裏切りの扉 非公開にしていましたが再upしました。11/4

" 後ろ髪引かれる想い3-56 "

56.




　とにかく、俺は驚いた。

　スイミングスクールの退会もそうだが……。
　えっ? 
　旦那が亡くなってたって?
　いつのことだよ。
　田舎に帰るって?
　俺に何の相談もなく?　

　いきなりのことで頭がパニクってしまった。

　ンで笑った。
　"俺に何の相談もなく?"って思った自分に。

　俺たちは普通の付き合いはしてきてないじゃないか。
　所謂セフレの関係なのだ。

　その俺に生活のアレコレを相談する訳ないし、たぶんそれが
普通のことだと思う。

　俺が最初に感じた不安はひとつ、彼女と縁がプツリと切れてしまうこと。

　今の俺はフリーターに毛の生えたようなもの。

　いきなりは流石にないけど、今の職場を辞めることは
そう難しいことじゃない。

　ひとまず、彼女の移住先と会う約束、これだけは死守しなければと、
俺の全細胞が俺を鼓舞してきて、俺に勢いをつけた。

　肝心な話だけはちゃんと出来たと思う。

　これまで生きてきてこんなに女性に必死になったことがあっただろうか。
　家に帰ってから俺は自分の中でセフレと認識していた相手なのに、
いつの間にか彼女が離れがたい存在になっていたことを知った。

　……となると今日萌枝さんに告げた『逢いに行く』は、Good job!
だったじゃないかぁ～オレっ……って自分を褒めてやりたいっ。

　でも確か『一緒に暮らす』とか何とかも言ったよな、オレ。

　勢いで言った感あるけど、おそらく……いやたぶん……ｲﾔ絶対、
俺の本心だったのかなって思う。

　萌枝さんを誰にも取られたくない、これからもずっと側に
居たい、が俺の本心なのだ。

　だからこそ、咄嗟に出た言葉なのだろう。