614 / 1,052
第四章
ハズレのくじ
しおりを挟む「お嬢ちゃんついてないねぇ~、今回も全部ハズレだ。」
「うぅ、お兄さんごめんなさい……。」
またしても全てハズレ……コレでもう20回引いた。当たりが出なかったせいで、シアは今にも泣き出しそうになっている。
「大丈夫だぞシア。」
一先ず泣き出しそうになっているシアをなだめる。そして改めて店主に向き合った。
「この中には絶対当たりが入ってるんだよな?」
「もちろん入ってますよ~?」
店主は入っていると言うが……その後俺が何十回と引いても小さいぬいぐるみ一つ当たらなかった。明らかにおかしい。
「お客さん運がないねぇ~。こんなに引いても当たんないなんて。」
どさりと積まれたハズレくじの山を見て、店主は薄ら笑いを浮かべながら言った。これ‥多分やってるよな。
日本の屋台でも良くある、いわゆる絶対に当たらないくじ屋と同じ事をこの店主はしてるんだろう。そっちがその気ならこっちにも考えがある。俺は一枚の硬貨を指で弾いて店主の前に落とした。
「しっ……!!白金貨ぁ!?」
「それでその箱の中のくじ全部買えるだろ?なに……当たらないなら、当たるまで引き続ければいいだけだ。」
くじを全て買うと言った途端に店主の顔色が悪くなる。まさかそんな客いると思ってなかったんだろう。
恐らくこの中には当たりくじなんて入ってない。それを知られるのが怖いんだ。
「さぁシア、この箱の中にあるの全部引いていいぞ。」
「ホント!?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
シアが意気揚々とくじを引こうとすると、店主は待ったをかけた。
「なんだ?」
「い、いや……今日はもう店じまいにしようかって。」
「あ゛?」
ふざけた事を抜かしている店主に顔を近づけると、俺は殺気をむき出しにして囁く。
「当たりが入ってないのはわかってんだぞ?」
「ひっ!?」
「あの一番上にあるブラックフィッシュのぬいぐるみ……その番号のくじを入れれば見逃してやる。わかったな?」
すると店主は必死にコクコクと頷く。そして冷や汗をダラダラと流しながら、シアにくじの入った箱を差し出した。
「さ、さぁお嬢ちゃん……引いていいよ~?」
シアがくじを引く前に、スッと箱の中に店主は何かを入れた。恐らくあれが当たりくじなんだろう。
「頑張れよシア。」
「しあちゃん…がんばって。」
「うん!!」
そしてくじを引き始めて何度目かで、めでたくお目当てのブラックフィッシュのぬいぐるみをゲットすることができた。
ぬいぐるみ一つに白金貨一枚は高いとは思うが……シアの顔に笑顔が戻らないよりはマシだ。親バカというのはこういう気持ちなんだろう。また一つ理解が深まった。
9
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる