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15外の空気は美味しい

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ミカエラのマナー講座も半日だけで身についているのかも本人ですらイマイチ理解出来ていない。半日の仕事だけど、雑念を払うのにはちょうど良かった。

のだけれど…仕上がってしまったドレス、1式。頬をひきつらせる訳には行かず、レオンハルトから受け取る。

「ありがとうございます…」
「ミカエラ嬢、気になってることとかある?」
「ミカエラで大丈夫です。面映ゆいので…そうですね、納品したいなと。ある程度出来ましたので…」

レオンハルトは積み上がっている木の箱を見てなるほど・・・と、納得?頷いていた。

「ギルドに連絡もいる?」
「はい。鑑定書を付けてもらって完成なので。」
「じゃあ連絡しておくよ。」

毎食夕食が一緒のせいか口調が丸くなった。敬語は私が恐縮してしまうし私にはこっちの方が楽。

「ありがとうございます。」
「兄上と話とかした?」
「えぇと…城だと形式ばったやり取りになるからって事前に加工方法とか時間とか…技術的なアレコレが。」
「だけ?」

心配?好奇心?どちらなのだろうか。

「あとはミリーナ様の事とか。」
「ごめんね、無理言ってない??」
「えぇ、特に言われてませんよ。」
「そっか。隊長が肩こり軽減ネックレスのお陰で訓練後の書類仕事が楽になったから商品化したら定期購入するって。」
「…有難いです。」
「仕事とマナー講座で疲れてない?気分転換とかしたいことない?」

商品は大体作った。一旦家に帰ったりギルドに行って発注書を受け取るのもありだと思うが、それは気分転換では無いと思う。

「ミカエラ?」
「そうですね、人の作品を見てみたり温室などで花を見て新作のデザインの参考にしてみたいです。」
「それ仕事の延長…分かったよ。ウチの温室なら人にいえば行けるから…別のところに行けるよう兄上に相談しておくよ。」
「何故ユーリ様???」
「名目兄上のお客様だし。兄上から防犯上の都合で報告しなさいって言われてる。」

なんだろう。ロズウェル侯爵令息兄弟に任せてくれと言われて安心してよろしくといえない。不安要素しかない。だけど断る選択肢はそこには存在しないのでよろしくお願いします。頭下げるしかない。

「多分気に入るから任せて。」
「はい。」

なんだろう。




とりあえず侯爵家の馬車とは分からない普通の馬車を借りて納品に向かうのだが、何故かレオンハルトが荷物持ちとして来た。顔がいい。

「レオンハルト様、重くないですか?」
「重くないよ。それにしてもこんなにも凄いね。」

箱を抱えてもらって鑑定士達に全て鑑定をしてもらって値段を決めてもらった。いいお値段。原材料費タダ同然とは口が裂けても言えない。

「ミカエラさん、発注書がたんまりなのですが持ち帰られますか?」
「持ち帰ります…」
「因みに新作は?という問い合わせも多数頂いております…」
「…作りたいですが時間がなくて…」
「…ですよね。ギルド長から欲しい素材があれば仕入れておくとのことです。」

1度自分の口座を確認する。ギルドにマージンや手数料を引いてもらって税金関係も大体お願いしてしまっているが引越しして大きな家に住めそうなお金が貯まっていた。

「ヒェッ」
「ミカエラどうしたの?」

書類をしまって目線を逸らす。

「ちょっとギルドの人と話しておきます」

ギルドの人に自分の家の繰り上げ一括返済の申し込みを申請してもお金が大量にある。多すぎる。

「どうしたの?書類不備?」
「いえ…持ち家の借金繰り上げ返済出来そうだったので私の口座に移した後に借金返済してきたんです。」

当たり前のように腕を出されているから甘んじてエスコートを受けるけれど慣れない。

「慣れていますね。」
「姉達のエスコートを何度もしたからね…」

遠い目で言われた。あの二人のエスコートがそんなに大変だったのだろうか。聞くまい。

「この後は家?」
「家は最後で良いです。原材料の石や道具を取りに戻るだけですし。作業用の服とか買おうかと…あと手袋とか。」

何故ついてきたのかは知らないけれど…
出発時にいい笑顔で荷物持ちと言われたので荷物持ちなのだろう。

「…気になる店があるなら入りましょう?」

荷物持ちと言っていたがレオンハルトは物珍しいのか周りを見て回っており、エスコートはしているが好奇心は抑えきれていないようだ。

「え…あ…貴族街よりとか商業区の飲み屋とかは行くんだけどこういう道具だけ取り扱っているのは初めてで。」

自分のをさっさと買ってしまおう。ミカエラはいつも使っている店に入る。

「ミカエラ、随分身綺麗になったな!」
「おじさん…まぁうん。有難いことに色々お話を頂いてそうせざるを得なくなったというか。はい、これ。」

会計。手袋とピンセット各種。

「収入増えたなら良いの買えば良いだろ?不経済だぞ。」
「不経済って別に自分の手にしっくり来るものにしてるだけで。道具が良くても腕がついてなかったら意味無いし。」
「そりゃそうだ。欲しい道具とかないか?」
「とりあえずないかなぁ。欲しいのとかあったらまた聞くかも。」

伸縮性もあって汗を吸いやすいし乾くのも早いシャツや肌着を買っておく。

「ミカエラ、宝飾師になる女性って少ないの?」
「そうですねー。自分で山まで行って発掘もしないと行けなくなったりするので。なりたがる人は多くないと思います。見習い期間はひたすら肉体労働で原石を削ったりしますから。」

それよりも宝石デザインは男のものっていう意識が強い。王侯貴族の装飾品の延長戦で今や女性が主要顧客なのに男らしさとか雄々しさとか求められていたから。

「なるほど?ミカエラの髪飾りは重くないと姉上達が言っていたからそういう方面で人気があるのかと思った。姉上達の髪飾りと重さが全然違うから。」

「…そうですねー自分で付けるのが嫌になる物は作りたくないですから。あ、レオンハルト様ちょっとお願いがあるんですけど。」
「何?」

素材屋に向かう。魔鉱銀やネックレスのチェーン、指輪の台座を買う店だ。

「レオンハルト様のお母様とミリーナ様のお母様…ユーリ様の奥方が私の作ったものを持ってなくて…衣装等見繕って頂いたようなので何かお返しで作ろうかと。何が良いですか?」

「正規料金支払うよ…母と義姉も喜ぶと思う。2人とも髪飾りは持ってるみたいだから…ブレスレットとか?」

ブレスレット…付け外しのしやすいチェーンタイプのほうがいいかな。サイズ調整もしやすいし。

「ご夫婦で好きな物とか結婚した季節とか好きな花とかご存知ですか?」

「父は…」

二組の結婚式とかを聞いておく。ここまで露骨に聞いているのにレオンハルト様は夫婦お揃いでつけるかもしれないという考えにならないようだ。貴族にそういう風習がないのか…重婚も認めているから夫婦でなにか付けると思うんだけど。
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