上 下
54 / 95
2章 ダンジョンと刀

第54話 人類初のスキルホルダー

しおりを挟む
 荻堂一心、27歳、人類初のダンジョン踏破者兼スキルホルダーとして有名な人物だ。今から8年前、ダンジョン災害から1年後、当時19歳だった彼は、6人の仲間たちと共に初のダンジョン踏破者となった。
 ボスにとどめの一撃を放った彼がスキルホルダーとなり、勢いづいた荻堂パーティはすぐに次のダンジョンに挑戦。そして、彼1人を残してパーティは壊滅した。
 ここまではニュースなどで取り上げられていて有名な話だった。

「その荻堂さんって人、鳴神流だったんですね?」

 教室にて、5人揃って栞先輩の話を聞く。栞先輩は少し難しそうな顔で話を続けた。

「はい。荻堂さんは鳴神流の免許皆伝で、父の一番弟子でした。とても強い人で、わたしもあれくらい強くなって父に認められたい、そう思っていたのを覚えています」

「へー、すごい人なんだね?でも、栞ちゃんが苦手って言うのはなんでなの?」

「それは……父がダンジョンに囚われてから道場の経営が厳しくなってきた頃、道場の師範をお願いして、断られたからです……荻堂さんほど有名な人なら、道場を再建できる、と考えてのことだったのですが……」

「なるほど、それなら、その人を誘うのはやめときましょう」

 オレはすぐに栞先輩の案を却下することにした。

「え?な、なんでですか?」

「え?だって、栞先輩が嫌な思いをしてまで誘う必要なくないですか?」

「……」

 オレの言葉を聞いた栞先輩が、少し驚いた顔をした後、下を向いてもじもじし出した。頬が少し赤い。どうしたんだろう?

「あんたって、ほんと女ったらしよね」

「は?なにいってんだ?チビ」

「はぁ?ぶっ殺されたいわけ?」

「えっと……陸人くんの気持ちは嬉しいのですが、やはりお誘いすべきかと。荻堂さんはとても強い方ですし、力になってくれると思います。あのときは、わたしも荻堂さんの気持ちを考えれていなかったので」

「というと?」

「荻堂さんのパーティは、全員が鳴神流の門下生で、父の道場で一緒に修行をした仲でした。きっと、道場に来たら、ご友人のことを思い出してしまう……そんな心境だったのだと思います。だから断られたのかと……」

「そっかぁ……そういう事情なら可哀想かも。栞ちゃんを助けてくれなかったことは嫌だけど、ゆあでも同じことしちゃうかも……」

「はい。わたしも今はそう思ってます。なので、声をかけるだけでもしてみませんか?それに、荻堂さんはダンジョンから持ち帰った神器を所持しています。それだけでもお借りできないかと考えているんです」

「神器ってなんでしたっけ?」

 桜先生のことをチラッと見る。

「うふふ♪陸人くんは今度補習ですね♪2人っきりで♪」

「お、お願いします?」

 なんだか、桜先生の目が怪しく光っているがスルーして話を聞くことにした。

「では、解説しましょう。神器とは、ダンジョン内で発見された武器のことです。その武器はどんな力を加えても壊れることはなく、刃こぼれなども一切しないと言われています。また、仮説ではありますが、神器には隠された力があり、それを発揮できれば、より強力な武器になるだろう、と言われているのです」

「ほへ~……」

「りっくん、授業聞いてなかったの?」

「聞いてたような気もするけど忘れた」

「ぽんこつっくんね」

「だから、原型留めてないんだってば。じゃあ、話をまとめると、栞先輩の提案通り、荻堂さんに声をかけてみて、可能なら戦いの指導を、それと神器を貸してくれないか頼んでみる、その方針でいいかな?」

「いいんじゃない?」

 ということで、みんなが頷くのを確認して、その日は解散となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

俺だけ異世界行ける件〜会社をクビになった俺は異世界で最強となり、現実世界で気ままにスローライフを送る〜

平山和人
ファンタジー
平凡なサラリーマンである新城直人は不況の煽りで会社をクビになってしまう。 都会での暮らしに疲れた直人は、田舎の実家へと戻ることにした。 ある日、祖父の物置を掃除したら変わった鏡を見つける。その鏡は異世界へと繋がっていた。 さらに祖父が異世界を救った勇者であることが判明し、物置にあった武器やアイテムで直人はドラゴンをも一撃で倒す力を手に入れる。 こうして直人は異世界で魔物を倒して金を稼ぎ、現実では働かずにのんびり生きるスローライフ生活を始めるのであった。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...