【完結】君が僕に触れる理由

SAI

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番外編 花村ワンダーランド 3 ☆

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「ちょっと、そんなことしたらバレるよ」
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと隠れるから。ほら、お客さんだよ」

通路を学生っぽいカップルが寄り添って歩いてくる。僕が足元のスイッチを押すとガタンと音が鳴り響き、カップルがこっちを見た。

「たす……けて」

手を伸ばし2、3歩進むと、女性がキャーッと悲鳴を上げ男性の腕を掴んで走り去った。

「おぉ、ちゃんと働いてる」
「ほら、見ただろ。もう戻れよ」
「えぇー、ってか、これ長襦袢だよね。この下ってどうなってんの?」

佐倉が僕の長襦袢をめくろうとするのを手で制した。

「下はトランクスに決まってるだろ」
「長襦袢って下着なのに、下着を履くのか」
「当り前だろ」

お客さんの姿が見えて足元のスイッチをまた押した。井戸の脇からぼうっと現れ、お客さんが息をのむ。何か声を発しようと口を開けた瞬間、長襦袢の合わせ目から俺の足を佐倉の手が撫でた。

「あ……あぁ」

手を伸ばしたまま声にならない声をあげる。キャーッっという悲鳴と共にお客さんが通り過ぎ、僕は慌てて井戸の陰に戻った。

「佐倉、そういうのやめろよ」
「だって渉の生足、チラチラ見えてエロイんだもん」
「だもんじゃないよ」
「でもこういうの、渉、感じるでしょ」

佐倉の手が長襦袢をはだけさせ僕の太ももに触れた。

「だめぇ……」
「ほら渉、お客さん」

足元のスイッチを押す。音が鳴る。井戸の脇から手を伸ばす。下半身は佐倉に触られたまま、だ。

キャーッ!!

通り過ぎる足音にホッとした。佐倉の言うとおりだ。だめだと頭では分かっているのにどんどん体が熱を帯びてくる。流されてはだめだと思うのに、もっと触れて欲しくなる。

「ほら、もう先が濡れてる」

佐倉の手が僕のペニスに到達した。先端を親指で押すようにクルクルと撫でる。

「やっ」
「渉、声、漏れちゃうよ」

佐倉に言われて着物の袖を噛んだ。

「すげぇ、可愛い。本当ならその乳首も舐めて可愛がってやりたいんだけど」

佐倉の言葉に煽られて乳首が熱を帯びたような気がした。佐倉の手が迷いながら僕の着物に触れ、胸に触れる。乳首を探すように動く手がもどかしくて吐息が零れた。

「メイクが取れちゃうと悪いからキスもできない」

佐倉の指が僕の唇に触れる。唇を割って舌を撫でる。なんだか切なくなって指に舌を絡ませた。

「渉はエロイな。俺を煽る天才なんじゃない? あ、ほら、お客さん」

唇から指を引きぬかれて背中を押された。慌ててスイッチを押し、手を伸ばす。一歩、二歩。

うぉぉぉ、マジ、こわっ。

足音が去って、僕は熱に浮かされたままふらふらと佐倉のもとへと戻った。

「よくできました。衣装が濡れると悪いから、これ、つけておこうね」

佐倉に言われるがままペニスにコンドームを装着する。ゴムを装着した佐倉の指が僕のアナルに触れ、僕は我に返った。

「さくら、だめ。こんなことでっ」
「でも、もう我慢できないでしょ」
「んんっ……」

慌てて袖を噛む。僕のアナルを二本の指がゆっくりと犯していく。

「今朝もしたからナカ、まだ柔らかいね」

静寂の中に濡れた音が微かに響いた。

やだ、バレちゃう。バレちゃ。

「渉、お客さん」

佐倉がスイッチを押し、ガタンとなった音に紛れて二本の指を最奥へと進めた。

「んんっ……あぁ」

井戸の脇から這い出るように顔を出す。


う、うわーっ。やべえ、いま、人がいた!


そんな声と共に走っていく足音。音がまだ聞こえているというのに佐倉は容赦なく指を突き動かした。佐倉に足を引っ張られるようにして井戸の陰に戻る。

「あーあ、気持ち良くなってる顔、見られちゃったね」

キュッとアナルが締まる。

「もっとたくさん、見て貰おうか」

ふるふると首を振るのも虚しく、凶暴なものが背後にあてがわれた。

「さ…くら、……んんっ」

ぐぐぐっと内部を押される衝撃と待ち焦がれていた刺激が大きいのに、声が出せない。逃げ道を無くして快楽が体の中で暴れる。背中を大きくのけぞらせた。

「全部、はいったね。何人の人に渉の気持ち良くなった顔を見て貰えるかな。最も、セックスしてるなんて思わないだろうけど。あ、ほら、また来た」

一度大きく引き抜いたペニスを深く突き刺す。無理だ、もう堪えられない。背中をのけぞらせながら辛うじてスイッチを押した。

「あぁんっ!!」
ガタンっ!!

ひっ、と息をのむお客さんの声が聞こえる。これ以上動かないで欲しくて首を振っても、佐倉はやめない。腰を打ち付けられ、ビクンビクンと身体を震わせながら井戸の後ろから手を伸ばす。お客さんの顔が恐怖に歪み、そして走り去った。

「すごい、ちゃんとお仕事出来たね」

佐倉に抱きかかえられるようにして井戸の後ろに座ると僕の体重がのって繋がりが深くなる。足の先から脳内まで快楽物質が充満して、脳が溶けてしまいそうだ。

「さ、くら。どう、しよ。きもち、いい」

「ん、そうだよね。そういう顔してる」

「腰が、と、まらな、い」

「もっと動いてあげようか?」

佐倉の腰が僕を押し上げるように動く。お尻が少し浮いて落ちるたびに深く、深く佐倉が来る。

「き、もち、いい」

「俺も」

佐倉の腰遣いが激しさを増して、僕のナカで色が弾けた。白、白、真っ白。

「んんっ」
あぁぁあっ!!

佐倉の体にしがみついて肩に唇をくっつけて声を塞いだ。突き抜ける快楽が大きすぎて、何度も何度も体を震わせ、佐倉の服に爪を立てた。




 





 体も脳も溶けてしまうかと思う程の快楽を置いて佐倉が帰って3日。僕は少し不貞腐れたような日々を送っている。山に散歩に行っても、仕事で井戸の陰に隠れていても思い出すのは佐倉のことばかり。

そこに相手の気配がなければ、なんとなく寂しさも日々に誤魔化されていくものだ。特に、こういう普段と違う環境では。それなのに、佐倉はこの地に形跡を残していってしまった。

ピピ ピピ ピピ
携帯がメールの着信を告げる。僕はその内容を見ると、直ぐに返事をして画面を伏せて携帯をテーブルに置いた。



【渉、会いたい】



【僕も】




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