異世界に召喚されたんですけど、スキルが「資源ごみ」だったので隠れて生きたいです

新田 安音(あらた あのん)

文字の大きさ
上 下
56 / 172
第一部 綿毛のようにたどり着きました

デザート(アーモンドと梨のタルト、ラズベリー添え)

しおりを挟む
「マージョさんのパッチワークエプロンはものすごく目を引いたのですよ」

フェリックスさんは言う。

「私はストウブリッジの市場にガラス瓶がたくさん出始めた頃から気になってちょっと目をつけていました」
「ストウブリッジでお会いしましたものね」
「逃げられましたがね」

わ。バレてましたか。

「ホワイトさんが定期的に質の良いものを市場に持ってきていましたし、でもそれはヒルトップ村で作れるようなものではない」


!!

私の村の名前はヒルトップ村だったの?!

みんな単に「村」としか呼んでいなかったから、そもそも「知識」を確認しようとも思ってなかったよ!

「盗品の可能性も疑ったのですよ、正直なところ」

……そうか。
そういう疑いも持たれるよね、そりゃあ。

「でも、色々突き合わせていくとその可能性も低い。でも、そんなことを考えたのは私だけではないと思うんですよね」

……なるほど?

「それでここに来てハーマンの件です」

あー。

私、もしかしてものすごく目立つ可能性がある?

「……ですね。というか、すでに気づく人は気づいてます」

フェリックスさんは柔らかく苦笑した。
「こちらとしてはできるだけ情報を流さないように尽力しますが、もしも流れてしまったときにうちの商会かギルドと契約しているとなると」

「興味本位のへんな横やりが入らない……」

「はい。そういうことです。あとは、ぶっちゃけマージョさんを保護することで、神罰の発動を絶対に避けられるようにしたい、というのもあります」

おー。ぶっちゃけてるね!
でも、このくらい正直に話してくれると嬉しい。
むしろ信用できる。

「いずれにせよ、神託がなければ契約はできないのでしょうからまずはマージョさんがよければ、契約の叩き台だけでも用意させますよ」

フェリックスさんは私のグラスに蜂蜜酒を注ぐと自分のグラスもなみなみといっぱいにした。

「どうですか?」

「そうですね……とりあえずお話を伺うだけでしたら……」

「!! 本当ですか?!」

な、何でそんなに驚くの?

「う、嬉しい……」

え……
フェリックスさんは耳まで赤くなって俯いた。

ちょ……! 何この人可愛い。
30すぎの男性の照れてる姿を見て可愛いと思うなんて想像もしなかったよ……。

ていうか、そんな大したものは売れませんよ、資源ごみだし!

「デ、デザートを頼みましょう。私は次の仕事があるのでギルドに帰らなくてはなりませんが契約神官補が甘いものが好きですから包んでもらいましょう。話をしながら召し上がるといい」

フェリックスさんは一気にそう言った。

ほえー。
神官補は甘いものが好きなんだ……。意外。
ていうか、あの人ギルドでも名前は呼ばれていないんですね……。

「名前はもちろんあるんですが……」

フェリックスさんはちょっと目を泳がせた。

「本人があまり気に入っていないようで……」
「そ、そんなへんな名前なんですか?」
「いや、まあ、どうしても呼ぶときはヴァル、と……」

ヴァル……
あー。正式名称ヴァレンタイン……

男性名になることもあるけど8割女名前だね。

そっか。
そんなの気にするのか~。
そして意外な甘党……。

「アーモンドと梨のタルトにしましょう。オススメですからね」

フェリックスさんがニコニコした。


しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

祖母の家の倉庫が異世界に通じているので異世界間貿易を行うことにしました。

rijisei
ファンタジー
偶然祖母の倉庫の奥に異世界へと通じるドアを見つけてしまった、祖母は他界しており、詳しい事情を教えてくれる人は居ない、自分の目と足で調べていくしかない、中々信じられない機会を無駄にしない為に異世界と現代を行き来奔走しながら、お互いの世界で必要なものを融通し合い、貿易生活をしていく、ご都合主義は当たり前、後付け設定も当たり前、よくある設定ではありますが、軽いです、更新はなるべく頑張ります。1話短めです、2000文字程度にしております、誤字は多めで初投稿で読みにくい部分も多々あるかと思いますがご容赦ください、更新は1日1話はします、多ければ5話ぐらいさくさくとしていきます、そんな興味をそそるようなタイトルを付けてはいないので期待せずに読んでいただけたらと思います、暗い話はないです、時間の無駄になってしまったらご勘弁を

異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。 何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。 本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。 何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉ 何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼ ※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。 #更新は不定期になりそう #一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……) #感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?) #頑張るので、暖かく見守ってください笑 #誤字脱字があれば指摘お願いします! #いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃) #チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...