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第四章
アドルフ・エートリヒ
しおりを挟む一服を終えた俺は、今回ドーナと共にオーナルフという人物に会うため、街へと駆り出してきていた。今回は危ないかもしれない……という理由でシア達はハウスキットでお留守番だ。
ストックしてた料理をいくつか出してきたし、昼ご飯には困らないはずだ。
「関所の兵士が言うには、もうそろそろ着くって話だけど。」
「あの大きい屋敷じゃないか?」
指差した方向には、明らかに他の住宅とは違う、豪華で大きな屋敷があった。
「あれっぽいねぇ~。」
「近くまで行ってみるか。」
あそこがオーナルフという人物の屋敷と信じて、私とドーナは屋敷の方へと歩きだした。そして近くまで来たので門の前にある表札を見てみると……。
「確かにオーナルフって書いてあるな。」
表札で確認しているとひとりでに門が開いた。突然のことで思わずビクッとなってしまう。
「入れってことか?」
「そうみたいだねぇ。」
何が待っているかはわからない。一応最大限に警戒はしておかないとな。開かれた門をくぐり、中庭へと足を踏み入れる。
「手入れされてなさそうだな。雑草が生え放題だ。」
「これだけ大きな屋敷なのに、メイドを雇ったりしてないのかねぇ~。」
これだけ広い屋敷を持ってるなら、メイドの一人ぐらい雇う金はあると思うんだが……。今のところ誰もこちらを出迎えてくれるような人物は現れない。そして中庭を抜けて屋敷の扉の前に立った。
「さて、いよいよか。ドーナ、何が待ってるかわからない。警戒はしておけよ?」
「わかってる。」
警戒しながら扉を開ける。ギギギ……と重い音をたてて、少しずつ扉が開いている最中だった。
「っ!!」
ヒュン……という風切り音と共に、俺に向かって矢が射られた。とっさに片手で矢を掴みとると、矢の先端からポタポタと液体が垂れている。
無造作にポイッと矢を放り投げて、屋敷の中に入ると階段の上に一人の弓を構えた人物が見えた。
「今のを無力化するか、ただ者ではないなご客人。」
「あなたがオーナルフさん……ですか?」
「いかにも……と言いたいところだが、ご客人が用があるのはエートリヒではないのかね?」
「えぇ、そうです。では改めて聞きましょうか?あなたがエートリヒさんで間違いありませんか?」
「あぁいかにも、私がエートリヒ……アドルフ・エートリヒだ。」
ビンゴ……だが、俺にはもう一つ確認することがある。彼に悟られないように鑑定を使った。
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