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第一部 綿毛のようにたどり着きました

カーテン、お布団、ラグ

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目が覚めたら体中汗をかいていた。
ちょっと気持ち悪いけれど、着替えはまだないし、すぐにシャワーを浴びられるわけでもない。
でも、疲れは随分とれた。
コップ一杯水を飲むと、なんか、身体がしゃんとする。

ふと思い立って暖炉へ行く。大鍋から琺瑯容器を取り出して布巾でグルグル巻く。
原始的な保温。これでしばらく冷めないはず。
残ったお湯はいい感じの温度になっていた。
まだちょっと熱いけれどね。
このお湯を使って蒸しタオルを作る。熱いタオルで身体を拭いたら随分スッキリした。さっきとってきたシャボン草の残りを入れたからちょっと草っぽい。

部屋はとにかく暗い。
ぼんやり明るくなるだけの生活魔法が重宝されるわけだ。

日はずいぶん高くて、これは……午後4時くらい?
緯度がわからないから判断をつけにくい。

洗濯物のところへ行くと、厚手のバスタオルも含め、全部乾いていた。
今は夏っぽいけど気温はそんなに高くないので、なんかふわっと乾いてる。ギュッと触るとお日様の匂いがする。


「えへへ」
なんか嬉しい。
せっせと往復して取り込む。かなりの量あったからね。
そのうち布団をちゃんと誂えるけど、今は洗濯したタオルのうち、見た目が良くないものをとりあえず掛け布団カバーにつめて布団の代用にするんだよ。

なんだか、究極のひとり遊びっぽい。
子供の頃にやった、秘密基地づくりみたいだね。

最初に来たときには気づかなかったけど、毛布だと思っていたものの一つは麻袋のようなものだった。
中に藁屑があったから、多分普段は藁をつめて使っていたんだろう。日本から持ってきた布団カバーと、この袋で、とりあえず掛布団、敷布団的な何かはできそう。それから枕も、まずはタオルかな。そのうち作り直そう。

なんとなく、この家はしばらく留守にしていたような気配がある。
そういう設定なんだろう。

キレイめなタオルとそうでないものを分けて、見た目の良くないものを袋に詰めていく。できるだけ均等になるように気をつける。
冬が来る前にはきちんとした布団の形にしたいな。キルトにするといいのかな。中に詰める羽毛とか、そんなものが必要そうだけど……。

残ったタオル類は色がきれいなもの。畳んで重ねていたら、何だかニマニマしたくなってきた。
何を作ろう。
まずは敷物がほしいんだよね。
リビングキッチンは石の床で寝室は木の床。
冬になったらしんしん冷えそう。今は涼しくていいけれどね。これはしばらくかけて少しずつ進めていこう。計画的に。計画的に!

でもとりあえずはカーテンとパジャマだ。
もちろんカーテンポールなんてないから、天井に紐を渡してつりさげるようかな。

上を見ると黒い金具がたくさん天井に取り付けられてあった。

「!」


この金具から色々なものを吊り下げて乾かしたり収納したりできるんだ。庭のハーブ類もここに吊り下げて乾かせる。
天井の金具はリビングキッチンのほうがたくさんあるけど、寝室にもいくつかあった。窓辺にもあるし、ベッド周りにもある。
ここにもカーテンを作りたいけれど、まずは窓のカーテンを作ろう。小さいし、目隠しができればいいだけだからね。


古着の山からきれいな青いコットンのワンピースを選ぶ。そのまま着ても良さそうだけれど、これだったら縫い目をほどけば結構な量の布がとれる。うん。これを真四角に裁断して縁をかがろう。
後でもっといい用途が見つかるかもしれないけれど、とりあえずはこれでいい。


アイロンがないので縁はかなりガタガタだったけれど、とりあえず、カーテンは完成した。薄手の青い布ごしに午後の日差しがチラチラ入る。裁縫箱から取り出した黄色のリボンで輪っかを作ってカーテン上に取り付けたから開閉もできるんだ。
カーテンレールほどスムーズではないけれど、うん。合格点!


残りの服や布物を確認する。テーブルクロスやバンダナはありがたい。そのまま使えそうだ。服はちょっと着たら目立ってしまうかもしれないものが多い。自宅用だね。

調べていてジッパーの付いた服が一着もないことに気づく。まだジッパーが発明されてない世界なんだね。
ゴムはどうやらあるみたい。

作ろうと思えばシュシュも作れるんだろうということはわかったけれど、あまり目立つのは望ましくない。

ひっそりと、隠れて、平穏な生活をしたいのだ。
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