僕だけが蘇生魔法を使える!

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第1章 大陸南東編

2.合宿の誘い

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「話は分かったわ。でもね、母親としては、簡単にいってらっしゃいなんて言えない。だって、ロトはまだ12歳よ?しかも冒険者レベルも3でしょ?平和な世の中だと言っても、子どもの1人旅なんて、死ににいくようなものだわ」

「母さん、僕は決めたんだ。このスキルを勇者リンネ様が授けてくれたって聞いたとき、どんなことがあっても逃げずに役立てようって。それに、勇者リンネ様も12歳で魔王と戦うために、世界を救うために旅に出たんだよ!僕も頑張るから!」

「あなたは昔っから、まるで自分のことのようにリンネ様のことを自慢するのね。もちろん、止めようとは思わないわ。でもね、リンネ様みたいに仲間を探しなさい。全てを1人でできるなんて考えないでね」

「分かってる!ありがとう母さん!!大好きだよ!」

 母は僕を強く抱き締めてくれた。僕も抱き締め返す。母さんの涙を見るのは5年ぶりだ。

 僕は別にマザコンではない。
 父がそこそこ有名な冒険者ということもあり、人並み以上には恵まれた環境で育ったんだけど、メイドを雇うほどではない。だから、母一人を置いて出ていくことへの不安と罪悪感があるんだ。


 母さんは僕を解放すると、ちょっと待ってなさいと言い残して部屋を出ていった。

 僕の部屋……毎日こっそり続けていた素振り用の木刀。地理や歴史、算術の教科書。父さんからもらった怪しい素材。いつも辛いときに包んでくれた布団。しばらくみんなサヨナラだね。もちろん、帰ってくるから待っててね!

 感慨に更けながら部屋を眺めていると、母さんが何やらたくさんの荷物を持って帰ってきた。

「ギルドマスターのリザ様に話をしてきたわ。銀の召喚石の話をしたら信じてくれた。いろいろ貰ってきたから、全部持っていきなさい」

 ギルドマスター!?
 確か、かつて勇者リンネ様と共に戦ったエルフのリザ様だ。何度か話したことがある。凄い美人。

「アイテムボックス、飲料水、保存食、着替え、ポーション、毒消し、お金……旅に必要な物は全部入れておくからね!あと、この短剣も」

「それって、父さんが迷宮の宝箱から出した奴だよね?確か、婚約のときに貰ったとかなんとか……」

「ふふふっ!よく知ってるわね。この短剣には特殊効果があるの。魔力を込めて振れば、5mの風刃が撃てるわ。気休めかもしれないけど、父さんと母さんが守ってると思って持っていきなさい」

「うん……大切な物をありがとう。僕も好きな子ができたらそれをプレゼントするよ」

「こら。ちゃんと持って帰ってきなさいよ!貸しただけなんだから」

 さっきまで泣いてた僕たちだけど、今は笑いあっている。この短剣があれば、何が起きてもきっと大丈夫な気がした。


 ★☆★


 翌朝、朝食をたっぷり食べて、お弁当もたくさん作って貰って、僕は家を出た。既に朝日は教会の屋根から顔をのぞかせている。9時過ぎというところか。いつもなら学校に遅刻する時間だけど、今日は5日ぶりの休日だ。明日から学校には行けないけど、母さんがちゃんと先生に説明してくれるはず。心残りがあるとすれば……。

「ロト?どこ行くのよ!今日は休みでしょ?」

 出たよ、暴力ルーミィ。
 まぁ、幼馴染みにちゃんとお別れを言えれば心残りはないさ。本当は無視するつもりだったけど、ルーミィの反応が見たいから話すかな。

「おはよう、ルーミィこそどこに行くの?」

「えっ!あたしは……まぁ、何となくロトが心配だったから様子を見に行こうかなぁ??と。昨日はごめんなさいっ!」

 あらま、気にしてたんだ。ルーミィはツンデレとかじゃないからね。本当は優しいはずなんだけど、剣を持つとバーサーカーみたいになるのが珠に傷。

「気にするなって!僕が弱すぎなんだから」

「毎日素振りして頑張ってるの知ってる……」

「恥ずかしいから言うな!ストーカー!」

「努力してる人ってかっこいいよ!」

「励ましてくれてありがと!でも、素振りは昨日で最後になっちゃった」

「えっ?ロトなら絶対に強くなれるのに!」

「強くはなりたいよ?でも、僕は旅に出ることになったんだ。実は今からフィーネの町を出る」

「えっ!?何で急に……やだよ?やだよ!!」


 これから先、自分の運命に向き合うんだ。幼馴染みに話せないようでどうする!考え抜いた挙げ句、僕は勇気を出してスキルのこと、昨夜の夢のことを話した。途中からルーミィは泣き出してる。そんなに悲しんでくれるんだ……何だか貰い泣きしちゃったよ。


「そんなのおかしいよっ!行かないでよっ!」

「決めたんだ、逃げずに運命と向き合うって」

「あたしに相談もしないで……勝手に!!」

「急に決まったし、母さんやギルドマスターには言ってあるよ。大丈夫、またいつか戻るし」

「……いって……」

「え?」

「あたしも連れていって!」

「いや、無理でしょ……ご両親が許さないだろうし、僕は浮遊スキルで飛んでいくんだよ?」

「親は説得する!浮遊は……魔法書があれば買う!」

「確かにルーミィのご両親は優しいし、意外とお金持ちだから可能性はあるけど、それ以前に12歳の男女が旅に出るとかいろいろまずいでしょ」

 ルーミィは顔を真っ赤にして、口をぱくぱくさせながら考え込んでいる。


「それなら!あたしの準備ができるまでは、フィーネで活動すれば?練習も兼ねて!うちで合宿して作戦を考えよう?ね?いいでしょ?」

「う??ん……」

 確かに、昨日の今日でほぼノープランだったし、地元のフィーネのために魔法を使うのは賛成だ。ルーミィの家だって、もう何回も泊まりに行ってるし。

 でも、このままじゃ本当に一緒に行くってきかないよね。ルーミィのご両親に説得して止めてもらうか!

「分かった!最長3日間だからね?」


 こうして僕はしばらくフィーネの町を拠点に活動することに決めた。これからルーミィの家で作戦会議だ!!
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