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第一章
43. デビルレイふたたび
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レイが家についてから師匠と3人での食事を終え、「あとは若いお二人で」などという謎の言葉を残して師匠が自室に去った後、レイに誘われて森を歩いている。ベルは私の服の中で食後の居眠り中だ。
「ターザニアにはどうやって行くの?」
「ジェーバ・ミーヴァからオルヴまでは馬車で行って、オルヴからは船に乗るつもり。」
「そうか、そうだよな。」
「向うではどう過ごすの?」
「ヴァンス様が紹介してくれた下宿先がターザニアの中心部にあるから、そこと研究所との往復かな。バイトはしなくちゃとは思っているけど。」
レイは森の開けたところにいくと、そこにある大きな岩にのぼった。
「ライファもおいで。」
レイの手につかまり、大きな岩を登る。
騎士団の仕事を終えて急いでいたのだろう。騎士団の制服姿のレイに、住む世界の違いを見せつけられているような気になってしまう。どうも先日から自分がおかしい。以前はこんなに自分とレイの立ち位置の違いが気になることなどなかったのに。
「下宿先、そうか兄さんが紹介したのか。この間はその話をしていたの?」
「うん、そう。騎士団の先輩だった人が今はターザニアで宿屋を経営しているからって。えへへ、安くしてもらっちゃった。」
私はレイにニヤリと笑う。
「ふーん、それだけ?」
レイの目が少し細くなる。
その目に見られつつも、ヴァンス様との会話を思い出し顔が火照っていくのがわかる。落ち着け、落ち着け。
「まぁ、それだけかな。」
レイの真っ直ぐな目に耐えられなくて、視線を逸らす。
「うそ。それだけじゃないでしょ。それとも、言えないような会話したの?」
レイからあの時のデビルレイの気配がした。これはヤバい予感がする。
「いや、ちょっと、その、デートの約束を・・・。」
「へー、デートの約束を・・・ね。それって、ライファがOKしたってことだよね!?」
レイの声のトーンが下がる。
「いや、だから、その、下宿先を紹介してくれたってこともあって断り切れなくて・・・その。」
何でこんなことになっているのだろう。
そもそも、レイだってレベッカとデートをしているじゃないか。何か言おうと口を開きかけたとき、レイの指が髪の毛に触れた。髪の毛をさらっと寄せて首元をさわる。
「ここ、もう消えちゃったね。」
レイの指の冷たさに、ビクッとなる。咄嗟に体を逸らして、首元を自分の手で押さえた。
「ライファ。」
「ん?」
「手、どけて?」
う、疑いようもなくデビルレイの降臨だ・・・。
レイは妖しく微笑むと私の手を取って首元に唇を当てた。
「んっ。」
舌が首元に触れているのが分かる。レイの唇が少し離れるたびに夜風が濡れた皮膚に当たり、しびれるような冷たさが広がった。
「ちょ、ちょ、ちょっと、待って。」
この雰囲気に耐え切れずにレイから逃れようとするが、ダメだと言わんばかりにレイとは反対側に透明な壁が出現した。
「なっ、結界!?」
壁に押し付けられる形になる。
魔力ランク9、すごい。こんなになんてことなく、さらっと、しかも片手間に結界って・・・。いろんな意味でクラッときた。
「なんでこんなことっ。」
「さぁ、どうしてだろうね?」
レイが顔を上げて言う。唇が少し濡れていて、そのことにドキッとした。レイはまた私の首元に唇をつけると強く吸った。ぎゅううっと熱が集まる。唇が離れる。
か、噛まれる!
ギュッと目をつぶったがそんな衝撃は来ずに、代わりにペロッと舐められた。レイはその仕上がりに満足したようで、微笑んでいる。
「今度は消えないようにしておくね。」
レイは何か呪文を言いながら私の首元をなでた。
「私がなんでこんなことをしたのか、ターザニアにいる間中、ずっと、考えていて。それからリトルマインは持っていくように。」
デビルレイはわざと私の耳元で囁くと帰って行った。
自室に戻り、鏡の前で首元を見る。
首元と言っても限りなく肩に近い部分で、襟のある服を着ればなんとか隠せそうな場所だった。レベッカとデートをしているくせに、私にこんなことをしていくレイの気持ちが良くわからない。
「なんでこんなことしたのかなんて、分からないよ。」
クシャッと頭を掻いてベッドに座り込んだ。ヴァンス様といいレイといい、貴族の男はみんなこうなのだろうか。心をかき乱しにくる二人に、だんだんと腹が立ってきた。
「もういい、忘れよう。そうだ、忘れよう!明日は旅立ちだ。希望いっぱい旅立ちだ!」
ヴァンス様とのデートの約束は、その時がきたら考えればよい。
「騎士団の仕事もあるし、ターザニアに来られないかもしれないしな。」
そうだ、そうだ。私はフムフム頷いた。
こうして混乱の夜は過ぎていった。
「ターザニアにはどうやって行くの?」
「ジェーバ・ミーヴァからオルヴまでは馬車で行って、オルヴからは船に乗るつもり。」
「そうか、そうだよな。」
「向うではどう過ごすの?」
「ヴァンス様が紹介してくれた下宿先がターザニアの中心部にあるから、そこと研究所との往復かな。バイトはしなくちゃとは思っているけど。」
レイは森の開けたところにいくと、そこにある大きな岩にのぼった。
「ライファもおいで。」
レイの手につかまり、大きな岩を登る。
騎士団の仕事を終えて急いでいたのだろう。騎士団の制服姿のレイに、住む世界の違いを見せつけられているような気になってしまう。どうも先日から自分がおかしい。以前はこんなに自分とレイの立ち位置の違いが気になることなどなかったのに。
「下宿先、そうか兄さんが紹介したのか。この間はその話をしていたの?」
「うん、そう。騎士団の先輩だった人が今はターザニアで宿屋を経営しているからって。えへへ、安くしてもらっちゃった。」
私はレイにニヤリと笑う。
「ふーん、それだけ?」
レイの目が少し細くなる。
その目に見られつつも、ヴァンス様との会話を思い出し顔が火照っていくのがわかる。落ち着け、落ち着け。
「まぁ、それだけかな。」
レイの真っ直ぐな目に耐えられなくて、視線を逸らす。
「うそ。それだけじゃないでしょ。それとも、言えないような会話したの?」
レイからあの時のデビルレイの気配がした。これはヤバい予感がする。
「いや、ちょっと、その、デートの約束を・・・。」
「へー、デートの約束を・・・ね。それって、ライファがOKしたってことだよね!?」
レイの声のトーンが下がる。
「いや、だから、その、下宿先を紹介してくれたってこともあって断り切れなくて・・・その。」
何でこんなことになっているのだろう。
そもそも、レイだってレベッカとデートをしているじゃないか。何か言おうと口を開きかけたとき、レイの指が髪の毛に触れた。髪の毛をさらっと寄せて首元をさわる。
「ここ、もう消えちゃったね。」
レイの指の冷たさに、ビクッとなる。咄嗟に体を逸らして、首元を自分の手で押さえた。
「ライファ。」
「ん?」
「手、どけて?」
う、疑いようもなくデビルレイの降臨だ・・・。
レイは妖しく微笑むと私の手を取って首元に唇を当てた。
「んっ。」
舌が首元に触れているのが分かる。レイの唇が少し離れるたびに夜風が濡れた皮膚に当たり、しびれるような冷たさが広がった。
「ちょ、ちょ、ちょっと、待って。」
この雰囲気に耐え切れずにレイから逃れようとするが、ダメだと言わんばかりにレイとは反対側に透明な壁が出現した。
「なっ、結界!?」
壁に押し付けられる形になる。
魔力ランク9、すごい。こんなになんてことなく、さらっと、しかも片手間に結界って・・・。いろんな意味でクラッときた。
「なんでこんなことっ。」
「さぁ、どうしてだろうね?」
レイが顔を上げて言う。唇が少し濡れていて、そのことにドキッとした。レイはまた私の首元に唇をつけると強く吸った。ぎゅううっと熱が集まる。唇が離れる。
か、噛まれる!
ギュッと目をつぶったがそんな衝撃は来ずに、代わりにペロッと舐められた。レイはその仕上がりに満足したようで、微笑んでいる。
「今度は消えないようにしておくね。」
レイは何か呪文を言いながら私の首元をなでた。
「私がなんでこんなことをしたのか、ターザニアにいる間中、ずっと、考えていて。それからリトルマインは持っていくように。」
デビルレイはわざと私の耳元で囁くと帰って行った。
自室に戻り、鏡の前で首元を見る。
首元と言っても限りなく肩に近い部分で、襟のある服を着ればなんとか隠せそうな場所だった。レベッカとデートをしているくせに、私にこんなことをしていくレイの気持ちが良くわからない。
「なんでこんなことしたのかなんて、分からないよ。」
クシャッと頭を掻いてベッドに座り込んだ。ヴァンス様といいレイといい、貴族の男はみんなこうなのだろうか。心をかき乱しにくる二人に、だんだんと腹が立ってきた。
「もういい、忘れよう。そうだ、忘れよう!明日は旅立ちだ。希望いっぱい旅立ちだ!」
ヴァンス様とのデートの約束は、その時がきたら考えればよい。
「騎士団の仕事もあるし、ターザニアに来られないかもしれないしな。」
そうだ、そうだ。私はフムフム頷いた。
こうして混乱の夜は過ぎていった。
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