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第ニ章
始まりの街への帰還
しおりを挟むすさまじい速度で進むこと数時間……もうすでに以前昼休憩を挟んだ川の畔を通り過ぎている。
「お、おいグレイス、そろそろ休憩したほうがいいんじゃないのか?」
夢中で走り続けるグレイスにそう問いかけた。
がしかし…。
「自分は絶対に痩せるっすーーー!!」
相変わらずグレイスにはこちらの声は届いていない。
「グレイスったら、もう痩せることしか考えてないわね。」
「このぶんだと昼過ぎまでには着きそうだねぇ。」
「それじゃあ、今日はあっちについたら昼ご飯にしようか。」
お昼頃に目的地に着くことを見越して、向こうでお昼ご飯を食べる計画を立てた。すると、シアが興味津々な様子で質問を投げかけてきた。
「お兄さん!!今日のお昼ご飯なに!?」
「お昼かぁ……そうだなナポリタンにでもするか。」
今日は久しぶりにナポリタンを食べたい気分だ。
そうシアに伝えると、彼女は頭の上に大きな?マークを浮かべながら首をかしげる。
「なぽりたん?」
「前にパスタ作ったの覚えてるか?」
「うん。」
「あれと同じような感じの料理なんだ。味がちょっと違うけど……まぁ口で説明するより実際に食べてみたほうが早いさ。お昼を楽しみにしててくれ。」
「わかったぁ!!」
ほのぼのとした会話をしながら進んでいると、グレイスが張り切っているおかげもあって、あっという間に少し先に街並みが見えてきた。
「おっ!!もう見えてきたぞ、凄いなグレイス。」
「ハァハァ、が、頑張ったっす。」
街の近くで馬車の装備を外してあげると、ぐで~っと草原に仰向けになるグレイス。どうやら相当疲れたらしい。あのペースで馬車を引っ張っていれば無理もない。
「多少は瘦せたと思うぞ、馬車の装備に少し隙間ができていたからな。」
「ほ、ホントっすか!?やったっす~♪」
装備を外しているときに着けるときにはなかった隙間があった。痩せたのか…はたまた走っているときに緩んだのか…。どちらかはわからないが、まぁ痩せたということにしておこう。
馬車を仕舞った後は、いつも通りグレイスにはマスコットサイズに小さくなってもらい、シアに抱きかかえてもらう。
「よし、それじゃあ後はゆっくり歩いて行こう。」
そしていざ歩き出すと俺の右手をシアに握られる。
「えへへぇ~お兄さんのお手々捕まえた~。」
こういう仕草はとても可愛らしいのだが…手を握っている握力がまったく可愛くない力だ。例えるならばまるで万力……。
あとで力の加減とかも教えてあげないと、後々苦労しそうだ。
「あ~っ!?それじゃあ左手はワタシが貰うわ!!」
「ちょ、待ちな!!抜け駆けは許さないよ!!」
ぎゃーぎゃーとドーナとランが俺の左手を奪い合って争っている。
(平和だ……。)
こんな平和が長く続けばいいんだが……。
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