上 下
284 / 1,052
第三章

ロクロ山の魔物

しおりを挟む

 王都の門を出た俺たちは、ひたすらロクロ山を目指して走っていた。

「このスピードならすぐ着くな。」

 走るスピードはもう車をはるかに超えている。これで日本に戻れたら、オリンピックに出られるな。

 そんなことを考えていると。隣を並走しているドーナが前方を指さした。

「山の麓が見えてきたよ!!」

 良く目を凝らしてみると、地面の土の色が変わっているのがわかる。その土の色が変わっている地点で一度足を止めると、周りを観察した。

「ここから木が生えてないんだな。」

「ゴツゴツした岩もその辺にゴロゴロ転がってるよ。」

「神剛石見つかるといいな。」

「そうだねぇ……。」

 期待を胸に、ロクロ山を登り始める。すると登り始めてすぐに魔物と邂逅することができた。

「お?あの魔物背中に石くっついてないか?」

 俺は眼の目に現れた一匹の魔物を指さした。眼前には、背中にゴツゴツとした岩をくっつけている大きなトカゲがいたのだ。

「あれはロックリザードだね。アタイ達の住んでる国じゃあまり見ることはない魔物だけど、こっちには普通にいるみたいだね。」

 やっぱり国が違えば魔物の生態系も違うらしいな。

「多分アイツが鉱石をくっつけてるトカゲの魔物だよな。」

 取りあえず一匹討伐してみるか。俺はロックリザードへ向かって足を踏み出す。

 周りがゴツゴツとした岩場のため足場が悪い。躓いたり踏み外したりしないように気を付けないとな。

 そしてロックリザードは近付いてくる俺を敵と認識したらしく、鳴き声を出して威嚇し始めた。

「グエェェェ!!」

「さて、お前は何の鉱石をくっつけてるのかな?」

 少しワクワクしながら、慣れ親しんだ構えをとった。するとロックリザードは自分の尻尾を口に咥えて丸くなり、こちらに向かって転がりながら体当たりしてきたのだ。

「おっと!!」

 半歩横に移動し体当たりを躱すと、ロックリザードは勢いそのまま山の麓の方へと転がっていってしまった。

「えぇ~?」

「行っちゃったねぇ。」

 まさか自分で自分の転がるスピードを制御できていなかったとは…盲点だった。次は気を付けよう。

 彼方まで転がっていってしまったロックリザードを、遠い目で見ながら俺達はロクロ山の上を目指すのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

処理中です...