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第四章

カレーと頼れる女性の味方

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 街から出て、森の中に展開していたハウスキットへと戻ってきた。

「ただいま…………。」

 ハウスキットの扉を開けたその時だった……。

「フンッ!!」

「うッ!?」

 鋭いライラの蹴りが目の前を通過していく。間一髪躱すことはできたが、反応できなかったらあの蹴りが顔面に炸裂していたことだろう。

「む…なんだ貴様か、侵入者かと思ったぞ。」

「し、侵入者って……。」

「ごめんなさいね?私が命令していたのよ。興味本意で近付いてきて、中に入ろうとする輩がいたら気絶させなさい……ってね。」

 リリンの対応は間違ってはいない。もし入ってこられて、シン達の姿を見られたら大変だからな。
 見られる前に気絶させて無力化する…これが最善策だ。

「そ、それは別に構わないんだが…せめて敵と味方の区別はつけて欲しいな。」

「‥‥善処しよう。」

 そう無感情でライラは言った。

 頼むぞホントに……毎回ここに入る度に攻撃されちゃたまったもんじゃないからな。

「それで、何かいい情報は掴めた?」

「あぁ、今日はたくさん報告がある。話すと長くなるから、ご飯を食べながら報告するよ。」

「わかったわ。」

 リリンが納得すると、シンがこちらにズイッと顔を近付けながら聞いてきた。

「ヒイラギよ、今日の夕飯はなんなのだ?」

「今日の晩御飯はカレーライスだ。」

……とな?」

 シンは一体どういう料理なのか、わかっていない様子だが……一度食べたことのあるシアとランが敏感に反応した。

「カレー!?カレーって前に作ってくれたあれよね!?」

「シア、カレー大好きっ!!」

「今回作るのは、前にやったやつとはちょっと違うな。味はほとんど一緒だけど……。」

「でも美味しいんでしょ?」

「それは保証する。」

「ならなにも問題ないわよ~♪」

「シア今日もいっぱい食べるっ!!」

 夕飯がカレーに決まりランとシアはとてもはしゃいでいる。その反応を見たシンが俺に問いかけてきた。

「ヒイラギ、とはいったいなんなのだ?」

「カレーっていうのは、香辛料がたくさん入ってるスパイシーな料理だ。一度食べたら病みつきになるぞ?」

「ふふん、私達吸血鬼も病みつきにできるかどうか見物ね?」

「お姉様……いっつもヒイラギさんの料理に病みつきになってる気がするけど。」

 フフンと威張るリリンの隣でフレイがぼそりと呟く。本人には聞こえていないようだから、気にしてはいないようだ。

 みんなが騒ぎ立つ中、ドーナが一人不安そうな顔をしていた。

「ドーナ、カレーは嫌だったか?」

「い、いや!!そ、そんなことじゃないんだよ。ただ……。」

「ただ?」

「そ、その……最近ちょっと食べ過ぎで体重が‥…。」

 少し顔を赤らめながらドーナはボソボソと言った。

 なるほど……どうしたものか。 女性にとっては自身の体重の推移は、とても気になるものだろう。何とかしてやりたいが……。

「確かに言われてみれば~、前より少しお肉ついたんじゃない?こことか~? 」

「ちょっ!!脇腹をつつくんじゃないよ!!」

 ドーナをいじれると踏んだランは、即座に彼女のもとへと近寄って脇腹をつついたり、プニッとつまんでいた。

「…………ヘルシー志向といえば、たしかアレがあるな。」

 ふとあることを思い出した俺は、厨房へと向かった。そして米などが保管してある冷蔵庫を開けて、奥の方にしまってあった袋を取り出す。

「やっぱりあった。一時期すごいブームだったからな。」

 その袋をもって俺はドーナのもとへと向かう。

「ら、ランだって最近ちょっと太ったんじゃないかい!?ほら腹の肉がつまめるじゃないか!!」

「ちょっと!!やめなさいよ!!」

「二人とも落ち着けって、今日は普通のご飯じゃなくてこっちを使おう。」

 そして二人にその袋の中身を見せた。

「これは五穀米って言って、体を痩せやすい体質にしてくれるお米だ。」

 カロリーは普通のお米とかと変わらないんだが、五穀米は食物繊維などの含有量が段違いだ。
 日本ではダイエット食としても、これは人気だった。

「そ、それって食べるだけでいいのかい?」

「ん~、食べるだけだと効果は薄いかもしれないが……。これを食べて、適度に軽い運動を毎日してれば、自然に体重なんて落ちると思うぞ。」

 ダイエットなんてしたことないから、はっきりとしたことは言えないがな。
 まぁしばらく米にこれを混ぜて炊いて、様子を見てみればいいだろう。
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