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第一章

カグロの漬け丼

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 こちらの作業が終わったのでドーナとランの方に目を向けると、あちらでもどうやら決着がついたらしい。

「今回はアタイの勝ちだ。」

「~~~っ。つ、次は負けないんだから!!」

 ふふんと勝ち誇るドーナと、悔しそうな表情を浮かべるラン。今回の競り合いはドーナが勝利を収めたようだ。

「計り終わったか?」

「あぁ、今ちょうど計り終わったところだよ。」

「二人ともありがとう、助かったよ。」

「大丈夫さ、このぐらいなら任せてほしいね。」

「えぇ、是非手伝わせて欲しいわ。ぜーったいリベンジしてやるんだから!!」

 ドヤ顔を決めるドーナにランがバチバチと火花を散らしていた。

 ランのリベンジのチャンスを設けてやらないといけないだろうし、またお願いしてもいいかもな。

「あぁ、また次もお願いするよ。」

 さて調味液もできたから、漬けていこう。カグロの刺身を調味液の中に浸していく。

「後はご飯が炊き上がるのを待つだけだな。さぁ、それまで少し休憩だ。」

 ご飯が炊き上がるのを待っている間、みんなで飲み物を飲みながら休憩することにした。飲み物はドーナとランにはコーラ、シアはオレンジジュース、俺はコーヒーだ。

「なにこれ!!すごいシュワシュワしてるわ。」

「こんな飲み物があるなんて……。」

「それはコーラっていう飲み物だ。炭酸が口のなかで弾けて、飲んでて楽しいぞ?」

 二人は初めてのコーラに驚いていたが一口飲むと……カッと目を見開いた。

「これ、病みつきになりそうね。」

「暴力的なまでに美味しい飲み物だよ。」

 コーラの魅力にすっかり二人は虜になったようで。ごくごくと勢いよく美味しそうに飲み始めた。
 
 そしてつかの間をみんなでゆっくりしていると。ピーッと言うと音と共にご飯が炊けた。

「よし、それじゃあ盛り付けるぞ。」

 どんぶりにご飯をよそい、その上に大葉を一枚敷く。その上に調味液に浸けておいたカグロの切り身をのせ、最後真ん中に卵黄を落として回りにゴマを振りかければ完成だ。

「よし、食べよう!!」

「ふわぁぁ!!おさかないっぱい!!」

「凄い食欲を誘う匂いね、お腹減ったわ~。」

「ヒイラギの作る料理は見た目からもう美味しそうだねぇ。」

 みんなそれぞれ、自分のどんぶりを持ってテーブルへ向かった。後から味噌汁と箸を配膳していく。するとドーナとランの二人が配膳された箸を見て首をかしげていた。

「ヒイラギ、これなにかしら?」

「アタイも見たことないよ。」

「あぁ、それは箸と言ってな。俺の住んでいた所ではそれを使って料理を食べるんだ。」

「へぇ~、どうやって使うんだい?」

「ヒイラギお兄さん!!シアが教える!!」

「そうか、じゃあシアお願いできるか?」

「うん!!えーっとまずはここをこうやって……。」

 シアによる箸の使い方講習が始まった。すると驚くことに、二人ともすぐに箸を使えるようになったのだ。

 本当はめちゃくちゃ難しいはずなんだが……シアの教え方がよかったのかな?

「慣れるとこれ結構使いやすいわね。」

「うん、こんなちっちゃい物も掴めるよ。」

 二人は小さな米粒でもひょいひょいと、簡単につかめるようになっていた。箸をまるで自分の指のように扱えている。

「二人とも使えるようになったみたいだな、シアありがとう。」

「これでみんな一緒っ!!」

「あぁ、それじゃあ改めて食べるとしよう。」

 俺が手を合わせるとみんなも手を合わせた。

「「「「いただきます!!」」」」

 そしてみんな揃ってカグロ漬け丼を食べ始めるのだった。
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