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1章 ダンジョンと鍵

第23話 チートスキルによる素早さの強化

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「あ、おつかれ」

 トレーニングウェア姿のゆあちゃんに向かって、ピョンピョン飛び跳ねながら回答する。

「なにしてるの?」

「ステータス割り振ったから試してみようと思って」

「へー?」

「見てて」

 オレは見よう見まねで、鈴の動きを真似てみた。走りながらバク宙したり、壁を蹴って回転したりバク転しながら構えてみたりする。

「おぉ~、パチパチパチパチ」

 ゆあちゃんが拍手してくれる。褒めてもらえるとなかなかに気持ちがいい。

「どうよ!」

「すごい動きだね~」

「だろ!」

「でも、それってステータスあげる前にもできたんじゃない?」

「……え?」

 指摘され、ステータス割り振り前のことを思い出す。

「……いやいや……たしかに?アトム!実践訓練!」

「かしこまりました」

 オレは不安を払拭するためにアトムと訓練を始めた。

 まずは、いつも通り背中の双剣を構える。アトムの方もオレと同じ双剣を持って待ち構えている。

「いくぞ」

「いつでもおこしください」

 アトムの同意を聞いてから、オレはアトムに向かって思い切り双剣を投げつける。それと同時に腰から双剣を抜き、走り出すと、明らかにいつもより早く走ることができた。
 投げた双剣がアトムに接触するのと同時に、オレの両腕がアトムに届く。ここまで早く接敵するとはオレ自身も思わなかった。
 アトムは飛んできた双剣をはじくのが精いっぱいで、オレの攻撃を胴にもらってしまう。そのままの勢いで、アトムの後方に回り込み、一度足を止める。

「凄まじい速度でございます。陸人様」

「今日こそ勝たせてもらう!」

 オレはニヤついた顔で接敵し、アトムに攻撃を加えた。弾き返されるが、すぐに高速で離れて、回り込みまた接敵する。ヒット&アウェイというやつだ。

「やっぱあのスキルすげーな!」

「その通りでございますね」

 何度目かの接敵のとき話しかけると、アトムから余裕そうな回答が返ってきた。しかし、そのまま高速戦闘を続けていると、「警告、オーバーヒートまであと30秒」というアナウンスが聞こえてくる。

「およ?止めた方がいいか?」

「そうでございますね。降参です」

「おお!やった!ついにアトムに勝った!」

 オレは、嬉々として攻撃をやめ、両腕を上げる。そこに、

「へぶっ!?」

 アトムのやつがチョップをかましてきた。

「隙ありでございます」

「おま!?おまえ!ずるいぞ!」

「まだまだでございますね。しかし、やはり《クラス替え》スキルというのは凄まじいものです。データによりますと、この一年の陸人様の成長よりも急激に能力が上昇しているようです」

「おま!……まじか?」

「ええ、まじでございます。それは陸人様ご自身も実感されているのでは?」

「まぁ、たしかにな。よし、今日はこれくらいにしておいてやろう」

「ありがとうございます。それでは、お茶を用意しますね」

「うん。ありがと」

「すごい動きだったねぇ」

 訓練を終えると、見学していたゆあちゃんが話しかけてきた。

「だろだろ!」

「でも、あれだけ強いりっくんの相手ができるなら、アトムを量産すればダンジョン攻略なんて楽チンじゃないかなぁ?あ、お茶ありがとね」

「いえいえ。柚愛様、私も陸人様と柚愛様にご助力したいのですが、戦闘能力があるロボットはダンジョンに侵入できないのです。申し訳ありません」

「あ、そっか、そうだよね」

 ゆあちゃんに続き、オレもお茶を受け取って腰かける。

「それにしても、ちゃんと能力上がっててよかったぁ……ゆあちゃんが焦らせるようなこというから、ドキドキしたじゃん

「それはごめんね。でも、りっくんは、もうちょっと考えてからステータスを割り振った方がいいんじゃない?どうせ、鈴ちゃんみたいになりたい、とか適当な理由でやったでしょ?」

「……いや、そんなことは……」

「はいはい。もういいから今度はゆあの訓練ね」

「ぐぬぬ……」

 なんだか、見透かされたようで悔しいので、ゆあちゃんの今日の訓練は厳しくしてやろうと決めた。
 そのすました顔、いつまで保っていられるかなぁ!(ゲス顔)
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