100 / 1,052
第ニ章
二人の女神
しおりを挟む昼食を済ませた後、みんなで次はどこに行こうかと話し合いが始まった。行きたい観光場所はまだあるが、その前に一か所寄っておきたい場所があったので一つ提案してみることにした。
「みんな、少し教会に寄っていきたいんだが。いいかな?」
「あら?ヒイラギは神を信じているのかしら?」
そうランに問いかけられた俺は、大きく頷いた。
「まぁな。」
なんて言ったって、俺がここにいるのがその確たる証拠なのだ。
「アタイは別に構わないよ。」
「シアもお兄さんについてく!!」
「そうか、それじゃあ悪いが少し付き合ってくれ。」
お店で会計を済ませると、シュベールの教会へと向かった。
シュベールの教会は、庭園の真ん中に綺麗な噴水が設置してあった。周りは花が咲き乱れていて、なんとも幻想的だ。
「おやこんにちは、お祈りかい?」
教会の敷地に入ると、修道服を着たおばあちゃんが話しかけてきた。
「えぇ、今日街へ来たのでせっかくなのでお祈りしようかな……と。」
「若いのにえらいねぇ、メル様もお喜びになるだろうよ。」
ここで祀っているのはメルという女神なのか。はてさて、どんな女神なんだろうな。
「さて、祈ってみるか。」
教会の中へと入り、中にあった女神像の前で祈りを捧げた。すると、前回祈りを捧げたときと同じ感覚が体を包んだ。
閉じていた目を開けると、目の前には大きな湖があった。その湖の中心にはテーブルとイスがあり、女性が二人向かい合うように座っている。
その内の一人はイリスで、俺に気がつくと微笑みながら手招きしていた。
「いらっしゃいましたね、こちらへどうぞ。」
「大丈夫よ、湖に沈むのは悪い心を持ってる者だけだから。」
二人に促され湖へ足を踏み出すと、不思議なことに水面が歩けるのだ。
湖の上を歩いて二人に近付く。
二人のすぐ近くまで歩み寄ると、イリスと一緒にいた女性が口を開いた。
「どうぞ座って?イリスから聞いてはいたけど、本当に淀みのない心を持ってるのね。」
「そう……なのか?」
「えぇ、あなたが歩いてきたとき……水面に波紋1つたたなかったでしょ?湖がこれだけおとなしくしてるってことはそういうことなの。」
「ふふっ、メルの湖には心が映りますからね。」
心の映る湖……。不思議なものだな。
そして用意されていたもう一つの椅子に腰掛ける。
「さてっと、はじめまして私の名前はメル。水の女神よ。よろしくね。」
「俺はヒイラギ クレハだ。縁あってイリスにこの世界に転生させてもらった。よろしく頼む。」
水の女神メルと軽い自己紹介をすませ、女神とのお茶会は始まった。
98
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる