ヒーローやられ

熊次郎

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プロテクターオフ

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アクアの仮面は鼻と口が露出している。
ゴクゴクゴク勢いよく飲むと、ミネラルウォーターが口元から少し垂れ流れた。

『そんなに慌てなくても。』
麗奈がハンカチでアクアの口元を拭く。微笑みながら唇から顎をゆっくりと拭いた。
『あ、すみません、麗奈さん、大丈夫です。で、話を聞かせて下さい。』
アクアはドキっとしてしまい、慌てて麗奈の手を押し戻した。

麗奈は急に理由もなく連れ去られ、戦闘員に何かされることもなく捕獲された話をした。
一から話をしてくれたが、麗奈の仕事や人間関係が悪の組織の標的になる要素はなく、謎は深まるばかりだった。

気付くと30分近くも話を聞いてしまい、アクアは帰ろうとした瞬間、麗奈は言った。
『助けて下さったお礼にマッサージさせて下さい。私、プロなんで分かります。右肩と腰を痛めてるでしょ?』
『え、すごい。その通りです。でも、お礼なんていりません。当然のことをしただけですから。帰ります。』
確かにこの数日、右肩と腰に違和感があった。柔道の練習と戦闘でもそれを感じていた。しかし、魅惑的な誘いをアクアは振り切ろうとした。

がしっ。
立ち上がって帰ろうとしたアクアの手を麗奈が掴んだ。
『じゃ、お礼じゃないです。私が治すんで、その分世の人をたくさん助けて下さい。』
その言葉がアクアを立ち止まらせた。世の人の為と。

マットが引かれて、アクアは素直にうつ伏せになった。
『さすがにそのスーツは脱げないよね?』
『あ、すみません。プロテクター解除とスーツ無力化出来るんですけど、ほぼ裸みたいになっちゃうんです。タオル、貸してもらえませんか?』
『分かったわ。着替えるついでにタオル持ってくる。』

(世の人の為だ。俺の俗欲じゃない。世の人の為だ。)
アクアは念仏のように心で繰り返した。

ふぁさ。
腰回りにタオルが被された。
顔にも頭からタオルが被さる。

『プロテクターオフ!パワー1セット!』
ガチャっ。
すーっ。
プロテクターが外れワイヤーとなった。手袋とブーツも糸に戻る。スルスルとブレスレットに戻っていく。スーツがどんどん薄い色になっていく。
アクアの肩や背中の筋肉や褐色の肌が見えている。
パワー1にしたスーツは全身極薄のタイツの様にアクアの体の形をあらわにして密着している。タイツと違うところは全ての体の部位が透ける為、乳首やちんぽ、ケツの穴まで丸見えになってしまうのだ。

こんな姿を人に見せたことはないが、アクアは世の人の為、敢えてさらすことにした。世の人の為。決して魅力的な麗奈に触られたいからではない。アクアの正義感からだ。
アクアの頭の中はそういう考えをグルグルと巡らせていた。

『じゃ、始めますね。』
麗奈がマッサージを始める。
首、肩。特に右肩は念入りにマッサージされた。
『あっ、あ。いい。気持ちいい。』
麗奈のマッサージは本格的で確かにアクアのコリをほぐしていった。
アクアはヒーローであることを忘れ、その気持ちよさに体を委ねていく。

ぐいっぐいっ。
『キク、キク。』
麗奈が腰のツボを押す。見る見る腰が軽くなっていく。

『男らしい手ですね。』
むき出しになっているアクアの手を麗奈が握る。素手と素足はスーツをまとっていない。直に手を触られた。
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