上 下
157 / 1,052
第ニ章

お酒を飲んだあとは…

しおりを挟む

 お酒を交えた楽しい夕食を終えて、ソファーに深く腰掛けてくつろいでいると、何人かにある異変が起こり始めた。

「ねぇヒイラギ~、もっとこっちくっついてよ~。」

 すっかり顔が赤くなったランが、ぐいぐいっと体を密着させてくる。ランはあの梅酒のソーダ割を一杯しか飲んでいないが、どうやらあまり酒には強くなかったらしい。

「ちょっとラン!!そんなにくっついたらヒイラギが苦しくなるだろ!!」

 そう言ってドーナはランから俺のことを引っぺがすと、今度は彼女が俺に密着してきたのだ。

 ドーナの顔もほんのりと赤くなっている……彼女も酔いが回ってるらしい。

 そして酔っ払い二人に絡まれながら、残っているウイスキーを飲んでしまおうとグラスに手を伸ばしたが……おかしなことに先程までグラスがあったところにグラスがない。

 嫌な予感がして俺の膝の上に座っていたシアに目を落としてみると……。

「んくっんくっ、ぷはぁ~!!お兄しゃぁん、こりぇしゅごい美味しぃ~♪」

「なっ、シアっ!?」

 すぐにシアからグラスを取り上げると、体に異常はないか問いかける。

「し、シア、体はなんともないか?苦しくなったりしてないか?」

「ん~?えへへぇ~、にゃんともにゃいよぉ~?でもにゃんだか…と~ってもぽかぽかしてきたぁ!!」

 すっかり酔っぱらってしまったようで、呂律が回っていない。

 今回はたまたま大丈夫だっただけかもしれない……今度からお酒を飲むときは気を付けないと。そう心に誓っていると、不意に顎をくいっと引き寄せられる。

「ちょっと~シアばっかり見ないでこっちもちゃんと見てよ~。」

 突然ランの顔が間近に迫る。思わず恥ずかしくなって目をそらそうとするが、それすらも許されない。

「ダメ、ちゃんとワタシの目を見て。」

「うぅ、な、何がしたいんだ?」

 別の意味で顔を真っ赤にしてしまうと、こちらの表情を見てランはクスリと笑う。

「あら?あらあら~顔真っ赤にしちゃって~♪そういうとこ可愛いわよ。」

「ま、満足したんならやめてく……れっ!?」

 今度はドーナに顔を動かされ、彼女と目と目を合わせる形になってしまう。

「ど、ドーナ?」

「アタイにも、そういう顔見せてくれよ。」

 少し嫉妬したように彼女は言った。そして満足したのかにこりと笑うと、目をつぶりこちらにもたれかかってきた。

「ん、寝ちゃったか。」

 チラリとランのほうに視線を向けると、ランもいつの間にかすやすやと寝息を立てている。膝の上にいたシアも、グレイスを抱いて眠ってしまっていた。

「イリス……って、イリスもか。」

 漏れなく、イリスもテーブルに突っ伏して寝ている。女神も酔っぱらうんだな。

 みんなが風邪をひかないように毛布をかけてあげると、俺は少しの間酔いを覚ますためコーヒーを一杯淹れるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

処理中です...