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第三章

VSエンリコ

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 奴へと向かって一気に距離を詰めるが、不敵な笑みは一切崩れない。

「まァ、近づいてくるよなァ?ありきたりな動きだ。」

 そうぽつりと奴が言った途端に、俺の真下の地面が急激に盛り上がって壁となり、行く手が阻まれてしまった。

「っ!!なるほどな。」

 徹底的に自分に近づけさせないようにする戦闘スタイル……。厄介だが、それは同時に近距離戦は避けたいという意思の表れ。
 無理やりにでも近距離戦に持ち込めばチャンスはあるかもしれない。

 壁の横を通り抜けようとすると、また目の前に壁が現れる。

「埒が明かないな。」

 少し強引にいってみるか。

「纏い衣……雷。」

 足にサンダーブレスを纏わせる。

「ふんっ!!」

 その足を逆袈裟に薙ぎ、壁を両断する。するとその向こう側で少し驚いた表情を浮かべていた奴と目が合った。

「ハッ、なかなかやるなァ。レスやカオスドラゴンを倒したってのも伊達じゃなさそうだ。……だが。」

 奴がパンと手を合わせると、近くの地面が俺を押しつぶすように盛り上がってくる。すぐに離脱を試みたが……。

「っ!?」

 いつの間にやら足をつけていた地面が流動性のある地面に変質し、足が囚われてしまっていたのだ。

「潰れなァ。」

 勝ちを確信し、奴はニヤついているが……ここまで近づけただけで十分だ。からな。

っ!!」

「あ?」

 おそらく宝玉を摂取した際に得られたスキルの一つ、を使い、俺は奴の影の中へと一瞬で移動する。
 そして奴の体の背後に伸びていた影から飛び出すと、最大出力のサンダーブレスを纏わせた拳を振るう。

「もらったぞ!!」

 こちらをゆっくりと振り向いてくる奴の表情は少しぐらい歪んでいるかと思ったが……ちらりと見えた口元は未だ不気味に吊り上がっていた。

 しかし、そのまま拳はとんでもなく硬いものにぶつかり、辺りに雷鳴を走らせる。

「ハハァ~?なるほどなァ、とんでもねェ攻撃力だ。」 

「なん……だ?」

 俺の放った拳は奴の体に届く寸前で、六角形の小さなシールドのようなものに受け止められていたのだ。

「誇っていいぜ?今の攻撃は十分にオレ様の命を脅かすモンだった。ま、届かなきゃ意味ねェけどな。」

 けたけたと笑い、隙を晒している奴にドーナたちも攻撃を仕掛けるが……。

「っ!!硬っ……。」

「テメェらの攻撃は痛くもかゆくもねぇなァ。試しに自分の攻撃味わってみろよ。オラッ、リフレクトォッ!!」

 奴が両手を横に広げると、二人が強い衝撃を受けたように大きく吹き飛んでいく。

「っ、ドーナ!!ランッ!!」

「他人の心配してる場合かァ?テメェはテメェの心配しろよ。」

 そう奴が言ったと同時に体の自由が一切利かなくなる。

「ぐ……なん……だ?」

「オレ様ですら死ぬかもしれなかった一撃だァ、簡単にくたばっちまかもなァ!!」

 俺の攻撃を止めていたシールドがキラリと輝く。

「リフレクトォ!!」

 次の瞬間……感じたことのない強烈な衝撃が体を走り、脳にバチッと稲妻が走ったような感覚に襲われた。
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