261 / 1,052
第三章
宴の始まり
しおりを挟むみんなで合流した後、レイラにとんでもなく広い宴会場へと案内された。
「こちらが本日の宴会会場でございます。」
中へ入ると既に多くの獣人族が待機しており、シンがこちらに手を振っていた。
「ヒイラギこっちだ!!」
シンが大声で俺の名前を呼んでいる。
彼が座っている円卓に腰かけた。目の前には先程作った料理とともに大きな壷が置かれていた。ふらりと芋の匂いがするのでこれが芋酒なのだろうな。
「先程から良い匂いのするものが目の前に置かれていてな。もうそろそろ我慢の限界なのだ。」
ヨダレを垂らしそうになりながらシンは言った。
周りを見渡すと興味深そうに料理を眺める獣人や、シンと同様に今にもヨダレを垂らしそうになりながら料理を眺めている獣人がいる。
「さて、役者も揃ったことだ。始めるとしよう。」
そしてシンは立ち上がると会場全体に響く声で言った。
「皆、今宵堅苦しいことは無しだ。思う存分楽しんでもらいたい。それでは盃に酒を注いだ者から立ち上がってくれ。」
俺はドーナ達に芋酒を注いだ。シアとフレイにはアプルの実の果汁を搾ったものが用意されていた。そして自分の分を注ごうとすると……。
「ヒイラギよ、我が注ごう。」
俺の盃にシンは芋酒を注いでくれた。お返しにシンの盃にも芋酒を注ぐ。
全員が立ち上がったのを確認してシンは言った。
「今ここに我は開演を宣言すると共に、ヒイラギとの五分の盃を交わす。それでは皆、楽しんでくれ!!」
シンの宣言と同時に、大きな歓声が上がり今宵の宴会が幕を開けた。
俺の隣に腰掛けたシンは、一息で芋酒を飲み干すと料理に視線を向けた。
「くはぁ~…うまいな。さて、ヒイラギのオススメはどれだ?どれから食えばいい?」
「先ずは生の肉と一番違いが分かりやすい、そこのステーキを食べてみてくれ。」
まず勧めたのはステーキだ。一番肉の美味しさをダイレクトに感じれる料理だし、生の肉との違いも分かりやすいだろうからな。
「ほうほう、では頂くとしよう。」
彼はステーキを一切れフォークで刺して口に放り込んだ。そして咀嚼した瞬間、カッ…と目を見開いた。
「むぅ!?焼いた肉とはこんなにも甘くとろけるものなのか!?」
「脂がいい感じにのってたからな、口のなかでジュワっと溶けるだろ?」
シンはブンブンと首を縦に振り、次の肉をまたフォークに刺して口に放り込んでいた。
「お兄さん!!シアもあれ食べたい!!」
「はいよ。」
シアにステーキをとってあげた。
「お兄さんありがとう!!」
「あっ!!ヒイラギさんボクも食べたいよ!!」
フレイ…君は取れる位置にいるじゃないか……と、思いながらもステーキをとってあげた。
「えへへ、ヒイラギさんありがと。」
さてさて、俺もゆっくり楽しませてもらおうかな。
美味しい芋酒を嗜みながら、自分で作った料理に舌鼓を打つのだった。
34
お気に入りに追加
637
あなたにおすすめの小説
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる