上 下
115 / 194

115

しおりを挟む
115


 一方兄夫婦がまさかの危機的状況になっているとは知る由もない

俊介はというと、自分がやらかした頃よりも苺佳が一層美しくたおやかに

なり、兄、英介と仲睦まじく暮らしているのを実家で集う度見るにつけ、

自分の取った選択を後悔するのだった。






 ほんとに自分は苺佳と結婚するつもりでいたから、よけいその想いが
募るのだった。




 相手の妊娠により責任を取る形で、吉原理恵とでき婚したものの
すぐに相手は流産してしまった。




 ただ流産したにしては落ち込んだような素振りが少しもないことから、
日に日に、妊娠はほんとうだったのだろうか? と疑いを深める俊介だった。





 振り返れば、妊娠した時も流産した時もそれを証明するものを
自分はなにひとつ理恵から知らされていない。




 妊娠の時も『妊娠した』とだけ聞かされ、病院は家の近所の産婦人科に
かかったと聞いたのみ。



 妊娠するとエコー写真をもらうのだと妊娠して臨月まで働いて
辞めるのだという先輩の女子社員が話しているのを小耳に挟み、知った。

 いつも母子手帳に挟んで携帯していると聞いた。


 その日の夜、理恵に訊いた。

『母子手帳、見せてくれない?』




「今まで一言もそんなこと言って来なかったじゃない。
子供がお腹にいなくなってから訊いてくるなんて酷い人ね。
今更そんなもの見たって意味ないのよ」

 そうプリプリ怒り出し、結局理恵は手帳を出しては来なかった。





 この調子だとどこの病院か、掛かっていた病院名を訊けばもっと
大変なことになりそうで、益々疑惑を深める俊介だった。



 もやもやの取れない日々を過ごしていたのだが、ほどなくして
疑惑が確信に変わる日が訪れた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。

春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。 それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。 にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。

夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる

ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。 正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。 そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

世界最強の結界師

アーエル
ファンタジー
「結界しか張れない結界師」 「結界を張るしか出来ない無能者」 散々バカにしてきた彼らは知らなかった。 ここ最近、結界師は僕しかいないことに。 それでも底辺職と見下され続けた僕は、誰に何を言われても自分以外に結界を張らない。 天恵を受けた結界師をバカにしてきたんだから、僕の結界は必要ないよね。 ✯他社でも同時公開。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【第六回ライト文芸大賞 奨励賞作品】俺のばあちゃんがBL小説家なんだが 

桐乃乱😺一番街のスターダスト
ライト文芸
第6回ライト文芸大賞 奨励賞 受賞作品  杜の都に住むお気楽高校生、若生星夜(わこうせいや)(16歳)。 父さんの海外赴任に母さんが同行し、俺は父方の祖母&叔母と同居することになった。 始業式と引っ越しが済んで始まった生活は、勉強に部活、恋とそしてBLテイストが混ざった騒がしいものでー? 俺の祖母ちゃんは、ネットBL小説家だったー!! ※本作品は、フィクションです。BL小説ではありません。一人称複数視点の群像劇スタイルです。   応援、ありがとうございました!! 桐乃乱 著書一覧 いつもは商業電子、個人誌はAmazon Kindleで活動しています。著書はそちらをお読みください。 Kindle個人出版 BL小説 Kindle unlimited240万ページ突破しました! 僕と龍神と仲間たち①②③ 板前見習いネコ太の恋 足の甲に野獣のキス①② 黒騎士団長の猟犬①② 青龍神の花嫁 足の甲に野獣のキス番外編 淫魔店長と愉快な常連たち ファッションホテルルキアへ行こう! 探偵屋の恋女房①② 俺のばあちゃんがBL小説家なんだが 他

私の事が大嫌いだったはずの旦那様が記憶喪失になってから、私を溺愛するようになったのですがこれは本当に現実ですか!?

hayama_25
恋愛
私のことが大嫌いだった旦那様は記憶喪失になってから私のことが好きすぎて仕方がないらしい。

処理中です...