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第四章

雨模様

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 夜が明けて、朝になった。しかしながら、外はあいにくの土砂降りの雨。今日は外に出るのは難しそうだな。

「そういえば、こっちに来て初めての雨だな。」

 今までずっと天気がいい日が続いていたから、なかなか新鮮な光景だ。この世界は雪とかも降るのだろうか?もし降るならシア達が喜びそうだな。

「雨~!!お外であそべないぃ~。」

「たいくつ…あめ…きらい。」

 シアとメリッサは、窓ガラス越しに外の様子を眺めて口々に言った。

「シア達退屈そうね?」

「あぁ、暇を潰せるようなものなかったかな……。」

 なにかシア達が暇を潰せるようなものがないか、ハウスキットの中を探していると……。

「ん?これは……。」

 開けた戸棚から出てきたのは、新品のトランプだった。確かこれは料理長が一時期マジックにハマったときに買ってた物だ。

「これならシア達が遊べるな。」

 まさかこんなところで、これが役に立つ日が来るとはな。トランプを片手に、窓際でボーッと外を眺めているシア達のもとへと向かった。

 そしてポンポンと二人の肩を優しく叩く。

「あっ!!お兄さん、どうしたの?」

「二人ともこれで遊ばないか?」

 手に持っていたトランプを二人に見せた。

「ぱぱ…なに…それ?」

「これはな、トランプっていうカードだ。これを使えば、いろんな遊びができるんだぞ?」

「面白そう!!」

 室内でもできる遊びに、二人は興味津々といった様子だ。

「あら、面白そうね?ワタシもま~ぜて?」

「アタイもまぜておくれよ。」

「ふふっ♪私もいれてくださ~いっ♪」

「ぼ、ボクもまぜてよ~!!」

 ドーナ達も暇をもて余していたのか、輪にハマってきた。トランプは大勢でやった方が楽しいから、大歓迎だ。

「じゃあ一番簡単な、ババ抜きからやってみようか。」

「「「ば…ババ抜き!?」」」

「わ、ワタシまだまだそんな歳じゃないわよ!!」

「アタイだってまだ二十代だし……」

「うぅ、確かにこの中では一番年上かも知れないですけど……。」

「ぼ、ボクもおばあちゃんって歳じゃないよ!?」

「あぁ……いや、そっちのババじゃなくてな。」

 ひどい勘違いをしている四人に、ババというのはどういう意味かというのを説明するついでに、みんなにこのババ抜きというゲームのルールを説明した。

 すると四人はホッと胸を撫で下ろす。

「まぁ、このジョーカー……つまりババを最後まで持っていた人が負けっていうゲームだ。」

「お兄さん、早くやろう!!」

「はやく…やりたいっ!」

「ふふ……ドーナ、あなたには負けないわよ~!!」

「アタイだって負けないよ!!」

 シア達に急かされながらみんなにカードを配る。そしてババ抜き第1回戦が始まった。
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