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3章 ダンジョンと仲間
第91話 クソガキを攻略するか否か
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「話をまとめます」
しばらくして、師匠を連れて戻ってきた桜先生が口を開いた。鈴以外の4人が桜先生の言葉を待つ。
「荻堂先生の言い方はアレすぎましたが、ムーニャさんに勝って、強力な戦力を手に入れるためには、陸人くんの《クラス替え》スキルの力を借りるしかない、という状況なのは確かです」
「そうだね。そこまでは、ゆあもわかるよ」
「それで、今のスキルポイントについて整理すると、荻堂先生の好感が増えた分の1ポイントと、鈴さんの分の上昇分2ポイントで、合計3ポイントが使えるポイント、ということになります」
コクコクと頷いておく。
「陸人くん?反省してますか?」
「……」
なにを?と思ったが頷いておく。
「わかってない顔ですね……まぁ、今はいいでしょう。それで、3ポイントのステータス割り振りでは、たぶんムーニャさんには勝てないだろう、というのが荻堂先生の意見です。その根拠は?」
「感覚だ。疑うなら今すぐ割り振って俺と模擬戦すればいい」
「わかりました。それはそれで試しましょう。で、ダメだとしたら、後2日以内に鈴さんの好感度をカンストさせて、カンストボーナスの10ポイントを貰おう、というわけですね?」
「そうだな。効率的だろ?」
「荻堂先生? もう一度、お話ししましょうか?」
「いや……すまなかった……色恋については……すまん……俺はもう黙る……」
桜先生に睨まれて口と目を閉じる師匠。
師匠……師匠にだけは強気でいてほしかったです……
「陸人くん? よそ見しない」
「はい!」
「では、この作戦に賛成の人、挙手」
オレと師匠がおずおずと手を上げる。女性陣はオレたちのことを冷ややかに見つめていた。
「反対の方」
3人が手を上げる。
「では、却下で」
「でも! あいつに! ムーニャに勝つためには鈴の力が必要なんです!」
「陸人くん? なんですか? 発言を許可した覚えはありませんよ?」
「ぐぬっ……でもですよ! あいつを倒してオレたちのパーティがもっと強くなったら! 東京駅ダンジョンだって余裕で攻略できるかもしれない! 気に入らないやつですけど! 強さは折り紙付きです!」
「それは、そうですが……」
「それに……オレ、舐められたまま、負けるなんてイヤです……オレがみんなを守れるくらい強いんだって、それを示したい……」
「陸人くん……」
「りっくんが負けず嫌いなのは知ってるよ。だからって、鈴ちゃんまで毒牙にかける気? この変態!」
「へ、ヘンタイ?」
「陸人くんは、もっと自覚が必要だと思います」
栞先輩まで責めてくる。
「いや、でも……」
しゅんとするオレを見て、みんながため息をついた。
女性陣が3人集まって、少し離れた位置でボソボソ会話をはじめる。
「どう思います?」
「ゆあ、最低だと思う」
「私もです」
「でも、放っておいても勝手にカンストする気がしませんか?」
「それは……たしかに……桜ちゃんとか気づいたらカンストしてたし……栞ちゃんも……」
「例えばですよ? 陸人くんと鈴さんが2人っきりになったとして、何かの間違いで盛り上がられて、最後までいったりしたら……私は舌を噛みます。悔しくて」
「桜先生はこう言ってるんですか? 目の届く範囲で、節度をもって交流を深めてもらい、私たちの監視下の元、カンストさせようと?」
「その通りです。さすが栞さん」
「たしかに……その方がある意味安全かも? 微妙に納得いかないけど……でも……抜けがけされたら、ゆあ、鈴ちゃんに噛みついちゃうかも……」
「では、いいですね?みんなで見張る、ということで」
コクリ。
オレは、3人が静かに頷き合うのを、会話が聞こえない位置で眺めていた。3人がこっちに戻ってくる。
「そちらの主張はわかりました。鈴さんの好感度をカンストさせる作戦、私たちが全面的にサポートします」
「ほんとですか! ありがとうございます!」
「ただし! 私たちが常に監視、いえ、全面的にサポートさせてもらいます。作戦は今日中に伝えます。明日は訓練、お休みにしてください」
「あ? なんでだ? 稽古ってのは毎日やるもんでだな」
「荻堂先生? ごちゃごちゃ、ごちゃごちゃ言わないで下さい。そんなに稽古がしたいなら、早朝か夜中にでもやってください。わかりましたか?」
「……今回は小日向に従おう」
「よろしい。それでは、陸人くんは明日あけておくように」
「なんでですか?」
「いいから」
「わ、わかりました……」
「柚愛さん、栞さん、行きますよ」
「はい」
「うん」
そして、桜先生が2人を従えて、カツカツと足音を立てて訓練場を後にした。3人からは言いようのない迫力が漂っていたと思う。
姿勢を正していたオレと師匠は、どかっと足を崩し、気まずく見つめ合った。
「なんだったんですかね?」
「俺に聞くなよ……」
「まぁそうか……あ、明日の訓練どうしましょう?」
「とりあえず、朝と夜にやる自主練の打合せでもしておくか。アトム相手に戦ってもらえ」
「了解です!」
それからは、男2人で訓練について話し合った。やっぱり、戦いのことについて考えるのは楽しい。みんながなにをピリピリしていたのはよくわからないが、みんなも戦いに集中すればいいのに、と思うオレなのであった。
しばらくして、師匠を連れて戻ってきた桜先生が口を開いた。鈴以外の4人が桜先生の言葉を待つ。
「荻堂先生の言い方はアレすぎましたが、ムーニャさんに勝って、強力な戦力を手に入れるためには、陸人くんの《クラス替え》スキルの力を借りるしかない、という状況なのは確かです」
「そうだね。そこまでは、ゆあもわかるよ」
「それで、今のスキルポイントについて整理すると、荻堂先生の好感が増えた分の1ポイントと、鈴さんの分の上昇分2ポイントで、合計3ポイントが使えるポイント、ということになります」
コクコクと頷いておく。
「陸人くん?反省してますか?」
「……」
なにを?と思ったが頷いておく。
「わかってない顔ですね……まぁ、今はいいでしょう。それで、3ポイントのステータス割り振りでは、たぶんムーニャさんには勝てないだろう、というのが荻堂先生の意見です。その根拠は?」
「感覚だ。疑うなら今すぐ割り振って俺と模擬戦すればいい」
「わかりました。それはそれで試しましょう。で、ダメだとしたら、後2日以内に鈴さんの好感度をカンストさせて、カンストボーナスの10ポイントを貰おう、というわけですね?」
「そうだな。効率的だろ?」
「荻堂先生? もう一度、お話ししましょうか?」
「いや……すまなかった……色恋については……すまん……俺はもう黙る……」
桜先生に睨まれて口と目を閉じる師匠。
師匠……師匠にだけは強気でいてほしかったです……
「陸人くん? よそ見しない」
「はい!」
「では、この作戦に賛成の人、挙手」
オレと師匠がおずおずと手を上げる。女性陣はオレたちのことを冷ややかに見つめていた。
「反対の方」
3人が手を上げる。
「では、却下で」
「でも! あいつに! ムーニャに勝つためには鈴の力が必要なんです!」
「陸人くん? なんですか? 発言を許可した覚えはありませんよ?」
「ぐぬっ……でもですよ! あいつを倒してオレたちのパーティがもっと強くなったら! 東京駅ダンジョンだって余裕で攻略できるかもしれない! 気に入らないやつですけど! 強さは折り紙付きです!」
「それは、そうですが……」
「それに……オレ、舐められたまま、負けるなんてイヤです……オレがみんなを守れるくらい強いんだって、それを示したい……」
「陸人くん……」
「りっくんが負けず嫌いなのは知ってるよ。だからって、鈴ちゃんまで毒牙にかける気? この変態!」
「へ、ヘンタイ?」
「陸人くんは、もっと自覚が必要だと思います」
栞先輩まで責めてくる。
「いや、でも……」
しゅんとするオレを見て、みんながため息をついた。
女性陣が3人集まって、少し離れた位置でボソボソ会話をはじめる。
「どう思います?」
「ゆあ、最低だと思う」
「私もです」
「でも、放っておいても勝手にカンストする気がしませんか?」
「それは……たしかに……桜ちゃんとか気づいたらカンストしてたし……栞ちゃんも……」
「例えばですよ? 陸人くんと鈴さんが2人っきりになったとして、何かの間違いで盛り上がられて、最後までいったりしたら……私は舌を噛みます。悔しくて」
「桜先生はこう言ってるんですか? 目の届く範囲で、節度をもって交流を深めてもらい、私たちの監視下の元、カンストさせようと?」
「その通りです。さすが栞さん」
「たしかに……その方がある意味安全かも? 微妙に納得いかないけど……でも……抜けがけされたら、ゆあ、鈴ちゃんに噛みついちゃうかも……」
「では、いいですね?みんなで見張る、ということで」
コクリ。
オレは、3人が静かに頷き合うのを、会話が聞こえない位置で眺めていた。3人がこっちに戻ってくる。
「そちらの主張はわかりました。鈴さんの好感度をカンストさせる作戦、私たちが全面的にサポートします」
「ほんとですか! ありがとうございます!」
「ただし! 私たちが常に監視、いえ、全面的にサポートさせてもらいます。作戦は今日中に伝えます。明日は訓練、お休みにしてください」
「あ? なんでだ? 稽古ってのは毎日やるもんでだな」
「荻堂先生? ごちゃごちゃ、ごちゃごちゃ言わないで下さい。そんなに稽古がしたいなら、早朝か夜中にでもやってください。わかりましたか?」
「……今回は小日向に従おう」
「よろしい。それでは、陸人くんは明日あけておくように」
「なんでですか?」
「いいから」
「わ、わかりました……」
「柚愛さん、栞さん、行きますよ」
「はい」
「うん」
そして、桜先生が2人を従えて、カツカツと足音を立てて訓練場を後にした。3人からは言いようのない迫力が漂っていたと思う。
姿勢を正していたオレと師匠は、どかっと足を崩し、気まずく見つめ合った。
「なんだったんですかね?」
「俺に聞くなよ……」
「まぁそうか……あ、明日の訓練どうしましょう?」
「とりあえず、朝と夜にやる自主練の打合せでもしておくか。アトム相手に戦ってもらえ」
「了解です!」
それからは、男2人で訓練について話し合った。やっぱり、戦いのことについて考えるのは楽しい。みんながなにをピリピリしていたのはよくわからないが、みんなも戦いに集中すればいいのに、と思うオレなのであった。
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