのときは確か、気持ちよすぎてすぐに寝ちゃったんだよな。自分で耳掻きすると、寝ることはないのに不思議なものだ。

　こうして俺はフレイに自分の頭を預け、耳掻きをしてもらうのだった。