204 / 1,052
第三章
シアとベルグ
しおりを挟むベルグに案内してもらい、食料庫に連れてきてもらった。さてさて、どんな食材があるのやら。
食料庫の扉を開けると、中には大量の食材が入っていた。中には少し傷んでしまっているものもあるが、これだけあれば全員分まかなえるだろう。
「ここの敷地借りるぞ?」
「あぁ、好きに使っていい。」
俺は食料庫のとなりにハウスキットを出現させた。
「おぉ!?なんだこいつは!!」
「俺たちの家……みたいなものだ。それとさっきは他の兵士がいたから紹介できなかったが、もう二人俺には仲間がいるんだ。」
ベルグしか獣人族がいない状況になったので、マジックバッグの中で待機していたシアとグレイスを呼び出した。
バッグから出てきたシアはベルグを見るなり俺の後ろに隠れてしまった。
「お、おいヒイラギ。そ、その子供は?」
「先に誤解を解いておこう。この子は体毛が黒いという理由だけでこの獣人族の国から追い出され、人間の国に追放された。そしてたまたま森をさ迷っている所を俺が保護したんだ。」
「黒い体毛を追い出す仕来りか。そいつは昔の言い伝えだ。未だにそれをしているところがあったとはな。」
「昔の言い伝え?今はどうなんだ?」
「今はそんな差別なんか無い。現在の王に変わってから、そういった差別的なものは全て消えたと思っていたんだがな。」
そう言うとベルグはシアと同じ目線に腰をおろして、優しく語りかけた。
「嬢ちゃん、安心してくれ。オレ達は体毛が黒いからとか、そんなに理由で差別なんかしたりしない。約束する。」
そう言われたシアは俺の顔をじっと見てきた。信じても大丈夫なのかまだわからないらしい。そんな簡単に過去のトラウマは消えないから仕方のないことだ。
「シア、大丈夫だ。ベルグはいいやつだ。それに俺がついてる、何かあったら絶対に守ってやるからな?」
「う、うん。」
するとベルグは少しでも距離を縮めるためシアと会話をしようとした。
「お嬢ちゃん。おじさんはベルグっていうんだ。お嬢ちゃんのお名前も教えてくれないか?」
「……シア。」
少し怯えながらもシアは自分の名前を答えることができた。
「そうか、シアちゃんっていうのか。」
コクコクとシアは首を縦に振り、肯定の意思を示した。
「おじさんも、おじさんの友達も皆シアちゃんの味方だから、安心してほしい。シアちゃんの悪口言ったやつはおじさんがぶっ飛ばしてやるからな!!」
するとシアは少し考えた後にゆっくりと首を縦に振った。これを機に少しずつトラウマを克服できればいいんだが。
シアを落ち着かせるためにゆっくりと撫でながら、そう願うのだった。
77
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。


異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる