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第三章
宴の始まり
しおりを挟むみんなで合流した後、レイラにとんでもなく広い宴会場へと案内された。
「こちらが本日の宴会会場でございます。」
中へ入ると既に多くの獣人族が待機しており、シンがこちらに手を振っていた。
「ヒイラギこっちだ!!」
シンが大声で俺の名前を呼んでいる。
彼が座っている円卓に腰かけた。目の前には先程作った料理とともに大きな壷が置かれていた。ふらりと芋の匂いがするのでこれが芋酒なのだろうな。
「先程から良い匂いのするものが目の前に置かれていてな。もうそろそろ我慢の限界なのだ。」
ヨダレを垂らしそうになりながらシンは言った。
周りを見渡すと興味深そうに料理を眺める獣人や、シンと同様に今にもヨダレを垂らしそうになりながら料理を眺めている獣人がいる。
「さて、役者も揃ったことだ。始めるとしよう。」
そしてシンは立ち上がると会場全体に響く声で言った。
「皆、今宵堅苦しいことは無しだ。思う存分楽しんでもらいたい。それでは盃に酒を注いだ者から立ち上がってくれ。」
俺はドーナ達に芋酒を注いだ。シアとフレイにはアプルの実の果汁を搾ったものが用意されていた。そして自分の分を注ごうとすると……。
「ヒイラギよ、我が注ごう。」
俺の盃にシンは芋酒を注いでくれた。お返しにシンの盃にも芋酒を注ぐ。
全員が立ち上がったのを確認してシンは言った。
「今ここに我は開演を宣言すると共に、ヒイラギとの五分の盃を交わす。それでは皆、楽しんでくれ!!」
シンの宣言と同時に、大きな歓声が上がり今宵の宴会が幕を開けた。
俺の隣に腰掛けたシンは、一息で芋酒を飲み干すと料理に視線を向けた。
「くはぁ~…うまいな。さて、ヒイラギのオススメはどれだ?どれから食えばいい?」
「先ずは生の肉と一番違いが分かりやすい、そこのステーキを食べてみてくれ。」
まず勧めたのはステーキだ。一番肉の美味しさをダイレクトに感じれる料理だし、生の肉との違いも分かりやすいだろうからな。
「ほうほう、では頂くとしよう。」
彼はステーキを一切れフォークで刺して口に放り込んだ。そして咀嚼した瞬間、カッ…と目を見開いた。
「むぅ!?焼いた肉とはこんなにも甘くとろけるものなのか!?」
「脂がいい感じにのってたからな、口のなかでジュワっと溶けるだろ?」
シンはブンブンと首を縦に振り、次の肉をまたフォークに刺して口に放り込んでいた。
「お兄さん!!シアもあれ食べたい!!」
「はいよ。」
シアにステーキをとってあげた。
「お兄さんありがとう!!」
「あっ!!ヒイラギさんボクも食べたいよ!!」
フレイ…君は取れる位置にいるじゃないか……と、思いながらもステーキをとってあげた。
「えへへ、ヒイラギさんありがと。」
さてさて、俺もゆっくり楽しませてもらおうかな。
美味しい芋酒を嗜みながら、自分で作った料理に舌鼓を打つのだった。
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