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第1章 民間伝承研究部編
転生少女のお手伝い1
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研修の時にも来ましたけど、やっぱりギルドは冒険者の方々でごった返しています。
今日は私たち「解の約束」の初クエストです!ん、解の約束とは何ぞや、ですか?私たちのパーティー名に決まってます。どうやらこうして名前をつけるのが慣習らしいので。
名前の由来は……ううむ、名付け親でもよく分かりません。かっこいいからってリムノさんとエーレさんが大絶賛したせいで即決定しちゃいましたけど。
まあそんなこんなで私たちは冒険者ギルドに来ています。コヨ君は入れない訳ではないのですが、視線を集め過ぎちゃうのでイデシメさんと外で待機してもらってます。近所の子供たちや女性にモフられて楽しそうだとか。
「初めての依頼、緊張します」
「何言ってんだ。研修の時と大して変わんねえだろ」
「それはそうですけど!」
カール君余裕過ぎませんか。明らかにちょっとワルな人の笑顔ですよ。そういえば学園でも成績優秀なくせに〈交渉〉でイタズラしてましたし。何処ぞの魔法使いのパパみたいないじめではなかったですけど。
「リリィ、てめえはもう少し肩の力抜け。確かにキナみたいなのにもう出会わないとは言わねえけど、俺たちなら大抵の依頼はこなせると思うぜ」
カール君に言われると説得力がありますね。
「ふっふっふ。随分脳筋思考なルーキーたちね」
リムノさん、優しい微笑みなのに闇がすごいです。
「それじゃあそんなあなたたちにはちょっと趣向を変えたクエストをこなしてもらおうかしら」
そう言ってリムノさんはクエストボードに進んで行きました。私たちもそんな彼女について行こうとしたのですが、ボードの近くは冒険者の皆さんでごった返しています。通勤ラッシュ時の電車ぐらいには。
「ぐふぉっ、と、通れないです!」
「おいリリィ、大丈夫か!」
「その声はカール君ですか?リ、リムノさんは……」
「周りの冒険者が恐れ慄いてスペースを開けてもらってる」
格差ァ!どんだけリムノさん一目置かれてるんですか。もしかしてこの人混み、あなたを一目見たくて集まった人で悪化してるんじゃないんですか?
私たちがもみくちゃにされている間にリムノさんはぱぱっと手続きを済ませてしまいました。
「はぁ、はぁ、ひ、酷い目に遭いました」
「こいつは……師匠と先生の特訓並みだぜ」
「ふ、2人とも大丈夫かえ?」
「クゥン」
ギルドを出た私たち(主に私とカール君)はそれはもうぐったりしてました。ちなみにカール君の言う師匠は母さん、先生はエーレさんのことです。普段は友達みたく気軽に接して欲しがりますが、魔法の特訓では目の色が変わりますからね。
「安心して。慣れの問題だから。それではクエストを発表します!」
厳格な面持ちで言い放つリムノさん。私たちが緊張に包まれる中、手をぱんと叩き、母親みたいなニコニコ笑顔で宣言しました。
「とある薬屋の店主がしばらく出かけるから店番をしてちょうだい」
……あれ、拍子抜けですね。てっきりまた研修のときみたくハードな戦闘任務かと。
「冒険者と傭兵は違うわ。私たちは便利屋みたいな一面があるし、どのみち解の約束はまだEランク。このクエスト自体はFランク相当だけど色んな経験を積まなくちゃ」
なるほど。新人たる者、強い魔物と戦うばかりではただの戦闘狂になりかねませんからね。
「まあ確かに。一理あるな。俺だったら〈交渉〉あるから接客も問題無いだろうし」
「カール君、ぼったくったらいかんで?」
「やらねえよ。つーかそんな言葉どこで覚えたんだ」
「学園でクラスの人らぁが話しよった」
「あんにゃろうども」
まるでイデシメさんの保護者みたいですね。お父さん……いや、お兄さんですか。
「依頼主のお店はこっちよ。やろうと思えばリリィちゃんの転移で一瞬だろうけど、やっぱり道ぐらい覚えとかないと」
「ですね。早速行きましょう!」
「おー!」
私は意気揚々と依頼主さんの元へ向かい始めたのでした。
「なあ、あの2人やけに仲良くねえか?」
「やね。引越しの日から距離が近くなっちゅう気がする」
「最近じゃ俺たちがいねえ時によく話してるってエーレも言ってたし」
「もしかして嫉きゆう?」
「いや、そうじゃねえけど。何かこう2人だけの世界作られてるっつーか、俺たちには無いもの共有してるみたいっつーか」
「よく分からん。ね、コヨ」
「アウ!」
「2人ともー!早く行きましょう!」
「わーってるよ!今行くっての!」
イデシメさんとカール君は何やら話していたようですが、特に気にはなりませんでした。
今日は私たち「解の約束」の初クエストです!ん、解の約束とは何ぞや、ですか?私たちのパーティー名に決まってます。どうやらこうして名前をつけるのが慣習らしいので。
名前の由来は……ううむ、名付け親でもよく分かりません。かっこいいからってリムノさんとエーレさんが大絶賛したせいで即決定しちゃいましたけど。
まあそんなこんなで私たちは冒険者ギルドに来ています。コヨ君は入れない訳ではないのですが、視線を集め過ぎちゃうのでイデシメさんと外で待機してもらってます。近所の子供たちや女性にモフられて楽しそうだとか。
「初めての依頼、緊張します」
「何言ってんだ。研修の時と大して変わんねえだろ」
「それはそうですけど!」
カール君余裕過ぎませんか。明らかにちょっとワルな人の笑顔ですよ。そういえば学園でも成績優秀なくせに〈交渉〉でイタズラしてましたし。何処ぞの魔法使いのパパみたいないじめではなかったですけど。
「リリィ、てめえはもう少し肩の力抜け。確かにキナみたいなのにもう出会わないとは言わねえけど、俺たちなら大抵の依頼はこなせると思うぜ」
カール君に言われると説得力がありますね。
「ふっふっふ。随分脳筋思考なルーキーたちね」
リムノさん、優しい微笑みなのに闇がすごいです。
「それじゃあそんなあなたたちにはちょっと趣向を変えたクエストをこなしてもらおうかしら」
そう言ってリムノさんはクエストボードに進んで行きました。私たちもそんな彼女について行こうとしたのですが、ボードの近くは冒険者の皆さんでごった返しています。通勤ラッシュ時の電車ぐらいには。
「ぐふぉっ、と、通れないです!」
「おいリリィ、大丈夫か!」
「その声はカール君ですか?リ、リムノさんは……」
「周りの冒険者が恐れ慄いてスペースを開けてもらってる」
格差ァ!どんだけリムノさん一目置かれてるんですか。もしかしてこの人混み、あなたを一目見たくて集まった人で悪化してるんじゃないんですか?
私たちがもみくちゃにされている間にリムノさんはぱぱっと手続きを済ませてしまいました。
「はぁ、はぁ、ひ、酷い目に遭いました」
「こいつは……師匠と先生の特訓並みだぜ」
「ふ、2人とも大丈夫かえ?」
「クゥン」
ギルドを出た私たち(主に私とカール君)はそれはもうぐったりしてました。ちなみにカール君の言う師匠は母さん、先生はエーレさんのことです。普段は友達みたく気軽に接して欲しがりますが、魔法の特訓では目の色が変わりますからね。
「安心して。慣れの問題だから。それではクエストを発表します!」
厳格な面持ちで言い放つリムノさん。私たちが緊張に包まれる中、手をぱんと叩き、母親みたいなニコニコ笑顔で宣言しました。
「とある薬屋の店主がしばらく出かけるから店番をしてちょうだい」
……あれ、拍子抜けですね。てっきりまた研修のときみたくハードな戦闘任務かと。
「冒険者と傭兵は違うわ。私たちは便利屋みたいな一面があるし、どのみち解の約束はまだEランク。このクエスト自体はFランク相当だけど色んな経験を積まなくちゃ」
なるほど。新人たる者、強い魔物と戦うばかりではただの戦闘狂になりかねませんからね。
「まあ確かに。一理あるな。俺だったら〈交渉〉あるから接客も問題無いだろうし」
「カール君、ぼったくったらいかんで?」
「やらねえよ。つーかそんな言葉どこで覚えたんだ」
「学園でクラスの人らぁが話しよった」
「あんにゃろうども」
まるでイデシメさんの保護者みたいですね。お父さん……いや、お兄さんですか。
「依頼主のお店はこっちよ。やろうと思えばリリィちゃんの転移で一瞬だろうけど、やっぱり道ぐらい覚えとかないと」
「ですね。早速行きましょう!」
「おー!」
私は意気揚々と依頼主さんの元へ向かい始めたのでした。
「なあ、あの2人やけに仲良くねえか?」
「やね。引越しの日から距離が近くなっちゅう気がする」
「最近じゃ俺たちがいねえ時によく話してるってエーレも言ってたし」
「もしかして嫉きゆう?」
「いや、そうじゃねえけど。何かこう2人だけの世界作られてるっつーか、俺たちには無いもの共有してるみたいっつーか」
「よく分からん。ね、コヨ」
「アウ!」
「2人ともー!早く行きましょう!」
「わーってるよ!今行くっての!」
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