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1章 奪う力と与える力

第11話 呪われた王子の特殊スキル

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「じゃあ、行ってくる」

「どうか、お気をつけて」
「ジュナ様、、絶対帰ってきてね?」

「ああ、2人ともありがとう。姉さんのこと、頼んだ」

 僕は、強い目をしてるディセと心配そうにしているセッテの頭を撫でてから、馬に跨った。2人が町の外で用意してくれていた馬だ。たてがみをひと撫でしてから、闇夜に紛れて走り出す。第四王子の別荘に向けて。

 ギフト授与式まであと一週間、僕はギフト授与式が始まるまでに、第四王子からAランクのギフトキーを奪うためにあいつのもとへ向かっていた。どうやって、あいつのギフトキーを奪うのか、方法は、5年前に覚醒した僕の能力が鍵になる。

 この5年間、僕は、自分自身の謎の能力について研究してきた。

 ピャーねぇが湖で溺れたあの日、僕は確かに自分の中に不思議な力があると感じたからだ。そして、その感覚は的中していた。僕には、《他人の技能やスキルを奪う》という、おぞましいスキルが発現していたのだ。
 これに気づいたときは、スキル無しから一転して、スキル持ちになれたことを喜んだ。でも、これが人を不幸にする能力だとすぐに気づき、落ち込みもした。なぜなら、スキル至上主義のこの国でスキルを奪われるというのは、その人物の社会的地位も全て奪うことに繋がるからだ。

 それにしても、他人にスキルを与える王族の生まれなのに、その逆のスキルを持ってるなんて皮肉なものだ。もしかしたら、僕が銀髪だから、それがなにか関係しているのかもしれない。でも、それは神のみぞ知ることだ、今はいい。

 とにかく、僕はこのスキルを使って、第四王子からAランクのギフトキーを奪いに行く。

 現時点で分かっている僕の能力を大別すると、
 ①一時的にスキルを奪う能力
 ②永久にスキルを奪う能力
 の2つのことができると確認できている。

 まず、①の一時的に奪える技能やスキルには制限がない。その人が勉強や練習で習得した技能、例えば、英会話のような言語能力から水泳の技能、もちろん、魔法のスキルだって奪うことができる。ただし、一時的なので、数分経てば元の持ち主のもとへと戻っていく。

 そして、②の永久にスキル奪う能力では、技能は奪えない。奪えるのはギフトキーで与えられたスキルだけだ。

 一見便利そうに思えるこの能力だが、めんどうなことに色々な制約もついていた。

 一つ目に、スキルを奪うときには、〈対象の肌に直接触れる必要がある〉という制約がある。城内にいる人たちでさんざん実験してきたが、服越しや手袋越しに触っても奪うことは出来なかった。

 そして、これがもっともめんどうな制約なのだが、永久にスキルを奪う場合は、〈対象の肌に触れた上で、特定の呪文を詠唱しなければいけない〉のだ。
 だから、しれっと握手をして奪えるのは一時的なスキルだけで、そいつのスキルを永久に奪いたい場合は握手しながら詠唱をしないといけない。そんなこと、相手が普通の神経をしているなら、絶対に成功しないだろう。握手した相手が突然呪文を唱え出したら、すぐに手を離して警戒されるからだ。

 だから、第四王子からスキルを奪うのは簡単なことじゃない。でも、だからといって、やらないわけにはいかない。

 ピャーねぇがこれからも健やかに生きていくために、僕はあいつからスキルを奪う。そして、あいつの人生を……いや、あんなやつのこと気にする必要はない。
 絶対に僕がピャーねぇを守るんだ。改めてそう考えて、僕は馬を走らせ続けた。
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