62 / 95
2章 ダンジョンと刀
第62話 修行をつける条件
しおりを挟む
師匠がオレたちを呼んだので、全員が師匠の前に集まった。訓練場の中に、ちょっとした緊張感が漂う。
「オレが修行をつけてやることについて、一つ条件を出したい」
「今更?条件ってなによ?」
鈴が嫌そうな顔で、腕を組みながら聞き返す。
「次に攻略するダンジョンについてだ」
「ダンジョン?」
「ああ、政府からは、〈ダンジョンを1つ攻略すれば東京駅ダンジョンの開放を検討する。ダンジョンは指定しない〉って言われてんだろ?なぁ?小日向?」
「はい……その通りですが……」
「じゃ、次に攻略するダンジョンは、池袋駅ダンジョンにしろ」
「池袋駅ダンジョン!?それはダメです!」
桜先生が、いの一番に反対する。
「桜先生?どうしたんですか?」
「どうしたって!陸人くん!池袋駅ダンジョンはかなりの死傷者を出してる危険度最上級のダンジョンだよ!それに!あのダンジョンでは荻堂先生の……」
「ああ、そうだ。オレのダチたちが殺されたダンジョンだ」
そういう師匠の顔は、暗く憎しみに満ちていた。あまりの迫力に、ごくりと息を呑む。
「じゃあ!絶対ダメです!そんなところにこの子たちを行かせられません!」
「まぁ待てよ。小日向。池袋駅ダンジョンが危険なのはボスだけだ。ボス部屋までは割と普通に到達できる」
「だから!そのボスに何十人もの犠牲者が!」
「俺なら、コイツらを勝たせられる」
「え?」
「俺が何年あのクソやろーのことを考えてたと思う?8年だ。あいつらがぶっ殺されてから8年、1日も欠かさず、あのクソを殺すことを考えてきた。今なら、絶対倒せる」
「それは……荻堂先生が戦えばという話で……」
「違うな。咲守」
「は、はい……」
突如、名前を呼ばれ、師匠が真っすぐ、オレのことを見た。
「おまえなら倒せるよ。俺の言う通りにすればな」
「マジすか……」
「マジだ。だが、最終的に判断するのはおまえらだ。相対してみて、ダメそうなら逃げればいい。でも、こいつなら勝てると思ったら、俺とダチの未練を晴らしちゃくれねーか?」
「……」
突然の申し出だったので、考え込む。オレたちは、東京駅ダンジョンさえ攻略できればいい。そのためには、政府に認めてもらうためにもう一つ、どこでもいいからダンジョンを攻略しなくてはいけない。
じゃあ、そのダンジョンはどこにするのか。師匠が来る前のオレたちは、比較的安全だと言われている大崎駅ダンジョンにしようと決めていた。だけど、大崎駅ダンジョンだって前人未到の未攻略ダンジョンだ。危険がないなんてことはありえない。
師匠のことをもう一度見る。師匠のことを巻き込んだのは俺だ。師匠の思いに答えたいという気持ちはある。だけど、桜先生曰く、池袋駅ダンジョンは、かなり危険なダンジョンだという。みんなは耐えれるだろうか。
「師匠、オレが戦えるとしても……みんなが……」
「もちろん。1人も死なないように鍛える。1番危ないのは的場だが、おまえには鉄壁の防御があるしな」
「う、うん……」
「双葉はもう少し動体視力と予測能力を鍛えりゃいけんだろ」
「ふんっ」
「嬢ちゃんは武器に慣れれば十分戦える実力だ。前線で戦ってもらう」
「はい」
「あとは、おまえが倒せ。咲守」
「……」
師匠がそこまで考えているなら、という気持ちが強くなった。だからオレは、
「精一杯、戦います」
「やってくれるか?」
「はい。でも、仲間に危険が及んだら、逃げてもいいですか?」
「もちろんだ。全員生きて帰ってこい」
「……わかりました。よろしくお願いします」
頭を下げる。
「陸人くん!でも!」
桜先生に相談なく決めてしまったので、案の定、声を荒げられた。
「桜先生、オレたちが攻略しようとしてる東京駅ダンジョンも最上級難易度ですよね?」
「それは……」
「それに、今、攻略しようとしている大崎駅ダンジョンだって、危険がないわけじゃない。グランタイタンみたいに、イレギュラーなことが起こるかもしれない。結局、どのダンジョンも命懸けなんです。だったら、師匠が〈絶対倒せる〉っていうボスに挑んだ方がいいと思うんです」
「……」
「だから、オレは戦います。戦わせて下さい」
「……わかったわ。でも、危なくなったら逃げるのよ?みんなもいい?」
全員が桜先生に頷く。
そして、師匠がニヤついた。
「よし!決まったな!明日からもっと厳しくしごいてやる!覚悟しろよ!ガキども!」
こうして、オレたちの次の目標が決まった。
池袋駅ダンジョン、多くの犠牲者を出し、師匠の仲間たちを全滅させた危険度最上級のダンジョン攻略だ。
「オレが修行をつけてやることについて、一つ条件を出したい」
「今更?条件ってなによ?」
鈴が嫌そうな顔で、腕を組みながら聞き返す。
「次に攻略するダンジョンについてだ」
「ダンジョン?」
「ああ、政府からは、〈ダンジョンを1つ攻略すれば東京駅ダンジョンの開放を検討する。ダンジョンは指定しない〉って言われてんだろ?なぁ?小日向?」
「はい……その通りですが……」
「じゃ、次に攻略するダンジョンは、池袋駅ダンジョンにしろ」
「池袋駅ダンジョン!?それはダメです!」
桜先生が、いの一番に反対する。
「桜先生?どうしたんですか?」
「どうしたって!陸人くん!池袋駅ダンジョンはかなりの死傷者を出してる危険度最上級のダンジョンだよ!それに!あのダンジョンでは荻堂先生の……」
「ああ、そうだ。オレのダチたちが殺されたダンジョンだ」
そういう師匠の顔は、暗く憎しみに満ちていた。あまりの迫力に、ごくりと息を呑む。
「じゃあ!絶対ダメです!そんなところにこの子たちを行かせられません!」
「まぁ待てよ。小日向。池袋駅ダンジョンが危険なのはボスだけだ。ボス部屋までは割と普通に到達できる」
「だから!そのボスに何十人もの犠牲者が!」
「俺なら、コイツらを勝たせられる」
「え?」
「俺が何年あのクソやろーのことを考えてたと思う?8年だ。あいつらがぶっ殺されてから8年、1日も欠かさず、あのクソを殺すことを考えてきた。今なら、絶対倒せる」
「それは……荻堂先生が戦えばという話で……」
「違うな。咲守」
「は、はい……」
突如、名前を呼ばれ、師匠が真っすぐ、オレのことを見た。
「おまえなら倒せるよ。俺の言う通りにすればな」
「マジすか……」
「マジだ。だが、最終的に判断するのはおまえらだ。相対してみて、ダメそうなら逃げればいい。でも、こいつなら勝てると思ったら、俺とダチの未練を晴らしちゃくれねーか?」
「……」
突然の申し出だったので、考え込む。オレたちは、東京駅ダンジョンさえ攻略できればいい。そのためには、政府に認めてもらうためにもう一つ、どこでもいいからダンジョンを攻略しなくてはいけない。
じゃあ、そのダンジョンはどこにするのか。師匠が来る前のオレたちは、比較的安全だと言われている大崎駅ダンジョンにしようと決めていた。だけど、大崎駅ダンジョンだって前人未到の未攻略ダンジョンだ。危険がないなんてことはありえない。
師匠のことをもう一度見る。師匠のことを巻き込んだのは俺だ。師匠の思いに答えたいという気持ちはある。だけど、桜先生曰く、池袋駅ダンジョンは、かなり危険なダンジョンだという。みんなは耐えれるだろうか。
「師匠、オレが戦えるとしても……みんなが……」
「もちろん。1人も死なないように鍛える。1番危ないのは的場だが、おまえには鉄壁の防御があるしな」
「う、うん……」
「双葉はもう少し動体視力と予測能力を鍛えりゃいけんだろ」
「ふんっ」
「嬢ちゃんは武器に慣れれば十分戦える実力だ。前線で戦ってもらう」
「はい」
「あとは、おまえが倒せ。咲守」
「……」
師匠がそこまで考えているなら、という気持ちが強くなった。だからオレは、
「精一杯、戦います」
「やってくれるか?」
「はい。でも、仲間に危険が及んだら、逃げてもいいですか?」
「もちろんだ。全員生きて帰ってこい」
「……わかりました。よろしくお願いします」
頭を下げる。
「陸人くん!でも!」
桜先生に相談なく決めてしまったので、案の定、声を荒げられた。
「桜先生、オレたちが攻略しようとしてる東京駅ダンジョンも最上級難易度ですよね?」
「それは……」
「それに、今、攻略しようとしている大崎駅ダンジョンだって、危険がないわけじゃない。グランタイタンみたいに、イレギュラーなことが起こるかもしれない。結局、どのダンジョンも命懸けなんです。だったら、師匠が〈絶対倒せる〉っていうボスに挑んだ方がいいと思うんです」
「……」
「だから、オレは戦います。戦わせて下さい」
「……わかったわ。でも、危なくなったら逃げるのよ?みんなもいい?」
全員が桜先生に頷く。
そして、師匠がニヤついた。
「よし!決まったな!明日からもっと厳しくしごいてやる!覚悟しろよ!ガキども!」
こうして、オレたちの次の目標が決まった。
池袋駅ダンジョン、多くの犠牲者を出し、師匠の仲間たちを全滅させた危険度最上級のダンジョン攻略だ。
2
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~
椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。
探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。
このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。
自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。
ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。
しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。
その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。
まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた!
そして、その美少女達とパーティを組むことにも!
パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく!
泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!
俺だけ異世界行ける件〜会社をクビになった俺は異世界で最強となり、現実世界で気ままにスローライフを送る〜
平山和人
ファンタジー
平凡なサラリーマンである新城直人は不況の煽りで会社をクビになってしまう。
都会での暮らしに疲れた直人は、田舎の実家へと戻ることにした。
ある日、祖父の物置を掃除したら変わった鏡を見つける。その鏡は異世界へと繋がっていた。
さらに祖父が異世界を救った勇者であることが判明し、物置にあった武器やアイテムで直人はドラゴンをも一撃で倒す力を手に入れる。
こうして直人は異世界で魔物を倒して金を稼ぎ、現実では働かずにのんびり生きるスローライフ生活を始めるのであった。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる