『恋しくて! - I miss you. 』

『恋しくて! - I miss you. 55 』

55.
" KURODA IYAaSHI CLINIC 2-Second "

　「私は思い知ったのです。
　別れるも地獄、一緒に暮らすも地獄。

　私が夫を好きでいる限り・・・
夫の側に居る限り・・・
私の真の安らぎの日は訪れないだろうって」


　「ご主人の真心を信じられないということでしょうか? 」


　「判りません。真心からの言葉であるとか、体裁を繕う為から
の言葉であるとか、今の私にはその言葉に何の意味も見出せ
ないのです。

　ただの言葉です。
　もう見えないものを信じたりはしません」


　「それは心ですね。
　あなたはご主人を責めて詰ったり泣いたり困らせるようなこと
を一度もされていませんでしたよね?

　内部にある怒りが、行き場を失くしてあなたをいろいろと
混乱させているのかもしれません」

　棒切れのように生気を失くし、部屋に寂しげに佇んでいる
あかりに向けてセラピストは両腕を拡げた。

　「いらっしゃい、あかりさん。
　ご主人だと思って私に怒りをぶつけてみてください」


　あかりは一筋の涙をツッーーーーとこぼしたかと思うと
カッと駆け出しセラピストの胸倉を掴み・・


「クソ野郎、何ぁにが大切にしたいだ、こんなに私を傷つけ
踏みつけにしておきながらよくも平気でそんなことが言える
もんだっ。

　お前なんか、のしをつけてあの女にくれてやるっ。
　私の前から消えろっ」