上 下
134 / 194

134 お茶会にて

しおりを挟む
本日はロズウェル侯爵家の人に招待されたお茶会。社交シーズンだから王都の貴族以外の意見や流行をこっそり知ることが出来る。市場調査にどうだろう。と、提案されたので職人としての新作をエリザベス様に渡してデザインノートと試作を貸出してフィル女男爵として参加。確かに地方貴族の衣装やその人たちに受けるデザインを考えるのに現物を見た方がいいと思った。いつもなら放って置いてくれるのに珍しいと思いながら参加した。

紹介と挨拶とテンプレを熟すが驚かれる。成り上がり男爵だの囲われた平民だのと色々言われているのは知っている。大した問題でもないし、名前だけ聞くと発注書と繋がるからこちらとしては誰が何を買ってくれているか、好みが何となく把握出来た。旦那の趣味なのか絵師がしっかり話を聞いてないのか少し違う気がするが、言われたものを作るのが仕事だからそれ以上何も言わないのが私だ。余計なことは増やさない。

「フィル女男爵はリンドブルム大公といらっしゃる所をよく見かけていましたので…こういう社交はお嫌いなのかと思っていましたわ。」

「お見かけするのがリンドブルム大公と参加する夜会ばかりでしたものね。」

つまり身の程知らずがどの面下げて高貴な方のそばに居るんだ???位の意訳をしてもおおよそ間違ってないのかな???そこでヘラルド様の虫除けですと正直に言えば契約違反になるからニッコリとしておくしかない。流石にレオンハルト様とどうとかは言わないか。

「普段は王宮の魔導師団で仕事をしているのでお茶会等に参加する機会があまりなくて。」

すると働くのはみっともない。と、女は家門を護るのが仕事だと特に外の人は色々言ってくれる。ヘラルド様という囲ってくれる人がいるなら爵位も返して愛妾でいるべきとご自由に発言してくれる。

「ヘラルド様は家に閉じこもってお友達との社交よりは色々と視野を広げた話題豊富な人の方が話をしていて楽しいと仰っていますので皆様とは意見が会わなさそうですね。レオンハルト様も女性の流行の機微より最近研究が進んでいる分野や騎士らしく武芸の話題の話をしている方が楽しいようなので、見た目だけや家柄はあまり関係ない世界なのかも知れませんね。私はどちらかということヘラルド様やレオンハルト様とそういう話をすることが多いので。」

話題がたかがしれているご令嬢や奥様方よりはあなたの知らない世界の1面として重宝されているらしい。そういう話が面白いと好評だ。

自慢と言うより事実なんだけど。お気に召さなかったようだ。じゃあどうしろと???私単独狙いというのも性格悪いと思う。エリザベス様に申し訳ないというのもか…喧嘩買っちゃったからなぁ。アイコンタクトでお詫びしつつ…

話題を切り替えてもらった。と言っても私の新作をお披露目するだけだ。次期侯爵夫人の流行発信は大事なのだろう。私は宝飾品をあまり付けていない。自作したものをちょこちょこと控えめなものをつけるだけにして夜会は新作。宣伝するのは夜会とロズウェル侯爵家やお客様たちにお任せだ。それにしても王都外の貴族の嫌味は分かりやすい。悪意などなど。王都にいる奥様方の方が怖い、悪意や嫌味をそうとは感じさせないから。それにしても王都のお友達はそういう素振りを見せないのに何故一部の方々は露骨な話をしているのだろう。私も勉強をしているとは思わないのだろうか。

「レフィラ様は最近明るい話題があると噂で聞きましたよ?」
「皆様お耳が早いのですね。実は婚約のお話が纏まりそうですの。」

 へぇ。そんな話をこういうところでもするのか。お茶会で派閥表明とか???それとも情報収集???
「親族の方のご紹介ですか??」
「それが父の知り合いのスカルラッティ家の方と聞いておりまして。まだお会い出来ていないのですがロズウェル次期侯爵様の側近とか。」

 お茶を噴き出さなかった私えらい。エリザベスも目をパチクリとさせておめでたいお話が進んでいますね。と、こちらをチラリと見るが私は笑いそうなのをどうしたものかと別のことを考える。レフィラは姿絵を見ただけで父は問題ないと教えてくれてと。浮かれているが・・・楽しそうで何よりである。イザーク様の体質を知らない人がほとんどで詳細を知っているのはユーリ様と私くらいだろう。ミカエラはうまくいけば良いですね。と、口にはしないがニコニコするだけにする。

 喧嘩を売ってきたのがこのレフィラ様だからわざとかな????こちらを明らか敵視しているし。ミカエラは溜息をつくこともしないでお茶会が終わる頃に迎えとしてイザークが姿を見せないように医療用のガーゼの眼帯にフードを被った従僕として側に来た。

「馬車の準備ができましたよ。」
「ありがとうございます。少しお願いがあるのですが。」
「????」

 耳元にレフィラの事を伝えるとすんすんと何か匂いを確かめている。そのまま帰りますよ。と手を引かれる。

「ミカエラ、お菓子を持ち帰りますか?」
「あ、いただきます。アリアが喜びます。」

 お客様たちが全員帰ると当たり前のように腕の中にすっぽり収めるように抱きしめられながら箱詰めされるお菓子を眺める。

「イザーク、あなたの自称婚約者を見てどうでした??」

エリザベスが困ったわね。と、微笑みながら残ったクッキーをミカエラの口元に持っていくと小動物のようにぱくりと食べてくれる。

「見ただけですけれど、何か化粧が派手で香水もふんだんに振りまくった方でしたね。鼻が曲がりそうです。」
 人の頭に顔を埋めて鼻が曲がりそうだからこっちの匂いを嗅いで鼻を元に戻す。と、言いながら人をぬいぐるみにしている。重いし邪魔だ。

「急に噛み付いてくると思ったのだけれども、ミカエラのことを知っていたのね。」

「みたいですね。これを見せてやりたいです。目立って姿を隠していないのに渡された姿絵は違うもののようですね。あ、お菓子ありがとうございます。」

 帰ることにした。お菓子のお土産のために来たものだ。アリアと食べて忘れよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日は私の結婚式

豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。 彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ
恋愛
「俺と離婚して欲しい、君の妹が俺の子を身籠った」 パルリス侯爵家に嫁いだソフィア・ルモア伯爵令嬢は結婚生活一年目でソフィアの夫、アレック・パルリス侯爵に離婚を告げられた。結婚をして一度も寝床を共にした事がないソフィアは白いまま離婚を言われた。 夫の良き妻として尽くして来たと思っていたソフィアは悲しみのあまり自害をする事になる…… 誤字、脱字があります。不定期ですがよろしくお願いします。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

処理中です...