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第3章 研究所の陰謀
第24話 マティアスの力試し
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研究所の外に出た後、マティアスには試したいことがあった。改造人間となった自分がどれだけ強くなったかということだ。
マティアスは改造手術後にまだ一度も戦っていないが、今までとは比べ物にならないほどの力が身についていることは実感していた。
「ハンニバル、改造人間となった私の力を見てくれないか?」
「あぁ、ちょうど俺もお前がどれだけ強くなったか見てみたいと思ってたところだぜ。……ほら、ガードしてるから思いっきり掛かって来な」
ハンニバルは両手の平をマティアスの目の前に向け、ガード体勢になる。
マティアスはハンニバルから少し離れた後、ハンニバルに向けて渾身のパンチを放つ。
ハンニバルは両手でガードするが、怪力自慢の彼ですら数歩後退するほどの威力だった。
「なかなかのパワーじゃねぇか! 今度は俺に蹴りを食らわせてみろ」
パワーが大幅に向上したマティアスに驚くハンニバル。再びガード体勢になり、マティアスの攻撃を待ち構えた。
マティアスはさっきよりもハンニバルとの距離を空け、見切ることすら出来ないほどの素早い飛び蹴りをハンニバルに向けて放つ。
パワーもスピードも大幅に上がったマティアスの飛び蹴りを食らったハンニバルは、後ろに吹っ飛んで転倒してしまう。
マティアスも思わずハンニバルの元へ駆けつけた。
「大丈夫か!?」
「いてて……。お前、急に強くなりすぎじゃないか? あの人狼の血をちょこっと注入されただけでこんなに変わるんだな」
ハンニバルは痛みで腹を抑えつつ、ゆっくり起き上がる。同時にマティアスの戦闘力が自分を上回ってしまったのではないかと薄々感じていた。
これまでは総合的な戦闘力はマティアスよりもハンニバルが上だった。
しかし、マティアスが人狼の血を投与され改造人間になったことで立場が逆転してしまった。
ハンニバルは自分も人狼の血を投与してもらえばもっと強くなれるのではないかと考えたが、先日オスカーに言われた警告を思い出す。
(いや……何考えてるんだ、俺。そんなことをしたら精神に異常が出たり、理性を失う可能性だってある。マティアスはたまたま元の人格を保てたが、俺まで同じように手術成功するとは限らない……!)
「どうした、ハンニバル? 考え事でもしてるのか?」
立ち上がったまま茫然とするハンニバルに、マティアスは心配そうに声を掛ける。
「いや、お前が急に強くなったからびっくりしていただけだぜ。俺も人狼の血でもっと強くなれたらなぁ~……なんてな」
ハンニバルは冗談を交えて笑いながら返事をしたが、マティアスは真剣な表情になってハンニバルの両肩に手を置く。
「何を言っているんだ! お前自身も、あの研究所の医者も言ってただろう? 改造手術は精神に弊害が及ぶ可能性があると。ハンニバル、お前はお前のままでいてくれ!」
マティアスはハンニバルに今のままでいて欲しいと必死に訴えかける。
実はマティアスは改造手術による精神への影響が全く無かったわけでは無い。
本人は気づいていないが、彼は改造手術と引き替えに少年時代の記憶を失っていたのだ。
それにより、生き別れの弟を探すという最初の目的も忘れてしまっていた。
「あー、分かったよ! 冗談だって! 俺はあいにく犬より猫の方が好きだから、人狼の血を打たれるなんてまっぴらごめんだ。だから安心しろ」
ハンニバルもマティアスの訴えに応え、同じようにマティアスの両肩に手を置きながら返事をした。
互いに手を離した後、マティアスは今度はハンニバルが背負っているバズーカを貸して欲しいと頼んだ。
ハンニバルが扱うバズーカは重量・反動共に凄まじく、普通の人間では扱えない武器だ。
だが、今のマティアスならそんなバズーカも軽々と使いこなせるかもしれない。
ハンニバルは自分の愛用しているバズーカをマティアスに渡した。
マティアスはバズーカを構え、狙いを定めつつ遠くにある山を狙って砲弾を放つ。
すると、砲弾は狙った箇所に的確に命中した。マティアスは筋力だけでなく、視力も大幅に向上していたのだ。
「すげぇじゃねぇか! あんな遠くの山を狙い撃つなんてよ!」
「自分でも驚いたよ。私の体はどうなってしまったんだ」
マティアスは短期間の間に急に強くなってしまった自分に驚きを隠せなかった。
マティアスはバズーカをハンニバルに返し、力試しを終えたところで2人は軍事基地へ戻る。
軍事基地に到着すると、2人は司令室へ向かい、ウィリアム司令官にマティアスの生存報告と改造人間になったことを伝えた。
「マティアスが強くなって戻って来たとは、とても心強いことだ。もはや戦争は終結し、これ以上、諸君を身の危険に晒すような任務は来ないと思うが、万が一の時はとても頼りにしているぞ」
「ありがたきお言葉です。例え戦争が終結し平和が訪れようとも、私たちはこれからも軍の為に全力を尽くします」
マティアスは丁寧に返事をし、今後も軍の為に戦い続けることを誓った。
2人はウィリアム司令官への報告を終えて司令室を後にすると、次は軍事基地内にある武器屋へ向かう。
マティアスは自分に合った新しい武器が欲しいそうだ。
ハンニバルはそんなマティアスの為に、通常の兵士では扱えない特殊な重火器を取り揃える武器屋へ案内した。
武器屋の中へ入ると、広々とした部屋に巨大な重火器がいくつも並べられており、奥には武器職人と思われる商人がいる。
並べられている武器は、どれも普通の人間では持ち運ぶことすら困難な重量感溢れるものばかりだ。
商人はハンニバルを見かけると声を掛けてきた。
「ハンニバル、久しぶりだな。そろそろ新しい武器に変えるのかい?」
「いや、今日はこいつの武器を探しに来たぜ。……でも俺のバズーカも古いからそろそろ買い換えようかな」
「初めまして、武器商人さん。私は改造人間になったばかりのマティアス・マッカーサーだ。威力と機能性を重視した武器を探しに来た」
2人は商人に挨拶をし、商品を物色し始める。
ハンニバルは自分の身の丈程の大きさにもなる巨大なバズーカを選んだ。総重量は100kgを超え、高威力の砲弾だけでなく火炎放射も発射可能なバズーカだ。
一方、マティアスも巨大なバズーカを選んでいた。ハンニバルが選んだバズーカと比べるとやや小型で威力は劣るが、砲撃や火炎放射に加え、ガトリング砲にも切り替えが可能な可変式のバズーカだ。
マティアスが選んだバズーカは、相当なパワーと器用さを持っていなければ使いこなせないとのことだ。
2人はお気に入りの武器を選んで購入し、今まで使っていた武器を買い取ってもらった。
大きな買い物だったが、数々の危険な任務をこなして高い報酬を得ていた2人にとっては金銭面は気にならなかった。
武器屋を出ると、2人は万が一の戦いに備える為、軍事基地の外に出て新しい武器を扱う練習を始めた。
戦争は終結しても自分たちの戦いはまだ終わらない……2人はそんな予感がしていた。
マティアスは改造手術後にまだ一度も戦っていないが、今までとは比べ物にならないほどの力が身についていることは実感していた。
「ハンニバル、改造人間となった私の力を見てくれないか?」
「あぁ、ちょうど俺もお前がどれだけ強くなったか見てみたいと思ってたところだぜ。……ほら、ガードしてるから思いっきり掛かって来な」
ハンニバルは両手の平をマティアスの目の前に向け、ガード体勢になる。
マティアスはハンニバルから少し離れた後、ハンニバルに向けて渾身のパンチを放つ。
ハンニバルは両手でガードするが、怪力自慢の彼ですら数歩後退するほどの威力だった。
「なかなかのパワーじゃねぇか! 今度は俺に蹴りを食らわせてみろ」
パワーが大幅に向上したマティアスに驚くハンニバル。再びガード体勢になり、マティアスの攻撃を待ち構えた。
マティアスはさっきよりもハンニバルとの距離を空け、見切ることすら出来ないほどの素早い飛び蹴りをハンニバルに向けて放つ。
パワーもスピードも大幅に上がったマティアスの飛び蹴りを食らったハンニバルは、後ろに吹っ飛んで転倒してしまう。
マティアスも思わずハンニバルの元へ駆けつけた。
「大丈夫か!?」
「いてて……。お前、急に強くなりすぎじゃないか? あの人狼の血をちょこっと注入されただけでこんなに変わるんだな」
ハンニバルは痛みで腹を抑えつつ、ゆっくり起き上がる。同時にマティアスの戦闘力が自分を上回ってしまったのではないかと薄々感じていた。
これまでは総合的な戦闘力はマティアスよりもハンニバルが上だった。
しかし、マティアスが人狼の血を投与され改造人間になったことで立場が逆転してしまった。
ハンニバルは自分も人狼の血を投与してもらえばもっと強くなれるのではないかと考えたが、先日オスカーに言われた警告を思い出す。
(いや……何考えてるんだ、俺。そんなことをしたら精神に異常が出たり、理性を失う可能性だってある。マティアスはたまたま元の人格を保てたが、俺まで同じように手術成功するとは限らない……!)
「どうした、ハンニバル? 考え事でもしてるのか?」
立ち上がったまま茫然とするハンニバルに、マティアスは心配そうに声を掛ける。
「いや、お前が急に強くなったからびっくりしていただけだぜ。俺も人狼の血でもっと強くなれたらなぁ~……なんてな」
ハンニバルは冗談を交えて笑いながら返事をしたが、マティアスは真剣な表情になってハンニバルの両肩に手を置く。
「何を言っているんだ! お前自身も、あの研究所の医者も言ってただろう? 改造手術は精神に弊害が及ぶ可能性があると。ハンニバル、お前はお前のままでいてくれ!」
マティアスはハンニバルに今のままでいて欲しいと必死に訴えかける。
実はマティアスは改造手術による精神への影響が全く無かったわけでは無い。
本人は気づいていないが、彼は改造手術と引き替えに少年時代の記憶を失っていたのだ。
それにより、生き別れの弟を探すという最初の目的も忘れてしまっていた。
「あー、分かったよ! 冗談だって! 俺はあいにく犬より猫の方が好きだから、人狼の血を打たれるなんてまっぴらごめんだ。だから安心しろ」
ハンニバルもマティアスの訴えに応え、同じようにマティアスの両肩に手を置きながら返事をした。
互いに手を離した後、マティアスは今度はハンニバルが背負っているバズーカを貸して欲しいと頼んだ。
ハンニバルが扱うバズーカは重量・反動共に凄まじく、普通の人間では扱えない武器だ。
だが、今のマティアスならそんなバズーカも軽々と使いこなせるかもしれない。
ハンニバルは自分の愛用しているバズーカをマティアスに渡した。
マティアスはバズーカを構え、狙いを定めつつ遠くにある山を狙って砲弾を放つ。
すると、砲弾は狙った箇所に的確に命中した。マティアスは筋力だけでなく、視力も大幅に向上していたのだ。
「すげぇじゃねぇか! あんな遠くの山を狙い撃つなんてよ!」
「自分でも驚いたよ。私の体はどうなってしまったんだ」
マティアスは短期間の間に急に強くなってしまった自分に驚きを隠せなかった。
マティアスはバズーカをハンニバルに返し、力試しを終えたところで2人は軍事基地へ戻る。
軍事基地に到着すると、2人は司令室へ向かい、ウィリアム司令官にマティアスの生存報告と改造人間になったことを伝えた。
「マティアスが強くなって戻って来たとは、とても心強いことだ。もはや戦争は終結し、これ以上、諸君を身の危険に晒すような任務は来ないと思うが、万が一の時はとても頼りにしているぞ」
「ありがたきお言葉です。例え戦争が終結し平和が訪れようとも、私たちはこれからも軍の為に全力を尽くします」
マティアスは丁寧に返事をし、今後も軍の為に戦い続けることを誓った。
2人はウィリアム司令官への報告を終えて司令室を後にすると、次は軍事基地内にある武器屋へ向かう。
マティアスは自分に合った新しい武器が欲しいそうだ。
ハンニバルはそんなマティアスの為に、通常の兵士では扱えない特殊な重火器を取り揃える武器屋へ案内した。
武器屋の中へ入ると、広々とした部屋に巨大な重火器がいくつも並べられており、奥には武器職人と思われる商人がいる。
並べられている武器は、どれも普通の人間では持ち運ぶことすら困難な重量感溢れるものばかりだ。
商人はハンニバルを見かけると声を掛けてきた。
「ハンニバル、久しぶりだな。そろそろ新しい武器に変えるのかい?」
「いや、今日はこいつの武器を探しに来たぜ。……でも俺のバズーカも古いからそろそろ買い換えようかな」
「初めまして、武器商人さん。私は改造人間になったばかりのマティアス・マッカーサーだ。威力と機能性を重視した武器を探しに来た」
2人は商人に挨拶をし、商品を物色し始める。
ハンニバルは自分の身の丈程の大きさにもなる巨大なバズーカを選んだ。総重量は100kgを超え、高威力の砲弾だけでなく火炎放射も発射可能なバズーカだ。
一方、マティアスも巨大なバズーカを選んでいた。ハンニバルが選んだバズーカと比べるとやや小型で威力は劣るが、砲撃や火炎放射に加え、ガトリング砲にも切り替えが可能な可変式のバズーカだ。
マティアスが選んだバズーカは、相当なパワーと器用さを持っていなければ使いこなせないとのことだ。
2人はお気に入りの武器を選んで購入し、今まで使っていた武器を買い取ってもらった。
大きな買い物だったが、数々の危険な任務をこなして高い報酬を得ていた2人にとっては金銭面は気にならなかった。
武器屋を出ると、2人は万が一の戦いに備える為、軍事基地の外に出て新しい武器を扱う練習を始めた。
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