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2章 呪われた炎
第38話 次なる敵
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僕はシューネさんとピャーねぇの2人をピャーねぇの家に送り届けてから自宅に帰ってきた。さっき自分の兄に刀を向けられていた少女は、僕の自慢の姉のおかげですっかり元気を取り戻した様子だった。
「ただいま」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「カリン、調べてほしいことがある」
帰ってきて早々、諜報活動に得意な従者に指示を出す。
「なんなりと」
「マーダス・ボルケルノについて、なんであいつが弟より後でスキル授与することになってるのか知りたい」
「承知しました」
「頼んだ」
♢
-2日後-
「ご主人様、マーダス・ボルケルノについて調査が完了しました」
僕がディセとセッテの2人とリビングで紅茶を飲んでいるところに、カリンが帰ってきて報告してくれる。
「ありがとう。じゃあ、結果を教えてくれるかな。あ、ディセ、カリンにお茶を」
「はい、ジュナ様」
ディセが立ち上がって、僕の正面のソファに腰掛けたカリンに紅茶をいれてくれる。
「ありがとう。いい香りですね」
「いえいえ、カリンさん、お疲れ様でした」
「美味しい。では、報告致します」
紅茶を一口飲んだカリンが真剣な顔に戻り、僕のことを見る。
「うん、お願い」
「マーダスがボルケルノ家の長男にも関わらず、今もスキルを授与されていない理由、そして、次男が既にスキルを授与している理由について調べてきましたが、結論から言うと、マーダスがある事件を起こしたことが要因だとわかりました」
「事件?それって?」
僕は先日のマーダスの行いを思い出しながら、なんとなく嫌なことを想像する。
「斬殺事件です」
「やっぱりか……」
僕の嫌な予想は的中する。あいつは、シューネさんを前にしてこう言っていた。〈俺は人を斬らないとダメなんだ〉と。つまり、あいつは快楽殺人者なんだ。
「マーダスは、誰を殺した?なぜ投獄されていない」
僕は、事件の詳細についてカリンに聞くことにする。
「事件を起こしたのは4年前、首都の城下町でのことだったようです。ある服飾店に訪れたマーダスは、服のデザインが気に入らないと言って、その場で店主を斬殺しました。マーダスは、以前から人斬りの疑いがかけられていて、犯人不明の人斬り事件が相次いでいたらしいです」
「なるほど。それでその事件の犯人があいつだと判明して、逮捕されたと?」
「いえ、逮捕はされませんでした……」
「なんだって?それって……もしかしてだけど……斬った相手が平民、つまりはスキル発現者じゃないから?」
「その通りです……」
「なんて国なんだ……」
僕はぎゅっと右手を握りしめる。
「しかし、その服飾店の店主は商店街である程度の地位を築いていた人物だったようで、王国に対して多くの商店から抗議が届いたようです。そのため、マーダスは自宅謹慎と厳重注意を言い渡され、その年に受ける予定だったギフト授与式への出席も取り下げとなった、とのことです」
「それは……そんなやつにスキルを授与しないっては当然だけど、あまりに罰が軽すぎるんじゃないか……それに今、あいつは第六王子からスキルを授与しそうになっている。それはなんでなんだ?謹慎処分は解かれたのか?」
「それは、ギフト授与式で絶対失敗したくないヘキサシス第六王子の独断だそうです。才能があるようだし、罪人でないのだから問題はない。そう言ってボルケルノ家の当主に話を通したのだとか」
「最悪だ……第六王子は自分のことしか考えてないみたいだな……」
「私も同意見です。次の標的は第六王子とボルケルノ家ですね」
「え?」
カリンを見ると、鋭い目をしながら殺気をチラつかせていた。血の気の多い子である。
「ちょっと待ってカリン」
「なんでしょう?」
「一旦落ち着こう。僕は、僕の周りの人たちが幸せならそれでいいんだ」
「それは、存じております」
「だから、別にあいつらのことは放っておいても……」
「しかし、ご主人様、彼らを放っておくと、ピアーチェス様のご友人になられたシューネ様に危険が及ぶかと思います。万が一、次のギフト授与式で、マーダスがSランクのスキルを授かった場合、嬉々としてシューネ様を取り返しにくるでしょう。そのいざこざにピアーチェス様も巻き込まれるかもしれません」
「たしかに……」
なんてめんどうなことになってしまったんだ。正直、僕はそう思ってしまった。ピャーねぇはシューネさんをかっていたが、僕自身は彼女のことをよくわかっていない。だから、リスクを冒してまで守る対象にはなっていなかったのだ。
「わかった……指摘してくれてありがとう、カリン」
「いえ」
「でも、すぐにあいつらをどうこうするのも難しい。もう少し、ピャーねぇの家にいるシューネさんの動向を見守ろうと思う」
「かしこまりました」
カリンの報告が終わり、僕はソファに深くもたれかかる。
次の敵は第六王子ヘキサシスと今度の授与式でスキルを授与されるマーダス・ボルケルノ。コイツらをどうするのか、僕は頭を悩ませることになった。
「ただいま」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「カリン、調べてほしいことがある」
帰ってきて早々、諜報活動に得意な従者に指示を出す。
「なんなりと」
「マーダス・ボルケルノについて、なんであいつが弟より後でスキル授与することになってるのか知りたい」
「承知しました」
「頼んだ」
♢
-2日後-
「ご主人様、マーダス・ボルケルノについて調査が完了しました」
僕がディセとセッテの2人とリビングで紅茶を飲んでいるところに、カリンが帰ってきて報告してくれる。
「ありがとう。じゃあ、結果を教えてくれるかな。あ、ディセ、カリンにお茶を」
「はい、ジュナ様」
ディセが立ち上がって、僕の正面のソファに腰掛けたカリンに紅茶をいれてくれる。
「ありがとう。いい香りですね」
「いえいえ、カリンさん、お疲れ様でした」
「美味しい。では、報告致します」
紅茶を一口飲んだカリンが真剣な顔に戻り、僕のことを見る。
「うん、お願い」
「マーダスがボルケルノ家の長男にも関わらず、今もスキルを授与されていない理由、そして、次男が既にスキルを授与している理由について調べてきましたが、結論から言うと、マーダスがある事件を起こしたことが要因だとわかりました」
「事件?それって?」
僕は先日のマーダスの行いを思い出しながら、なんとなく嫌なことを想像する。
「斬殺事件です」
「やっぱりか……」
僕の嫌な予想は的中する。あいつは、シューネさんを前にしてこう言っていた。〈俺は人を斬らないとダメなんだ〉と。つまり、あいつは快楽殺人者なんだ。
「マーダスは、誰を殺した?なぜ投獄されていない」
僕は、事件の詳細についてカリンに聞くことにする。
「事件を起こしたのは4年前、首都の城下町でのことだったようです。ある服飾店に訪れたマーダスは、服のデザインが気に入らないと言って、その場で店主を斬殺しました。マーダスは、以前から人斬りの疑いがかけられていて、犯人不明の人斬り事件が相次いでいたらしいです」
「なるほど。それでその事件の犯人があいつだと判明して、逮捕されたと?」
「いえ、逮捕はされませんでした……」
「なんだって?それって……もしかしてだけど……斬った相手が平民、つまりはスキル発現者じゃないから?」
「その通りです……」
「なんて国なんだ……」
僕はぎゅっと右手を握りしめる。
「しかし、その服飾店の店主は商店街である程度の地位を築いていた人物だったようで、王国に対して多くの商店から抗議が届いたようです。そのため、マーダスは自宅謹慎と厳重注意を言い渡され、その年に受ける予定だったギフト授与式への出席も取り下げとなった、とのことです」
「それは……そんなやつにスキルを授与しないっては当然だけど、あまりに罰が軽すぎるんじゃないか……それに今、あいつは第六王子からスキルを授与しそうになっている。それはなんでなんだ?謹慎処分は解かれたのか?」
「それは、ギフト授与式で絶対失敗したくないヘキサシス第六王子の独断だそうです。才能があるようだし、罪人でないのだから問題はない。そう言ってボルケルノ家の当主に話を通したのだとか」
「最悪だ……第六王子は自分のことしか考えてないみたいだな……」
「私も同意見です。次の標的は第六王子とボルケルノ家ですね」
「え?」
カリンを見ると、鋭い目をしながら殺気をチラつかせていた。血の気の多い子である。
「ちょっと待ってカリン」
「なんでしょう?」
「一旦落ち着こう。僕は、僕の周りの人たちが幸せならそれでいいんだ」
「それは、存じております」
「だから、別にあいつらのことは放っておいても……」
「しかし、ご主人様、彼らを放っておくと、ピアーチェス様のご友人になられたシューネ様に危険が及ぶかと思います。万が一、次のギフト授与式で、マーダスがSランクのスキルを授かった場合、嬉々としてシューネ様を取り返しにくるでしょう。そのいざこざにピアーチェス様も巻き込まれるかもしれません」
「たしかに……」
なんてめんどうなことになってしまったんだ。正直、僕はそう思ってしまった。ピャーねぇはシューネさんをかっていたが、僕自身は彼女のことをよくわかっていない。だから、リスクを冒してまで守る対象にはなっていなかったのだ。
「わかった……指摘してくれてありがとう、カリン」
「いえ」
「でも、すぐにあいつらをどうこうするのも難しい。もう少し、ピャーねぇの家にいるシューネさんの動向を見守ろうと思う」
「かしこまりました」
カリンの報告が終わり、僕はソファに深くもたれかかる。
次の敵は第六王子ヘキサシスと今度の授与式でスキルを授与されるマーダス・ボルケルノ。コイツらをどうするのか、僕は頭を悩ませることになった。
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