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第十一話【たこ焼きくるくるパーティ】お客さまもやってくる?
[2]ー2
しおりを挟む出来上がったたこ焼きを、ふうふうと念入りに冷ましてからパクリと噛り付く。
カリッとした触感はすぐにとろりとしたものに変わる。
「あふっ、はふふ……」
「大丈夫ですか?ミネ」
「はひほーふ……」
気を付けながらゆっくりと食べたので火傷はしなかった。前もって教えてくれていた怜のおかげだ。
「おいしい!」
初めてのたこ焼きを飲み込んだ後、美寧は大きな瞳をキラキラと輝かせながら笑顔でそう言った。
「こんなおいしいものを今まで食べなかったなんて!!」
「大げさだな、そこまでか?」
「だって、本当においしいんですもん」
恋人と友人のやり取りを聞きながら、怜は次の分をたこ焼き器に流しこんでいる。
「冷凍も出来るからこれは全部焼いておきますけど、あとで甘いのも焼きますよ、ミネ」
「たこ焼きって甘いのもあるの?」
「たこ焼きというよりはミニケーキでしょうか……ホットケーキの素にチョコレートを入れて焼くんです」
「おいしそう!」
「俺は甘いのは遠慮しておく」
「分かってる。だから半分はアヒージョにしようと思って」
「それいいな。持ってきたやつのなかにワインもあっただろ?白だからちょうどいいだろう」
「そうだな」
怜と高柳のやり取りを聞きながら、美寧は二つ目のたこ焼きに手を伸ばした。
「ねぇ、れいちゃん。ナギさんとはよく一緒にたこ焼きをしてたの?」
二回目のたこ焼き返しにチャレンジした後、それらが焼けるのを待ちながら、美寧はふと頭に湧いた疑問を怜に投げかけた。
「ん……最近で言うと久しぶりですね。ただ、学生の時は良くやっていましたね」
「大学生の時?」
「はい」
頷いた怜の向かいから高柳が入ってくる。
「昔はよくここに集まって、色々と料理を作ったり食べたりしてたからな」
「そうだったな」
「ユズキと三人でよく飲んだなぁ」
「ユズキ先生も?一緒にたこ焼きしてたの?」
美寧は時々やってきて自分のことを診てくれ、素敵な洋服や化粧品などをくれる女性医師に憧れのような気持ちを抱いている。
「はい。そもそもこのたこ焼き器を買ったのはユズキですから」
「そうなの?」
「そうです」
頷いた怜に追従するように、高柳も頷く。
「そうだった……あいつ、自分じゃ出来ないくせに、たこ焼きが食べたいからって勝手に買ってきて……」
「で、ここに置いていったんです。家主の俺になんの断りもなく」
「あいつは料理は全くダメで、作るのはいつも俺とフジ。あいつは食べる専門」
「ユズキには家事能力は期待出来ませんね」
「まったくだ。むしろ触らせない方が平和だろう」
怜と高柳が二人で頷き合うのを、美寧は目を丸くしながら見ていた。
美寧から見たユズキは、何もかもを兼ね備えたパーフェクトな大人の女性に見える。そんな彼女の意外な弱点を聞いて、信じられない気持ちになった。
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