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第四章
10. 疑惑
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「ライファちゃん、いる?」
話すと思ってもいなかったレイのリトルマインから声が聞こえて、大げさに驚いて振り返ってしまった。小さなレイがヴァンス様の声でヴァンス様の仕草で心配そうに私を見る。
「ヴァンス様!?お久しぶりです。珍しいですね、ヴァンス様が連絡してくるだなんて。」
「あぁ、でしょ。以前のレイならリトルマインをなかなか貸してくれなかったけど、今はそんなこともないしね。」
リトルレイが困った表情をする。いつものレイの表情だ。普段はあまり表情を動かさないようにするレイだけど、親しい相手にはこんな表情を見せる。
「そんな顔してリトルレイを見る癖に、どうして友達だなんて言ったの?」
「レイから聞いたんですか。正直、レイの気持ちが重くって。そろそろ自由になりたいなと思っていたんです。」
「嘘でしょ?」
リトルレイが呆れたような視線を私に送る。
「この私を誤魔化せるとでも?」
本物のレイもこういう表情をするだろうという表情で私に詰め寄ってくる。胸にじわりと水っぽい何かが広がっていくようだ。
「バレちゃいましたか。それがレイにとって最善だと思ったのです。貴族の女性を好きになるのがレイもその周りの人達にとっても幸せでしょう?」
「それはレイが言ったの?」
「いえ・・・。」
「レイね、レベッカとデートをするらしいんだ。なんだか少し浮き足立っていたよ。それでもいいの?」
「・・・ヴァンス様は意地悪ですね。」
「ほら、そんな顔をするくせに。」
「でも、私はレイの家族からレイを奪うわけにはいかないのです。」
リトルレイが驚いた表情をした。
「ライファちゃん知っていたの?」
「レイから直接聞いたわけではないですが・・・。」
「ふう、君たちは本当に、肝心なことはギリギリまで話し合わないんだね・・・。」
ヴァンス様の言葉に、リトルレイを見ていられずに視線を外した。
「ライファちゃん、私の想像の域を出ない話だけどレイは惚れ薬的なものを飲まされたんじゃないかな。」
「まさか・・・。」
「記憶を失って他の人を好きになってしまうというのは、私もあり得ない話ではないと思っている。ただ、レベッカはないと思う。これは兄としての意見だけど彼女はレイの苦手なタイプだし、一度デートした後はむしろ避けていた。そんな相手に久しぶりに会ったからといってあぁも態度が変わるのは不自然だ。」
「・・・、でも、レイが本当に好きになった可能性もゼロではないですよね?」
「それは・・・そうだけど。」
「ヴァンス様、心配してくれてありがとうございます。私は大丈夫ですから、レイのことよろしくお願いします。って私がよろしくって言うのはおかしいですね。へへ。」
「ライファちゃんがそういうのなら私はこれ以上言いようがないか。でも、もう一度ちゃんとよく考えてみて。レイが他の人と生きていくとなっても後悔はしないのか。分かった?」
「はい、分かりました。では、また。」
ヴァンス様とのリトルマインを終えた後、そのままベッドに潜り込んだ。
・・・平気でいられるわけなどないじゃないか。
レイが他の誰かと一緒に私から遠ざかっていく姿を想像しては、声を殺して泣いた。
くぅん
ベルが哀しげな声を上げて私にすり寄ってきたが、そんなベルに大丈夫だよと安心させる言葉をかける余裕すらなかった。
翌朝、鏡を見ると思っていた通り目がパンパンに腫れていた。
「泣きながら寝たらそうなるか。はは、酷い顔。」
自傷気味に笑うと塗れタオルを取りにキッチンへ向かった。
「ベル、ついてきてもまだご飯の時間じゃないよ。」
ベルに声をかけながら師匠に合わないようにそっと廊下を歩いているとトイレから思わぬ人物が出てきた。
「り、リアン王女!?」
「ライファさん、お久しぶりですわね。おはようございます。」
リアン王女は眩いばかりの笑顔で挨拶をした。
「お・・・おはようございます。」
「あら、目が腫れておりますわ。」
リアン王女が私の両目を塞ぐように手をかざすと目がほんのりと温かくなり、重苦しかった瞼がすっきりとした。
「これでもう大丈夫。」
「ありがとうございます。助かりました。リアン王女はどうしてここに?」
「ふふふ。リベルダ様に頼まれていたものがようやく完成しまして、その試運転ですわ。魔力を隠さずにここにいるので、リベルダ様もお気づきだと思うのですが。」
リアン王女はリベルダ様はどこ?というように辺りを見回した。
「リベルダ様!」
「リアン王女、お久しぶりでございます。こちらにおられるということは、空間移動魔法陣は完成したということですね?」
「はい、完成致しました。これでユーリスアとこちらを自由に行き来できますわ。」
「大変助かります。ユーリスアに行くことが出来れば、そこから各国へと繋がることが出来る。この期間で完成させるとはさすがは勤勉なリアン王女。」
「勿体ないお言葉です。リベルダ様のご指南あってのことですわ。」
「リアン王女、こちらに来たついでと言ってはなんですが持って帰っていただきたい物があるのです。それと、おまけも二人ほど連れて行って欲しい。」
「?」
ん?とでもいうように表情を変えたリアン王女を師匠が連れて行ったのは先生の家だ。そこでグショウ隊長とジョン様を呼び、更にグラントさんも呼んだ。
「ローザ対策の結界装置です。ターザニアの時のように魔獣が魔法陣を使って移動してきた際にこの装置を使って魔法陣に結界を張ることで多少なり時間を稼ぐことが出来ます。」
グラントさんがリアン王女に説明をする。
「魔力を蓄えることが出来るので予め魔力を溜めておけば、いざという時に自身の魔力を削らずに済みます。フルに魔力を溜め置けば魔力ランク9の魔獣が100匹なら1時間程度抑えられると思います。」
「1時間・・・。それは助かりますわね。」
「リアン王女にはこちらをユーリスアに持ち帰っていただきたい。騎士団団長にでも渡せば日々魔力を注入するでしょう。それと、もう一台はオーヴェルへと運んでいただきたいのです。もし今後、ローザが直接的に世界を滅ぼそうとした時、真っ先に狙われるのはオーヴェルだと思います。力のある国を真っ先に滅ぼす方が恐怖は各国に伝染しますからね。それに他の国を先に滅ぼすことで、力のあるオーヴェルに準備をする時間を与えたく無いはずです。」
師匠の言葉にリアン王女はキリッとした顔で頷いた。
「分かりました。お任せを。」
「お引き受けいただきありがとうございます。」
「リベルダ様、私はローザを捕まえるためならば惜しみなく動きます。ぜひ使って下さい。」
「ありがとうございます。」
師匠は敬意を示すように深く頭を下げた。
リアン王女たちを見送った後は先生の家で調合の続きだ。ルカが鼻歌を歌いながら先生の薬材コレクションを眺めている。
「うわ、これ、飛び竜の髭じゃん!!売ったら相当な高値になるぞ。あ、こっちはコーレルの実って書いてあるぞ。噂には聞いたことあるけど、こんな形なのか・・・。」
ルカがコーレルの実が入った瓶をマジマジと見つめていると、先生が調合の手を止めて振り返った。
「あげませんよ。ルカは随分ご機嫌ですね。」
「そりゃあね。毎日毎日戦い方の練習では僕の体はボロボロですよ。」
「毎日鍛錬するから体も強くなるのですよ。そうだ、今日は特別に私が相手をしてあげましょう。」
「えっ?」
ルカが断る前に先生は小さな自分を作ると、小さな先生がルカを引きずって庭に出て行った。おぉう。
「ふぅ、これで安心して調合に取り組めますわ。」
「あの、先生、惚れ薬ってどんなものですか?」
「惚れ薬ねぇ。きっかけ薬、みたいなものですね。」
「きっかけ薬?」
「えぇ、そうです。飲ませた相手が自分に好意を持っていれば効果が現れる。でも好意を持っていなければ効果が現れることはまずないでしょう。現れても数日で効果は切れますよ。惚れ薬で相手の気持ちを量るなんてこともあるくらいです。」
「そう、ですよね。」
先生が私を見てニヤリと微笑んだ。
「レイにでも飲ませますか?協力しますわよ。ふふふ。」
「先生っ!!そんなことはしません!」
「なんだ残念。私なら限りなく効果の切れない惚れ薬を作ってあげられるのに。」
「え?そんな薬も作ることが出来るのですか?」
「その気になればですが、プランが無いわけではないですよ。惚れ薬だけではなくて、惚れ薬を助長するような薬を飲ませるのです。たとえば、動悸薬とか緊張薬とか・・・。その人のことが好きなのかもと錯覚させることで惚れ薬の効力を高めるかもしれませんね。そのうちこれが恋なのだと錯覚すれば本物にもなり得るかもしれませんよ。ふふふふ。」
「なぜそこまでの薬が世の中に出ていないのですか?」
「それは、面倒だからでしょ。惚れ薬はね、相手にぴったり合わせて作らなくてはいけない。詐欺にも合いやすいんですよ。効果がなかったってクレームがとにかく多い。そんな面倒な薬に手を出すくらいなら、もっと別の薬を発明しますわ。ん?」
先生がふと手を止めた。
「惚れ薬だけではなく、もうひと薬・・・。動悸薬とか緊張薬とか・・・。」
手に持っていた薬材を丁寧に机に置くと、ブツブツ呟きながら歩き突然大きな声を出した。
「あ゛―っ!私、バカでしたわ。馬鹿だ。もうっ、バカバカバカっ!!」
「ど、どうしたのですか?」
「解毒薬は二種類作ればいいのです。解毒薬は1つと思い込んでいた。先日、催眠効果を無効化することは出来ませんでしたが、一時蘇生効果のある薬は出来ました。全部の効果を一つの薬にまとめようとしたからややこしいことになっているのです。強力なヒーリング薬と催眠効果を無効化する強力な薬を作ればいい。」
あ、ああああああああ。
先生が言葉にならないような声を上げてから私を見た。
「ライファ、薬を完成させますわよ。」
話すと思ってもいなかったレイのリトルマインから声が聞こえて、大げさに驚いて振り返ってしまった。小さなレイがヴァンス様の声でヴァンス様の仕草で心配そうに私を見る。
「ヴァンス様!?お久しぶりです。珍しいですね、ヴァンス様が連絡してくるだなんて。」
「あぁ、でしょ。以前のレイならリトルマインをなかなか貸してくれなかったけど、今はそんなこともないしね。」
リトルレイが困った表情をする。いつものレイの表情だ。普段はあまり表情を動かさないようにするレイだけど、親しい相手にはこんな表情を見せる。
「そんな顔してリトルレイを見る癖に、どうして友達だなんて言ったの?」
「レイから聞いたんですか。正直、レイの気持ちが重くって。そろそろ自由になりたいなと思っていたんです。」
「嘘でしょ?」
リトルレイが呆れたような視線を私に送る。
「この私を誤魔化せるとでも?」
本物のレイもこういう表情をするだろうという表情で私に詰め寄ってくる。胸にじわりと水っぽい何かが広がっていくようだ。
「バレちゃいましたか。それがレイにとって最善だと思ったのです。貴族の女性を好きになるのがレイもその周りの人達にとっても幸せでしょう?」
「それはレイが言ったの?」
「いえ・・・。」
「レイね、レベッカとデートをするらしいんだ。なんだか少し浮き足立っていたよ。それでもいいの?」
「・・・ヴァンス様は意地悪ですね。」
「ほら、そんな顔をするくせに。」
「でも、私はレイの家族からレイを奪うわけにはいかないのです。」
リトルレイが驚いた表情をした。
「ライファちゃん知っていたの?」
「レイから直接聞いたわけではないですが・・・。」
「ふう、君たちは本当に、肝心なことはギリギリまで話し合わないんだね・・・。」
ヴァンス様の言葉に、リトルレイを見ていられずに視線を外した。
「ライファちゃん、私の想像の域を出ない話だけどレイは惚れ薬的なものを飲まされたんじゃないかな。」
「まさか・・・。」
「記憶を失って他の人を好きになってしまうというのは、私もあり得ない話ではないと思っている。ただ、レベッカはないと思う。これは兄としての意見だけど彼女はレイの苦手なタイプだし、一度デートした後はむしろ避けていた。そんな相手に久しぶりに会ったからといってあぁも態度が変わるのは不自然だ。」
「・・・、でも、レイが本当に好きになった可能性もゼロではないですよね?」
「それは・・・そうだけど。」
「ヴァンス様、心配してくれてありがとうございます。私は大丈夫ですから、レイのことよろしくお願いします。って私がよろしくって言うのはおかしいですね。へへ。」
「ライファちゃんがそういうのなら私はこれ以上言いようがないか。でも、もう一度ちゃんとよく考えてみて。レイが他の人と生きていくとなっても後悔はしないのか。分かった?」
「はい、分かりました。では、また。」
ヴァンス様とのリトルマインを終えた後、そのままベッドに潜り込んだ。
・・・平気でいられるわけなどないじゃないか。
レイが他の誰かと一緒に私から遠ざかっていく姿を想像しては、声を殺して泣いた。
くぅん
ベルが哀しげな声を上げて私にすり寄ってきたが、そんなベルに大丈夫だよと安心させる言葉をかける余裕すらなかった。
翌朝、鏡を見ると思っていた通り目がパンパンに腫れていた。
「泣きながら寝たらそうなるか。はは、酷い顔。」
自傷気味に笑うと塗れタオルを取りにキッチンへ向かった。
「ベル、ついてきてもまだご飯の時間じゃないよ。」
ベルに声をかけながら師匠に合わないようにそっと廊下を歩いているとトイレから思わぬ人物が出てきた。
「り、リアン王女!?」
「ライファさん、お久しぶりですわね。おはようございます。」
リアン王女は眩いばかりの笑顔で挨拶をした。
「お・・・おはようございます。」
「あら、目が腫れておりますわ。」
リアン王女が私の両目を塞ぐように手をかざすと目がほんのりと温かくなり、重苦しかった瞼がすっきりとした。
「これでもう大丈夫。」
「ありがとうございます。助かりました。リアン王女はどうしてここに?」
「ふふふ。リベルダ様に頼まれていたものがようやく完成しまして、その試運転ですわ。魔力を隠さずにここにいるので、リベルダ様もお気づきだと思うのですが。」
リアン王女はリベルダ様はどこ?というように辺りを見回した。
「リベルダ様!」
「リアン王女、お久しぶりでございます。こちらにおられるということは、空間移動魔法陣は完成したということですね?」
「はい、完成致しました。これでユーリスアとこちらを自由に行き来できますわ。」
「大変助かります。ユーリスアに行くことが出来れば、そこから各国へと繋がることが出来る。この期間で完成させるとはさすがは勤勉なリアン王女。」
「勿体ないお言葉です。リベルダ様のご指南あってのことですわ。」
「リアン王女、こちらに来たついでと言ってはなんですが持って帰っていただきたい物があるのです。それと、おまけも二人ほど連れて行って欲しい。」
「?」
ん?とでもいうように表情を変えたリアン王女を師匠が連れて行ったのは先生の家だ。そこでグショウ隊長とジョン様を呼び、更にグラントさんも呼んだ。
「ローザ対策の結界装置です。ターザニアの時のように魔獣が魔法陣を使って移動してきた際にこの装置を使って魔法陣に結界を張ることで多少なり時間を稼ぐことが出来ます。」
グラントさんがリアン王女に説明をする。
「魔力を蓄えることが出来るので予め魔力を溜めておけば、いざという時に自身の魔力を削らずに済みます。フルに魔力を溜め置けば魔力ランク9の魔獣が100匹なら1時間程度抑えられると思います。」
「1時間・・・。それは助かりますわね。」
「リアン王女にはこちらをユーリスアに持ち帰っていただきたい。騎士団団長にでも渡せば日々魔力を注入するでしょう。それと、もう一台はオーヴェルへと運んでいただきたいのです。もし今後、ローザが直接的に世界を滅ぼそうとした時、真っ先に狙われるのはオーヴェルだと思います。力のある国を真っ先に滅ぼす方が恐怖は各国に伝染しますからね。それに他の国を先に滅ぼすことで、力のあるオーヴェルに準備をする時間を与えたく無いはずです。」
師匠の言葉にリアン王女はキリッとした顔で頷いた。
「分かりました。お任せを。」
「お引き受けいただきありがとうございます。」
「リベルダ様、私はローザを捕まえるためならば惜しみなく動きます。ぜひ使って下さい。」
「ありがとうございます。」
師匠は敬意を示すように深く頭を下げた。
リアン王女たちを見送った後は先生の家で調合の続きだ。ルカが鼻歌を歌いながら先生の薬材コレクションを眺めている。
「うわ、これ、飛び竜の髭じゃん!!売ったら相当な高値になるぞ。あ、こっちはコーレルの実って書いてあるぞ。噂には聞いたことあるけど、こんな形なのか・・・。」
ルカがコーレルの実が入った瓶をマジマジと見つめていると、先生が調合の手を止めて振り返った。
「あげませんよ。ルカは随分ご機嫌ですね。」
「そりゃあね。毎日毎日戦い方の練習では僕の体はボロボロですよ。」
「毎日鍛錬するから体も強くなるのですよ。そうだ、今日は特別に私が相手をしてあげましょう。」
「えっ?」
ルカが断る前に先生は小さな自分を作ると、小さな先生がルカを引きずって庭に出て行った。おぉう。
「ふぅ、これで安心して調合に取り組めますわ。」
「あの、先生、惚れ薬ってどんなものですか?」
「惚れ薬ねぇ。きっかけ薬、みたいなものですね。」
「きっかけ薬?」
「えぇ、そうです。飲ませた相手が自分に好意を持っていれば効果が現れる。でも好意を持っていなければ効果が現れることはまずないでしょう。現れても数日で効果は切れますよ。惚れ薬で相手の気持ちを量るなんてこともあるくらいです。」
「そう、ですよね。」
先生が私を見てニヤリと微笑んだ。
「レイにでも飲ませますか?協力しますわよ。ふふふ。」
「先生っ!!そんなことはしません!」
「なんだ残念。私なら限りなく効果の切れない惚れ薬を作ってあげられるのに。」
「え?そんな薬も作ることが出来るのですか?」
「その気になればですが、プランが無いわけではないですよ。惚れ薬だけではなくて、惚れ薬を助長するような薬を飲ませるのです。たとえば、動悸薬とか緊張薬とか・・・。その人のことが好きなのかもと錯覚させることで惚れ薬の効力を高めるかもしれませんね。そのうちこれが恋なのだと錯覚すれば本物にもなり得るかもしれませんよ。ふふふふ。」
「なぜそこまでの薬が世の中に出ていないのですか?」
「それは、面倒だからでしょ。惚れ薬はね、相手にぴったり合わせて作らなくてはいけない。詐欺にも合いやすいんですよ。効果がなかったってクレームがとにかく多い。そんな面倒な薬に手を出すくらいなら、もっと別の薬を発明しますわ。ん?」
先生がふと手を止めた。
「惚れ薬だけではなく、もうひと薬・・・。動悸薬とか緊張薬とか・・・。」
手に持っていた薬材を丁寧に机に置くと、ブツブツ呟きながら歩き突然大きな声を出した。
「あ゛―っ!私、バカでしたわ。馬鹿だ。もうっ、バカバカバカっ!!」
「ど、どうしたのですか?」
「解毒薬は二種類作ればいいのです。解毒薬は1つと思い込んでいた。先日、催眠効果を無効化することは出来ませんでしたが、一時蘇生効果のある薬は出来ました。全部の効果を一つの薬にまとめようとしたからややこしいことになっているのです。強力なヒーリング薬と催眠効果を無効化する強力な薬を作ればいい。」
あ、ああああああああ。
先生が言葉にならないような声を上げてから私を見た。
「ライファ、薬を完成させますわよ。」
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