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第一章

冒険者ギルドにて

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 なんやかんやあったが、ステータスカードは何とか作ることができた。

 二度と経験したくない思いはしたが、まぁ作れたからよしだ。手渡されたステータスカードをバッグにしまっていると……。

「お客様~もしよければ、このまま冒険者登録もしていきませんか?」

 そう受付嬢が問いかけてきた。

 せっかくだし登録してみようか。面白そうだし。

「お願いします。」

 俺は二つ返事でお願いした。

「ありがとうございます!!それじゃあこちらの紙に~……。」

「おいおい、そんなヒョロッとしたなりで冒険者になれる分けねぇだろぉ?」

 彼女の話を遮って、俺の隣にキツイアルコール臭をプンプンさせているガタイのいい男がやって来た。

「ちょっと、ヘッジさん絡んでこないで下さいっ!!あと、お酒臭いです!!」

 彼女は強くやめるように言うが、男は全く気にしていないようだ。

「へへへぇ、俺はこのヒョロ野郎に優し~く教えてやってるんだぜぇ?お前みてぇなやつに、この稼業は向いてねぇって助言してあげてんじゃあねぇか?」

 ニタニタと下卑た笑みを浮かべながらヘッジなる男は、俺の肩に大きな手を置いた。シンプルに不快だったのでそれをパシッと弾いて言った。

「あいにく腕には自信がある。余計なお世話だ。」

 軽くあしらい、受付嬢に再び向き直る。

 すると神経を逆なでされて、男は激高し拳を振り上げて襲い掛かってきた。

「なんだとテメェ、調子乗ってんじゃねえぞ!!オラッ…アァ!?」

 がしかし、勢いよく振り抜かれた拳は俺の人差し指一本で止められてしまう。その光景に男は大きく目を見開いた。

「回れ右してとっととテーブルに戻ったほうがいい。ずいぶん酔っぱらってるみたいだからな。」

 そう告げると男は顔を真っ赤にして、もう片方の腕で殴りかかってくる。

 呆れに呆れ、一つ大きなため息を吐き出してそれに対処しようとしたその時、男の顔に俺のものではない誰かの拳が深くめり込んだ。

「ぐあァァァ!!」

 そしてギルドの外まで派手にぶっ飛んでいってしまった。ちらりと隣に視線を向けると、そこには綺麗な赤髪のショートヘアが特徴的な一人の女性がいた。

「ったく、問題ばっかり起こすやつだねぇ。あんた怪我はないかい?」

 大きく一つ息を吐き出して、彼女はこちらに問いかけてきた。

「おかげさまでこの通り無傷だ。」

「そうかい、そいつはよかったよ。ところであんた、冒険者登録しに来たんだろ?」

「あぁ、たった今しようと思ってたところで……。」

 そう答えるとその女性はニヤリと笑い言った。

「それじゃあ、アタイが直々に登録してやるよ。ミース書類よこしな。」

「あ、は…はいっ!!」

 そうしてその女性はミースという受付嬢から紙を受け取り、こちらを向いてまた笑った。

「さぁ、着いてきなよ。」

 彼女はスタスタと歩き二階へと上がっていく。

 俺は導かれるままに彼女の後ろに着いていった。
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