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第三章
3. 犯人の形跡1
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ライファにターザニアの最後の日の様子を聞きガルシアに戻る途中でチョンピーを受け取った。チョンピーに喋らせてみればそれはジョンからで、今どこにいるのか?という内容だった。面倒だなと思いつつもターザニアが滅んだことを確認する際、ジョンしか思いつかずに連絡した相手だ。
ガルシアへ向かう途中だというような内容の返事をした。次にシューピンを受け取ったのはその二日後で「今、ガルシアに着いた。ガルシアのどこだ?」という内容だったのには驚きのあまりに転びそうになった。どうやら合流するつもりらしいと察しがついて、返信せずにいたところそれを見越したかのように次々と居所を訪ねるチョンピーが届いた。
観念して居場所を返信してからも何匹か居場所を尋ねるチョンピーがやってきたので、私が返信しないことを見越して次々とチョンピーを送ったという私の予想は間違ってはいないと思う。
「やっと会えた!」
そう言って抱き付いて来ようとしたジョンを魔力で牽制すれば「酷い!常夏のオーヴェルから頑張って極寒の地まできたのに」と言って目を潤ませた。本当に騒がしい奴だ。さすが見てわかるほどにガタガタと震えているジョンをそ
のまま返す程無情にはなれず、自身のコテージに連れて帰った。
「で、どうしてガルシアに来たのですか?」
ジョンにお茶を渡しながら聞く。
「どうしてってあなたに会いたかったからですよ。」
ジョンは事も無げにそう言うと、ふぅっとお茶に息をかけてから少しだけ飲んだ。
「会いたいって、会ってどうするんですか?」
私は呆れた声を出した。私に会いたくてオーヴェルから遠く離れ、真逆の気候を持つガルシアまで来ただと?頭がおかしいんじゃないかと思った。
「どうするって、そりゃあ、ねぇ。」
ネットリとした声を出したジョンを見て、「いや、言わなくていい」とバッサリ切る。聞いたところできっと私が寒くなるような答えしか出てこないはずだ。
「オーヴェルの騎士団はどうしたのですか?戻らなくても?」
「クオン王子にターザニアを滅ぼした犯人をつかまえてくるから休みをくれと申し出ました。どうせあなたはそのつもりなのでしょう?」
そう、そのつもりだし隠してもいないから素直に認めてもいいのだが、ジョンに言われるとなぜたか認めたくなくなるから不思議だ。
「どうですかね?」
ジョンは私のそんな返事を無視して、肯定と捉えたまま話を進める。
「一人よりも二人の方がいいですよ。絶対に。私の実力は知っているでしょう?あ、でもかなり酔っぱらっていたようですからどこまで覚えているかは分かりませんけど、あなたのノーコン魔力から家を守るくらいは出来ますよ。」
ノーコン魔力と言う言葉には引っかかるが、確かにあの日狙った方向とは全く違う方に飛んでいったのだから、あの日の私に関していうならば間違いではない。チッと思いつつも、どう考えても一人より二人の方がいいのは明白だ。しかも、ジョンは戦闘能力が高い。だが、それを理由に同行を許可するのは、ジョンを認めているような気がして上手い理由を考えていた。
「そんなに考えることですか?それじゃあ、あなたの身の回りのお世話をしますよ。それなら役に立つでしょう?だから側に置いてください。」
「わかりました。いいでしょう。」
ジョンの手のひらで転がされたような気もするが、とりあえずはその手に乗ってやることにした。
その日の夜、不思議な夢を見た。
私は2歳か3歳くらいの女の子で、上質な家具のある部屋にいた。その部屋は天井近くにしか窓がなくいつも薄暗い。トイレやお風呂なども部屋の中にありそこで生活できる程だったが、椅子とテーブル、ベッドしかなく本やおもちゃといったものは一つもなかった。唯一あったのは丸い耳をした縫いぐるみだけ。食事はドアに小さなドアがついており、その小さなドアから支給される。まるで、高級な牢屋だった。
話す相手もおらず、退屈で、暇で、仕方がない。なぜ私はここにいるのだろうと自問自答する夢だった。
翌日、ライファたちと合流しその顔色の悪さに驚いた。顔の青白さは寒さだけのものじゃない。相当無理をしてここまで来たのだろうと想像できた。このままでは薬材を集める途中で死にかねないと思い、つい説教じみたことを言ってしまった。ちゃんと分かってくれればいいが。
それに・・・。ライファはまだ17歳だ。ターザニアに捕らわれずにもっと好きなことをして、幸せな道を歩いてほしいと思ったのだ。妹のメイに似ているからだろうか。彼女には少し甘くなってしまう。
「さっきのアレ、あなたにも当てはまると思うんですけどね。」
ライファたちが荷物を置きにコテージに行っている間、二人きりになった部屋でジョンが言う。
「ターザニアに縛られずに、好きに生きてもいいんですよ。誰もあなたを責めやしない。誰かが言わないと動けないのなら私が言ってあげますよ。」
「何を言っているのですか。ライファと私とでは違いますよ。ターザニアを忘れることも、犯人をこのままにすることも私が許しません。」
私がはっきりと言い切ると、そんなんだから放っておけないんですよ、とジョンが呟きながらお茶を片づけた。
レイたちが戻ってきて、回復薬とヒーリング薬を受け取る。
「これは有り難いですね。」
私が有り難がって受け取ると、そんなにいいものなのか?とジョンが聞いてくる。薬は飲まないと正確な効力は分からない。ちゃんとした設備で調べれば分からないこともないが、そこまでいちいち調べて買うものはいない。その為、薬の効力は調合師の言いなりになってしまう。だが、魔女が作った薬ならその効力は確かだろう。
「ライファさんのお師匠さんは優秀な調合師なんですよ。」
魔女の弟子だということはなるべく秘密にしておいた方がいいだろうと調合師ということにした。
「それであなたたちに手伝って欲しいのは、ある空間への侵入です。」
「空間ですか?」
レイが繰り返す。
「えぇ、ライファさんの家からこちらに戻ってきてから、ターザニアから私を運んだ空間移動魔方陣を調べました。もうすでに粉々になっているものですし、改めて調べたところで何も分かりませんでしたが。そのあと、この森に頻繁に出入りする馬車を調べ、その馬車がどこから来るのかを調べたのです。そして怪しい山小屋を見つけたのですが内部には複雑な空間魔法が施されており私の魔力だけでは侵入することが出来ないのです。ジョンと二人で潜ってもいいですが、なんせ複雑な空間魔法ですので外に目印となる人がいないと危険すぎます。そこで、近くにいるという二人にトルッコまで来てもらったというわけです。」
ジョンがちらっと時計を見る。
「15時半か。どうする?今から行くか?」
「微妙な時間ですね。日が暮れるのも早いので今日は動かず、明日の早朝から行くのが無難でしょうね。」
「それでは!!」
私が今日は動くのをやめて明日にしようと言ったとたん、ジョンが嬉しそうな声でそれでは!!と言った。
「はぁ、ライファさんにお願いしてはどうですか?その為に今朝はいそいそと買い物に出かけたのでしょう?」
ため息まじりに言う。
「ライファさん、ぜひご飯を!ご飯を作ってください!!」
ライファの両手をしっかりと握ってのお願いにライファもいいですよ、と微笑むしかないようだった。
その日の夜ご飯はグラタンというものだった。「寒いから暖まるメニューにしてみました」とはライファの言葉だ。
色々な野菜を焼いて酸味のある濃厚ソースで食べるホットサラダ、野菜をとろとろに煮込んだスープ、羊乳と洋乳で作った濃厚なソースを野菜とお肉に絡めて焼いたグラタン、ライファが作っただけあってその日の料理はとても美味しく現実を忘れさせてくれるようなひと時だった。大げさなくらいに感動し喜ぶジョンの姿にライファも嬉しそうに笑う。こういう時、楽天的で空気を読まないジョンがいるということは救いになるのだと知った。
ガルシアへ向かう途中だというような内容の返事をした。次にシューピンを受け取ったのはその二日後で「今、ガルシアに着いた。ガルシアのどこだ?」という内容だったのには驚きのあまりに転びそうになった。どうやら合流するつもりらしいと察しがついて、返信せずにいたところそれを見越したかのように次々と居所を訪ねるチョンピーが届いた。
観念して居場所を返信してからも何匹か居場所を尋ねるチョンピーがやってきたので、私が返信しないことを見越して次々とチョンピーを送ったという私の予想は間違ってはいないと思う。
「やっと会えた!」
そう言って抱き付いて来ようとしたジョンを魔力で牽制すれば「酷い!常夏のオーヴェルから頑張って極寒の地まできたのに」と言って目を潤ませた。本当に騒がしい奴だ。さすが見てわかるほどにガタガタと震えているジョンをそ
のまま返す程無情にはなれず、自身のコテージに連れて帰った。
「で、どうしてガルシアに来たのですか?」
ジョンにお茶を渡しながら聞く。
「どうしてってあなたに会いたかったからですよ。」
ジョンは事も無げにそう言うと、ふぅっとお茶に息をかけてから少しだけ飲んだ。
「会いたいって、会ってどうするんですか?」
私は呆れた声を出した。私に会いたくてオーヴェルから遠く離れ、真逆の気候を持つガルシアまで来ただと?頭がおかしいんじゃないかと思った。
「どうするって、そりゃあ、ねぇ。」
ネットリとした声を出したジョンを見て、「いや、言わなくていい」とバッサリ切る。聞いたところできっと私が寒くなるような答えしか出てこないはずだ。
「オーヴェルの騎士団はどうしたのですか?戻らなくても?」
「クオン王子にターザニアを滅ぼした犯人をつかまえてくるから休みをくれと申し出ました。どうせあなたはそのつもりなのでしょう?」
そう、そのつもりだし隠してもいないから素直に認めてもいいのだが、ジョンに言われるとなぜたか認めたくなくなるから不思議だ。
「どうですかね?」
ジョンは私のそんな返事を無視して、肯定と捉えたまま話を進める。
「一人よりも二人の方がいいですよ。絶対に。私の実力は知っているでしょう?あ、でもかなり酔っぱらっていたようですからどこまで覚えているかは分かりませんけど、あなたのノーコン魔力から家を守るくらいは出来ますよ。」
ノーコン魔力と言う言葉には引っかかるが、確かにあの日狙った方向とは全く違う方に飛んでいったのだから、あの日の私に関していうならば間違いではない。チッと思いつつも、どう考えても一人より二人の方がいいのは明白だ。しかも、ジョンは戦闘能力が高い。だが、それを理由に同行を許可するのは、ジョンを認めているような気がして上手い理由を考えていた。
「そんなに考えることですか?それじゃあ、あなたの身の回りのお世話をしますよ。それなら役に立つでしょう?だから側に置いてください。」
「わかりました。いいでしょう。」
ジョンの手のひらで転がされたような気もするが、とりあえずはその手に乗ってやることにした。
その日の夜、不思議な夢を見た。
私は2歳か3歳くらいの女の子で、上質な家具のある部屋にいた。その部屋は天井近くにしか窓がなくいつも薄暗い。トイレやお風呂なども部屋の中にありそこで生活できる程だったが、椅子とテーブル、ベッドしかなく本やおもちゃといったものは一つもなかった。唯一あったのは丸い耳をした縫いぐるみだけ。食事はドアに小さなドアがついており、その小さなドアから支給される。まるで、高級な牢屋だった。
話す相手もおらず、退屈で、暇で、仕方がない。なぜ私はここにいるのだろうと自問自答する夢だった。
翌日、ライファたちと合流しその顔色の悪さに驚いた。顔の青白さは寒さだけのものじゃない。相当無理をしてここまで来たのだろうと想像できた。このままでは薬材を集める途中で死にかねないと思い、つい説教じみたことを言ってしまった。ちゃんと分かってくれればいいが。
それに・・・。ライファはまだ17歳だ。ターザニアに捕らわれずにもっと好きなことをして、幸せな道を歩いてほしいと思ったのだ。妹のメイに似ているからだろうか。彼女には少し甘くなってしまう。
「さっきのアレ、あなたにも当てはまると思うんですけどね。」
ライファたちが荷物を置きにコテージに行っている間、二人きりになった部屋でジョンが言う。
「ターザニアに縛られずに、好きに生きてもいいんですよ。誰もあなたを責めやしない。誰かが言わないと動けないのなら私が言ってあげますよ。」
「何を言っているのですか。ライファと私とでは違いますよ。ターザニアを忘れることも、犯人をこのままにすることも私が許しません。」
私がはっきりと言い切ると、そんなんだから放っておけないんですよ、とジョンが呟きながらお茶を片づけた。
レイたちが戻ってきて、回復薬とヒーリング薬を受け取る。
「これは有り難いですね。」
私が有り難がって受け取ると、そんなにいいものなのか?とジョンが聞いてくる。薬は飲まないと正確な効力は分からない。ちゃんとした設備で調べれば分からないこともないが、そこまでいちいち調べて買うものはいない。その為、薬の効力は調合師の言いなりになってしまう。だが、魔女が作った薬ならその効力は確かだろう。
「ライファさんのお師匠さんは優秀な調合師なんですよ。」
魔女の弟子だということはなるべく秘密にしておいた方がいいだろうと調合師ということにした。
「それであなたたちに手伝って欲しいのは、ある空間への侵入です。」
「空間ですか?」
レイが繰り返す。
「えぇ、ライファさんの家からこちらに戻ってきてから、ターザニアから私を運んだ空間移動魔方陣を調べました。もうすでに粉々になっているものですし、改めて調べたところで何も分かりませんでしたが。そのあと、この森に頻繁に出入りする馬車を調べ、その馬車がどこから来るのかを調べたのです。そして怪しい山小屋を見つけたのですが内部には複雑な空間魔法が施されており私の魔力だけでは侵入することが出来ないのです。ジョンと二人で潜ってもいいですが、なんせ複雑な空間魔法ですので外に目印となる人がいないと危険すぎます。そこで、近くにいるという二人にトルッコまで来てもらったというわけです。」
ジョンがちらっと時計を見る。
「15時半か。どうする?今から行くか?」
「微妙な時間ですね。日が暮れるのも早いので今日は動かず、明日の早朝から行くのが無難でしょうね。」
「それでは!!」
私が今日は動くのをやめて明日にしようと言ったとたん、ジョンが嬉しそうな声でそれでは!!と言った。
「はぁ、ライファさんにお願いしてはどうですか?その為に今朝はいそいそと買い物に出かけたのでしょう?」
ため息まじりに言う。
「ライファさん、ぜひご飯を!ご飯を作ってください!!」
ライファの両手をしっかりと握ってのお願いにライファもいいですよ、と微笑むしかないようだった。
その日の夜ご飯はグラタンというものだった。「寒いから暖まるメニューにしてみました」とはライファの言葉だ。
色々な野菜を焼いて酸味のある濃厚ソースで食べるホットサラダ、野菜をとろとろに煮込んだスープ、羊乳と洋乳で作った濃厚なソースを野菜とお肉に絡めて焼いたグラタン、ライファが作っただけあってその日の料理はとても美味しく現実を忘れさせてくれるようなひと時だった。大げさなくらいに感動し喜ぶジョンの姿にライファも嬉しそうに笑う。こういう時、楽天的で空気を読まないジョンがいるということは救いになるのだと知った。
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