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第二部 根を張り始めた私
事情聴取
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取り調べにあたったのは「神官長」と呼ばれる男性だった。質素だけれど、品の良い調度品が置かれた狭い部屋で、もう一人、若い神官が窓辺にペンと紙を持って立っていた。書記さんだ。つまり、この会合は記録されるということだね。
書記さんはまだ若くて、目がとても細い人だった……って、観察としてはどうなの……って話もあるんだけど、なんか、目が細い人だな!っていうのが第一印象なんだよね。ニコニコ糸目系の若いヒョロっとした男性だよ?
対する神官長の方は、細くて目つきがするどい……んだけど。
「いやいや、お疲れでしょう。この時期にご足労いただきました」
物腰は柔らかいんだよね。
ちょっと身構える。
「いえいえ。この冬季に呼ばれたということは、何か重大な問題があると考えられていたのでしょう?」
「貴方には神罰虚偽申告容疑がかかっています」
あらら。
「なんの件でですか?」
とりあえずは、すっとぼける。
「バグズブリッジでの件です。ご存知ないとはおっしゃいませんね?」
「詐欺まがいの契約をさせられそうになったら、その方の腕が石化した件ですね」
これは事実として起きたことであって否定できない。
「ええ。それを神罰と虚偽申告したとの疑いがかかっているのですよ」
「……それは奇妙な事ですね」
「ほう…?」
神官長は片眉を上げた。
「つまり神罰ではなかったと認めるわけですね」
「いいえ」
危ない危ない。この人、すごい露骨な誘導をしてくる。
「私がオーロラ神の誓いを立てたことは事実です。また、その方の手が石化したことも事実です。でも、そこにつながりがあるかどうか、それが神罰であるかは一信者に判断がつくようなことではありません」
準神罰認定したのはあんたたちじゃないの、と言うと、神官長は目を細める。
「つまり、オーロラ神は関係ないと……?」
……こっわいなぁ。
これ、頷いたら牢屋直行じゃないの。
「そんなことは申しておりません。結果として私が助けられたことについては、オーロラ神を含む全ての神々に深く感謝しております」
そう言うと、神官長はちょっと背後の書記を気にする素振りをした。
『神官長、これだけでは弱いです。神殿長もいらっしゃいませんし……』
古典ヴァドス語で書記が言った。
うおお?!
わかる?!
っていうか、この人、神官補の古典ヴァドス語に比べたら、つっかえつっかえで、ゆっくりだからわかりやすい?!
とりあえず、神官長とは別に神殿長という役職があることが分かった。
もしかしたら神官長よりも偉い……?のかな?
『冬季の些末な事項の判断は神官長と準神官長に任せられている』
神官長は、ふん、と鼻を鳴らした。
あ、この人は古典ヴァドス語が流暢だ。
わかるものなんだな……。
しかし、状況が読めない。ちょっとどう動くべきなのかの判断がつけづらい。
『貴族と関係があるかもという調査結果もありましたし……』
『貴族と関係があっても庶子は平民だ』
『それでも神殿会議の開けないこの時期に……』
えーと、冬季、交通の便が悪い間は通常神殿長マター、神殿会議マターの案件でも神官長が些末な案件は判断出来る……?ということ?
あれ、もしかして、この真冬にやたら無理をして私がここに連れて来られた理由って……え? もしかして、きちんとした神殿会議をすっとばして処分するため……?!
ちょ……! まずくない?これ?
書記さんはまだ若くて、目がとても細い人だった……って、観察としてはどうなの……って話もあるんだけど、なんか、目が細い人だな!っていうのが第一印象なんだよね。ニコニコ糸目系の若いヒョロっとした男性だよ?
対する神官長の方は、細くて目つきがするどい……んだけど。
「いやいや、お疲れでしょう。この時期にご足労いただきました」
物腰は柔らかいんだよね。
ちょっと身構える。
「いえいえ。この冬季に呼ばれたということは、何か重大な問題があると考えられていたのでしょう?」
「貴方には神罰虚偽申告容疑がかかっています」
あらら。
「なんの件でですか?」
とりあえずは、すっとぼける。
「バグズブリッジでの件です。ご存知ないとはおっしゃいませんね?」
「詐欺まがいの契約をさせられそうになったら、その方の腕が石化した件ですね」
これは事実として起きたことであって否定できない。
「ええ。それを神罰と虚偽申告したとの疑いがかかっているのですよ」
「……それは奇妙な事ですね」
「ほう…?」
神官長は片眉を上げた。
「つまり神罰ではなかったと認めるわけですね」
「いいえ」
危ない危ない。この人、すごい露骨な誘導をしてくる。
「私がオーロラ神の誓いを立てたことは事実です。また、その方の手が石化したことも事実です。でも、そこにつながりがあるかどうか、それが神罰であるかは一信者に判断がつくようなことではありません」
準神罰認定したのはあんたたちじゃないの、と言うと、神官長は目を細める。
「つまり、オーロラ神は関係ないと……?」
……こっわいなぁ。
これ、頷いたら牢屋直行じゃないの。
「そんなことは申しておりません。結果として私が助けられたことについては、オーロラ神を含む全ての神々に深く感謝しております」
そう言うと、神官長はちょっと背後の書記を気にする素振りをした。
『神官長、これだけでは弱いです。神殿長もいらっしゃいませんし……』
古典ヴァドス語で書記が言った。
うおお?!
わかる?!
っていうか、この人、神官補の古典ヴァドス語に比べたら、つっかえつっかえで、ゆっくりだからわかりやすい?!
とりあえず、神官長とは別に神殿長という役職があることが分かった。
もしかしたら神官長よりも偉い……?のかな?
『冬季の些末な事項の判断は神官長と準神官長に任せられている』
神官長は、ふん、と鼻を鳴らした。
あ、この人は古典ヴァドス語が流暢だ。
わかるものなんだな……。
しかし、状況が読めない。ちょっとどう動くべきなのかの判断がつけづらい。
『貴族と関係があるかもという調査結果もありましたし……』
『貴族と関係があっても庶子は平民だ』
『それでも神殿会議の開けないこの時期に……』
えーと、冬季、交通の便が悪い間は通常神殿長マター、神殿会議マターの案件でも神官長が些末な案件は判断出来る……?ということ?
あれ、もしかして、この真冬にやたら無理をして私がここに連れて来られた理由って……え? もしかして、きちんとした神殿会議をすっとばして処分するため……?!
ちょ……! まずくない?これ?
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