480 / 1,052
第四章
カレーと頼れる女性の味方
しおりを挟む街から出て、森の中に展開していたハウスキットへと戻ってきた。
「ただいま…………。」
ハウスキットの扉を開けたその時だった……。
「フンッ!!」
「うッ!?」
鋭いライラの蹴りが目の前を通過していく。間一髪躱すことはできたが、反応できなかったらあの蹴りが顔面に炸裂していたことだろう。
「む…なんだ貴様か、侵入者かと思ったぞ。」
「し、侵入者って……。」
「ごめんなさいね?私が命令していたのよ。興味本意で近付いてきて、中に入ろうとする輩がいたら気絶させなさい……ってね。」
リリンの対応は間違ってはいない。もし入ってこられて、シン達の姿を見られたら大変だからな。
見られる前に気絶させて無力化する…これが最善策だ。
「そ、それは別に構わないんだが…せめて敵と味方の区別はつけて欲しいな。」
「‥‥善処しよう。」
そう無感情でライラは言った。
頼むぞホントに……毎回ここに入る度に攻撃されちゃたまったもんじゃないからな。
「それで、何かいい情報は掴めた?」
「あぁ、今日はたくさん報告がある。話すと長くなるから、ご飯を食べながら報告するよ。」
「わかったわ。」
リリンが納得すると、シンがこちらにズイッと顔を近付けながら聞いてきた。
「ヒイラギよ、今日の夕飯はなんなのだ?」
「今日の晩御飯はカレーライスだ。」
「かれーらいす……とな?」
シンは一体どういう料理なのか、わかっていない様子だが……一度食べたことのあるシアとランが敏感に反応した。
「カレー!?カレーって前に作ってくれたあれよね!?」
「シア、カレー大好きっ!!」
「今回作るのは、前にやったやつとはちょっと違うな。味はほとんど一緒だけど……。」
「でも美味しいんでしょ?」
「それは保証する。」
「ならなにも問題ないわよ~♪」
「シア今日もいっぱい食べるっ!!」
夕飯がカレーに決まりランとシアはとてもはしゃいでいる。その反応を見たシンが俺に問いかけてきた。
「ヒイラギ、かれーとはいったいなんなのだ?」
「カレーっていうのは、香辛料がたくさん入ってるスパイシーな料理だ。一度食べたら病みつきになるぞ?」
「ふふん、私達吸血鬼も病みつきにできるかどうか見物ね?」
「お姉様……いっつもヒイラギさんの料理に病みつきになってる気がするけど。」
フフンと威張るリリンの隣でフレイがぼそりと呟く。本人には聞こえていないようだから、気にしてはいないようだ。
みんなが騒ぎ立つ中、ドーナが一人不安そうな顔をしていた。
「ドーナ、カレーは嫌だったか?」
「い、いや!!そ、そんなことじゃないんだよ。ただ……。」
「ただ?」
「そ、その……最近ちょっと食べ過ぎで体重が‥…。」
少し顔を赤らめながらドーナはボソボソと言った。
なるほど……どうしたものか。 女性にとっては自身の体重の推移は、とても気になるものだろう。何とかしてやりたいが……。
「確かに言われてみれば~、前より少しお肉ついたんじゃない?こことか~? 」
「ちょっ!!脇腹をつつくんじゃないよ!!」
ドーナをいじれると踏んだランは、即座に彼女のもとへと近寄って脇腹をつついたり、プニッとつまんでいた。
「…………ヘルシー志向といえば、たしかアレがあるな。」
ふとあることを思い出した俺は、厨房へと向かった。そして米などが保管してある冷蔵庫を開けて、奥の方にしまってあった袋を取り出す。
「やっぱりあった。一時期すごいブームだったからな。」
その袋をもって俺はドーナのもとへと向かう。
「ら、ランだって最近ちょっと太ったんじゃないかい!?ほら腹の肉がつまめるじゃないか!!」
「ちょっと!!やめなさいよ!!」
「二人とも落ち着けって、今日は普通のご飯じゃなくてこっちを使おう。」
そして二人にその袋の中身を見せた。
「これは五穀米って言って、体を痩せやすい体質にしてくれるお米だ。」
カロリーは普通のお米とかと変わらないんだが、五穀米は食物繊維などの含有量が段違いだ。
日本ではダイエット食としても、これは人気だった。
「そ、それって食べるだけでいいのかい?」
「ん~、食べるだけだと効果は薄いかもしれないが……。これを食べて、適度に軽い運動を毎日してれば、自然に体重なんて落ちると思うぞ。」
ダイエットなんてしたことないから、はっきりとしたことは言えないがな。
まぁしばらく米にこれを混ぜて炊いて、様子を見てみればいいだろう。
26
お気に入りに追加
633
あなたにおすすめの小説
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話
此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。
電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。
信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。
そうだ。西へ行こう。
西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。
ここで、ぼくらは名をあげる!
ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。
と、思ってた時期がぼくにもありました…
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる