上 下
684 / 1,052
第四章

それぞれの美味しさ

しおりを挟む

「そういえばルビーブリムと、ブラックファッティのどちらが美味しいと思いますか?」

 イリスがふと疑問に思ったのか店員に聞いていた。さっきこのお店を教えてくれた魚屋の店主は、ルビーブリムの方が美味しいと言っていたが‥
 この店で働いていて、専門にこの魚を扱っている人ならばどう答えるのか気になる。

「そうですね、今の時期だとちょうどルビーブリムの産卵期直前なので脂がのっています。ブラックファッティもこの時期から脂を蓄え始めるのですが、一番脂を蓄えて美味しくなるのは、もっと海水の温度が下がる時期なんです。そういうことを踏まえると今の時期ではルビーブリムの方が美味しいと思いますね。」

 と、至極丁寧に教えてくれた。ルビーブリムは今の時期が脂がのっているのか……。産卵期直前だから栄養を蓄えないといけない時期なんだな。
 ブラックファッティは、マグロ同様に寒くなってぐっと海水温が下がる時期に脂を蓄えて、越冬しようとしてるんだろうな。

「なるほど~、ふふっ♪ご丁寧にありがとうございますっ。」

「いえいえ、これも私共の仕事ですので。」

 上機嫌になったイリスにペコリと一つ礼をする店員の男性。ここまで丁寧に接客されると気持ちがいいな。

「さてさて、それじゃあそろそろ行こう。」

「そうですね、皆さんもお昼ご飯を待ってるでしょうし。」

 もうそろそろ昼飯時か、早く戻らないとシンやリリンにぶーぶー言われそうだな。

「そうですか、それではまたのお越しを心よりお待ちしております。」

 俺とイリスはお礼を告げて店を後にした。また機会があれば来れるといいな。

「あとは、なにか買いたいものとかないか?」

「うーん、私は特に大丈夫ですけど……。ヒイラギさんは何かあったりしないんですか?」

「取りあえず当分の食料も確保できてるし、この街で美味しいと言われてる魚も入手できた。俺も特にないかな。」

 王都での革命にどれだけの時間がかかるか、正直予想もできないが……丸っと一ヶ月位は不自由なく生活できるぐらいの備蓄はあるし、問題ないだろう。

「何か、こう……イリスの思ってたデートにはならなかったかもしれないが、楽しめたか?」

「ふふっ♪私は十分楽しめましたよ?ヒイラギさんと二人で出掛けられただけで、私は大満足ですっ♪」

「そうか。」

「あ、一個だけやりたいことあるんですけど……いいですか?」

 ふと思い出したようにイリスが言った。

「なんだ?」

「帰るとき、手を繋いで帰ってくれませんか?」

 少しもじもじしながらイリスは言った。ちょっと恥ずかしいけど、それぐらいならお安い御用だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

ステータス999でカンスト最強転移したけどHP10と最低ダメージ保障1の世界でスローライフが送れません!

矢立まほろ
ファンタジー
 大学を卒業してサラリーマンとして働いていた田口エイタ。  彼は来る日も来る日も仕事仕事仕事と、社蓄人生真っ只中の自分に辟易していた。  そんな時、不慮の事故に巻き込まれてしまう。  目を覚ますとそこはまったく知らない異世界だった。  転生と同時に手に入れた最強のステータス。雑魚敵を圧倒的力で葬りさるその強力さに感動し、近頃流行の『異世界でスローライフ生活』を送れるものと思っていたエイタ。  しかし、そこには大きな罠が隠されていた。  ステータスは最強だが、HP上限はまさかのたった10。  それなのに、どんな攻撃を受けてもダメージの最低保証は1。  どれだけ最強でも、たった十回殴られただけで死ぬ謎のハードモードな世界であることが発覚する。おまけに、自分の命を狙ってくる少女まで現れて――。  それでも最強ステータスを活かして念願のスローライフ生活を送りたいエイタ。  果たして彼は、右も左もわからない異世界で、夢をかなえることができるのか。  可能な限りシリアスを排除した超コメディ異世界転移生活、はじまります。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

処理中です...