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62欲と本音

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「帰ってもいいですか??」
嫌な予感がしたので帰ろうと思った。
「ミカエラ、報酬として国宝の宝飾品を保管している部屋に入って手に触れるように処置をしようと思うのだが?」

 ヘラルドがミカエラの肩に触れて座るように肩を押して座らせる。ミカエラはそれでも帰ると言えずに大人しく座るとお茶が入れ直しもあり、口をつける。
「人の顔を見て帰ると言うな。」
「経験則で碌な話じゃないってわかっているからです。」
「取り敢えず話を聞いてからお願いします。」

 私が言ったことを両親に言ったら他国に行った従姉妹を呼ぶ用事もあるので私の案が採用されたので宮仕をしないかと言われた。

「え、嫌です。面倒くさい。」

「庶民の目線で上に立つ女は嫌だとかそういうのを見て欲しい。私たちは仕事でずっと見れないし、女性だけの和の中に入れない。合わせてメイドたちも派閥などに忖度して正確な報告をするかどうかも怪しい。」

「二人して人望ないんですね。」
「…そういう環境なんだ。貴族の令嬢ばかりで自分の主人や身内、それに連なる人間の評価はあげたいだろう?そういう忖度まみれだから忖度を全くしない。其方の力を借りたい。勿論伯父上の愛人としてで構わない。行儀見習いでもいいし、公の立場の女男爵でも、魔導師団付き技術者でも構わない。ミカエラが外朝、内朝どちらも自由にあるけるから頼みたいんだ。報酬として従姉妹の国の花の図鑑とその国でしか取れない宝石詰め合わせでどうだろう。従姉妹もそれなりに宝飾品を持ってくるから素手で触って良いようにする。」

 外国の図鑑と宝飾品。しかも他国に嫁げるほどの高位の貴族の宝飾品に宝石詰め合わせなんて……私が何かするのではなくて女性の通知表をつけるだけなら…

「作法に五月蠅く言われませんか?」
「近くにいる人間には言わないように言っておこう。」
「仕事道具持ち込むのは?」
「許可する」
「通いですか?」
「泊まりだが、護衛騎士は顔見知りにしておく。」

 外国の図鑑や国宝を触ってもいいとか外国の宝石詰め合わせで天秤が簡単に傾いてしまった。私は安いんだろうなぁ。使い勝手がいいとかそんな感じなんだろうなぁ。でも私の欲しいものをくれているし、ヘラルド様は私が嫌がることはしないし、色々心を砕いて下さっているのも分かるので、なるべく頷きたいけれど…どうなのだろう。

「私が国宝を触るなんて許可降りるのですか?贋作作れるって宣言しちゃてますけど。」
「勿論監視の人間はつけるが、勉強のためだろう?」
「そうですけれど。わかりました。」
「ユーリ殿にも私から話を通しておくから仕事道具とかをまとめておいてほしい。事前に部屋を整えたりする必要もあるだろう?」

 うまく言いくるめられた気がする。美味しいケーキや焼き菓子を与えられて機嫌を取られている気がするけれど…双子は承諾を得られたからと帰っていったけれど影に控えていた護衛棋士とかの人数に驚いた。

「ヘラルド様…双子の甥って結構身分が高いのですか?」
「そうでもないよ。私よりは下だし。大したことないよ。父親が過保護というか甘やかしているだけだから。」

 よしよしと頭を撫でられるけれど、疑った方がいいのだろうか。いや、疑ったらさらにしんどいことになると思う。疑うと多分私の顔色が真っ青になる未来しかないから怒られるまでこのままにしておこう。私が怒られていないからそれでいい気がする。
 でもあの双子誰かに似ているんだけれど、誰だろう。ヘラルド様の顔も似ているけれど、どこかで見た覚えがあるような。まぁ覚えていないからどこかですれ違った程度なのだろう。多分。
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