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55引越し前

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「ミカエラ、新居に雇う人間は決まっているのか?」
「それが商業ギルドに行ったんですけど…」

商業ギルドに行き、新居建設中で家事等をしてくれる人を雇いたいと相談したのに適任が見つからないと言われてしまった。何故だろう。掃除洗濯料理しか求めてないのに。

「適任がいないって言われて。」
「まぁ、ヘラルド殿が建ててる家の使用人ってなるとね。」

「え?」
「ウチから交代で人を出すよ。見知っているし大丈夫じゃないかな。」
「お金は私が出します…」
「これからも友達として弟含め仲良くしてくれるなら割安にしておくけど?」

「…あ、はい。私なんかで良ければ…」

という事で今日はヘラルド様の家で夕食らしい。温室が凄いと聞いたことがあるからそれが見られるなら見たい。

「ミカエラ、珍しい草花や名工の作品があるからと他の貴族の家にホイホイついて行かないように。」

「…私そんなにホイホイ行きそうですか?」
「…警戒心あるのか?」
「…どうなんでしょう?」

自信なくなってきた。馬車も座り心地最高である。侯爵家の馬車も良いと思っていたけれど、この乗り心地はもっとお金持ちなのでは???

「王城上がる為の服は仕立てているのか?」
「はい。それはエリザベス様達が恥をかかない程度になるべく簡素で質素で汚してもいい服ということで。」

「…だけなのか?」
「多分?私作業以外の仕事で来るつもりないですから。お金は支払うので必要な物の準備とか頼みまくった覚えはあります。」

「こちらで確認しておこう。ミカエラの予算で服を仕立てたら大惨事になる。」

そうだと思います。

御屋敷…侯爵家より大きい。当たり前のように執事?家令と思しき男性に愛人だと言われてしまった。

「恋人ではなく愛人なのですか…」
「相互虫除けの契約だ。最近納期未定で流行っている宝飾師がいるだろう。」
「えぇ。腕が良いのかご婦人方に人気のある。贈られるのですか?」
「いや、自分で作るだろう。その職人で年明けには男爵になるミカエラ・フィルだ。彼女は仕事に集中したい。私は縁談だの愛人希望が面倒臭い相互利益を得る関係だ。だからあまり変な扱いをするな。」

愛人を囲うのは良くないだろう。

「あぁ、それで最近家を買われたりしたのですね。では部屋等は。」

「たまにしか使わない客間を支度部屋として押えておいてくれ。体裁のためにたまにそこで泊まってもらう。」

メイドに客間に案内されたが豪勢だった。一泊幾らくらいするのだろう。調度品とかに施された技術を見るだけでも勉強になる。



「甥である殿下より年下の少女を愛人と紹介されて心臓が止まるかと思いました。」
「あぁ、それと彼女には私の地位や身分を明かしていないから侯爵より偉い人くらいの認識でしかない。明かすようなことがないよう徹底しろ。」
「…何故です?」
「私にとって都合がいい。それに甥二人の社会勉強…根性叩き直しで彼女の育った孤児院に無理矢理放り込んで物乞いやら色々させたらしいから知らない方がいいだろう。彼女は根っからの庶民で貴族の地位もいらないと思っているのだから余計な情報は遮断しておくのがいい。」

クズ石に国の軍事力を揺るがすほどの加工ができる職人だと説明を聞いて執事は納得した。国が彼女を繋ぎ止めておきたい。それならばなるだけ心地よく仕事をしてもらう為に面倒事を囲いたい人達で囲っておこう。そういうことなら愛人でも恋人でも主の思うように置けばいいが実りがあれば尚良と淡い期待を持っていた。



「仕事は立て込んでいるのか?」
「立て込んでは居ないのですけど、発注書は溜まってます…」

食事がとっても豪華過ぎる。美味しいけれど、疲れるメニューだこれ。

「納期未定で良ければという注文形態だったな。」
「はい。貝殻のシート貼り付ける方も何故か客が分散しなくて下絵だけ施した物に仕上げをするとかになってます。合間を縫って新しいデザインとかも納品しているので…自分で自分の首を締めてます…今現在。」
「筆記具なら予備もあるがしたいことは?」
「…温室って1つですか?」

この屋敷は庭も自慢らしいが温室には珍しい草花、薬草を育てているので薬草用に1つ、草花用に1つと分けているらしい。

「それと宝物系は丸一日ある方が良さそうだな。」

「…勉強の為にその部屋でずっと装飾品眺めていたいです。シャンデリアも素晴らしいですし。」

「時間がある時に自由に来たらいい。私が不在の時は行ける場所に制限を設けるが、行けない箇所は興味のない場所だろうから。」

「ありがとうございます。」

安い紙とペンを借りて部屋にある装飾品をスケッチしたりマジマジと眺めて勉強に当てる。メイドからそろそろ寝る時間だと言われるまで刺繍の図案をスケッチして時間が過ぎていた。

「す、すみません。」

ホッコリとして翌日は侯爵家別邸に送ってもらった。仕事に活かそう。と、それだけしか考えていなかった。




「ミカエラ!ヘラルド様と付き合い出したって本当!?」

レオンハルトが翌日朝食後部屋に来てその質問だった。

「あの、ユーリ様にちゃんと聞きました?」
「へ?違うの???」
「…あの、私が貴族対応面倒臭い。仕事していたいというのはご存知ですよね?」
「あ、あぁ…」

それを踏まえてヘラルドより出された条件を全て伝えて愛人契約しただけだとちゃんと伝えた。だけどテーブルに頭をうちつけているこの若様をどうしたものか。

「なので年明け頃には家も出来上がるので引っ越します。」
「急にウチに連れてきて、家が燃えて結構長くいたよね……寂しいかも。」
「…そうですか?家の場所ご存知ですしいつでも遊びに来てください。でも侯爵家からメイドとかを借りるお話もありますし。」

引っ越しまであと少し
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