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第三章
15. 触れたい ☆
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「樹」
「なん、ですか?」
なん、の間に空白があったのは青砥が樹にキスをしたからだ。食べかけのハンベーガーたちはテーブルごと端に追いやられ、今は宇宙の中央に大きなベッドがある。その上に胡坐をかいた樹と片膝を立てた青砥が向き合って座っていた。
「だから、なっ……んですか」
くすっと笑いながらキスを繰り返す青砥に樹が不貞腐れた声を上げると青砥はもっと目じりを下げてほほ笑んだ。無表情なんて言葉が剥がれ落ちるくらい青砥の目が優しい。
「こういうことする時っていつもちょっとなんかあったろ? しなきゃいけないって感じのさ。でも今日は違うから嬉しいんだよ」
ポンっと音がしそうなくらい急激に顔が熱くなるのを感じて青砥から顔を反らした。顔を反らしたところで赤くなるのを止められるわけではない。
「樹? たーつーきー」
何度も名前を呼ばれて樹は観念して青砥の方を向いた。
「アオさんは言葉にし過ぎるんだよ。こっちが恥ずかしくなる……でもそれって全部、俺が不安にならないようになんだ……」
ん、と言い淀んだ青砥に顔を近づけて軽く唇を重ねた。触れた唇がもっと、と言っている。もう一度確かめるように唇を重ねると青砥の手が樹のシャツの下に潜り込んだ。指が肌をなぞりながら上へと移動する。
「義手外してもいいですか? 傷つけそうで怖いんで」
「どうぞ」
止まるかと思っていた手はそのまま服を捲り上げて樹の服を脱がせる。その様子は着替えを手伝うお兄ちゃんといったところだ。
「だいぶ筋肉ついたよな。初めて会った頃はもっとひょろひょろだったのに」
「ひょろひょろって……そんな事思ってたんですか」
まぁな、と苦笑した青砥を尻目に床に義手を置くとガチャリと音が響いた。青砥の手が背後から肩にまわる。青砥の温もりが自分の肌に馴染んでいくのを感じると樹は不思議な安心感に包まれた。もっと触れたい、この体に包まれたい、欲求が自然に溢れてくる。性欲とはまた違ったところの疼きだ。
首を捻って唇に触れ、左手を青砥の手に重ねた。ゆっくりと唇を離して目が合えば青砥が微笑む。いつもこんな風に俺を見ていたのだろうか? 青砥の優しさを利用して抱かれた時も? 樹は心の奥から何かが湧き出るような感覚に襲われた。
「……なんか、俺、泣きそうかもしれない、です」
「なんで?」
「分からないけど……嫌な感じではなくて……」
この気持ちをどう表現したら良いのだろう。いくつもの言葉が胸の中に浮かんではそのどれもが微妙に違う。両親から貰えなかった愛情も、優愛を失った悲しみもどの穴も大きくて樹の心はスカスカになった。別の何かでは埋まらないことにはとっくに気が付いていて、ずっとこのままだと思っていたのに。青砥はまるで包帯のようだと思った。樹の心を丸ごと包んでくれるから、穴が開いていても寒くはない。
樹が泣きそうに笑うと青砥の手が止まった。
「俺がアオさんに触れてもいいですか?」
ん、と青砥が短く返事をしたことを確認して樹は恐る恐る青砥の中心に手を伸ばした。自分より少し大きいソコは血管が浮き立ってグロテスクだ。亀頭から竿の部分へ手を動かす。自分以外のモノを触ったこともない樹の動きはソフトタッチ過ぎて快楽へと導くには程遠い。だが樹が自分のペニスに触れているという視覚情報は青砥には強烈だ。
「多分下手だけど」
一応の断り。樹は青砥の中心に顔を近づけると一気にペニスを口に含んだ。明らかに容量オーバーだ。口を大きく開けるよりも一段階大きくした口の中に青砥のペニスが目一杯いる。滑らかな皮膚と凹凸、舌を這わせて上下に扱えば喉の奥に当たるたびに舌の奥がビクッと動いた。
「樹」
青砥と目が合う。正直、人のペニスを口に入れる日が来るとは思わなかったし、入れた今は苦しくて嗚咽が出そうになるし最悪だ。それでも樹を呼ぶ青砥の声の微かな震え、こらえるような呼吸、そのどれもがご褒美のように樹を興奮させた。
青砥の指が樹の背中を這い、ほころび始めた蕾に触れる。ぬめりのあるツルンとした感触を感じたのは一瞬だけで、挿入された洗浄機が樹の中で暴れ回った。
「あ……ぐっ、んっ」
口の中にはまだ青砥がいる。舌を這わせようにも内部を乱され樹はくぐもった声を漏らしながらお尻を揺らした。その揺れは青砥が欲しいという言葉そのもので、青砥の脳をジリジリと焼いた。樹の口から強引にペニスを引き抜く。ベッドに自分から寝ころんだ樹は片手で中心を隠しながら足を開いた。
「アオさん、きて」
チッと青砥の舌打ちが聞こえる。その音に樹は少し意地悪く口の端を上げた。N+の能力と理性の狭間、能力に自分を明け渡したりはしないと戦う。普段の青砥からは見られない感情のざらつきが嬉しかった。
「ふっ、あぁ」
強烈な異物感。自身とは異なる別のもの。大きく開いた足の間に青砥の鼠径部が密着している。樹の下腹部を押し上げるようにして埋まっているそれは青砥の体の一部で、青砥が樹に欲情している証だ。ん、はぁ、と青砥が息を漏らした。
「っ……ヒクヒクしてるけどそんなに嬉しい?」
「くっ……」
腕で顔を隠しながら横を向いていると、青砥の指が唇に触れ、胸の尖りに触れた。
「ここもここも赤くて誘ってるみてぇ。それなのにあんなこと言われたら理性がぶっ飛びそう」
これ以上、煽ってくれんなよと言いながら青砥は樹の唇を塞いだ。
「なん、ですか?」
なん、の間に空白があったのは青砥が樹にキスをしたからだ。食べかけのハンベーガーたちはテーブルごと端に追いやられ、今は宇宙の中央に大きなベッドがある。その上に胡坐をかいた樹と片膝を立てた青砥が向き合って座っていた。
「だから、なっ……んですか」
くすっと笑いながらキスを繰り返す青砥に樹が不貞腐れた声を上げると青砥はもっと目じりを下げてほほ笑んだ。無表情なんて言葉が剥がれ落ちるくらい青砥の目が優しい。
「こういうことする時っていつもちょっとなんかあったろ? しなきゃいけないって感じのさ。でも今日は違うから嬉しいんだよ」
ポンっと音がしそうなくらい急激に顔が熱くなるのを感じて青砥から顔を反らした。顔を反らしたところで赤くなるのを止められるわけではない。
「樹? たーつーきー」
何度も名前を呼ばれて樹は観念して青砥の方を向いた。
「アオさんは言葉にし過ぎるんだよ。こっちが恥ずかしくなる……でもそれって全部、俺が不安にならないようになんだ……」
ん、と言い淀んだ青砥に顔を近づけて軽く唇を重ねた。触れた唇がもっと、と言っている。もう一度確かめるように唇を重ねると青砥の手が樹のシャツの下に潜り込んだ。指が肌をなぞりながら上へと移動する。
「義手外してもいいですか? 傷つけそうで怖いんで」
「どうぞ」
止まるかと思っていた手はそのまま服を捲り上げて樹の服を脱がせる。その様子は着替えを手伝うお兄ちゃんといったところだ。
「だいぶ筋肉ついたよな。初めて会った頃はもっとひょろひょろだったのに」
「ひょろひょろって……そんな事思ってたんですか」
まぁな、と苦笑した青砥を尻目に床に義手を置くとガチャリと音が響いた。青砥の手が背後から肩にまわる。青砥の温もりが自分の肌に馴染んでいくのを感じると樹は不思議な安心感に包まれた。もっと触れたい、この体に包まれたい、欲求が自然に溢れてくる。性欲とはまた違ったところの疼きだ。
首を捻って唇に触れ、左手を青砥の手に重ねた。ゆっくりと唇を離して目が合えば青砥が微笑む。いつもこんな風に俺を見ていたのだろうか? 青砥の優しさを利用して抱かれた時も? 樹は心の奥から何かが湧き出るような感覚に襲われた。
「……なんか、俺、泣きそうかもしれない、です」
「なんで?」
「分からないけど……嫌な感じではなくて……」
この気持ちをどう表現したら良いのだろう。いくつもの言葉が胸の中に浮かんではそのどれもが微妙に違う。両親から貰えなかった愛情も、優愛を失った悲しみもどの穴も大きくて樹の心はスカスカになった。別の何かでは埋まらないことにはとっくに気が付いていて、ずっとこのままだと思っていたのに。青砥はまるで包帯のようだと思った。樹の心を丸ごと包んでくれるから、穴が開いていても寒くはない。
樹が泣きそうに笑うと青砥の手が止まった。
「俺がアオさんに触れてもいいですか?」
ん、と青砥が短く返事をしたことを確認して樹は恐る恐る青砥の中心に手を伸ばした。自分より少し大きいソコは血管が浮き立ってグロテスクだ。亀頭から竿の部分へ手を動かす。自分以外のモノを触ったこともない樹の動きはソフトタッチ過ぎて快楽へと導くには程遠い。だが樹が自分のペニスに触れているという視覚情報は青砥には強烈だ。
「多分下手だけど」
一応の断り。樹は青砥の中心に顔を近づけると一気にペニスを口に含んだ。明らかに容量オーバーだ。口を大きく開けるよりも一段階大きくした口の中に青砥のペニスが目一杯いる。滑らかな皮膚と凹凸、舌を這わせて上下に扱えば喉の奥に当たるたびに舌の奥がビクッと動いた。
「樹」
青砥と目が合う。正直、人のペニスを口に入れる日が来るとは思わなかったし、入れた今は苦しくて嗚咽が出そうになるし最悪だ。それでも樹を呼ぶ青砥の声の微かな震え、こらえるような呼吸、そのどれもがご褒美のように樹を興奮させた。
青砥の指が樹の背中を這い、ほころび始めた蕾に触れる。ぬめりのあるツルンとした感触を感じたのは一瞬だけで、挿入された洗浄機が樹の中で暴れ回った。
「あ……ぐっ、んっ」
口の中にはまだ青砥がいる。舌を這わせようにも内部を乱され樹はくぐもった声を漏らしながらお尻を揺らした。その揺れは青砥が欲しいという言葉そのもので、青砥の脳をジリジリと焼いた。樹の口から強引にペニスを引き抜く。ベッドに自分から寝ころんだ樹は片手で中心を隠しながら足を開いた。
「アオさん、きて」
チッと青砥の舌打ちが聞こえる。その音に樹は少し意地悪く口の端を上げた。N+の能力と理性の狭間、能力に自分を明け渡したりはしないと戦う。普段の青砥からは見られない感情のざらつきが嬉しかった。
「ふっ、あぁ」
強烈な異物感。自身とは異なる別のもの。大きく開いた足の間に青砥の鼠径部が密着している。樹の下腹部を押し上げるようにして埋まっているそれは青砥の体の一部で、青砥が樹に欲情している証だ。ん、はぁ、と青砥が息を漏らした。
「っ……ヒクヒクしてるけどそんなに嬉しい?」
「くっ……」
腕で顔を隠しながら横を向いていると、青砥の指が唇に触れ、胸の尖りに触れた。
「ここもここも赤くて誘ってるみてぇ。それなのにあんなこと言われたら理性がぶっ飛びそう」
これ以上、煽ってくれんなよと言いながら青砥は樹の唇を塞いだ。
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