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第2章 軍の任務
第15話 2人へのビデオレター
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マティアスとハンニバルは軍事基地に到着すると、コックを連れて司令室へ向かった。
「只今、任務から帰って来たぜ。戦場の敵を一掃、そして敵の補給基地を見つけて破壊してきたぜ。……それと、こいつは敵の補給基地から引っこ抜いてきたコックなんだが、この軍事基地で働かせてやっても良いよな? こいつの料理は超絶品だぜ!」
ハンニバルが任務を報告し、コックの紹介をした。
「初めまして、司令官! オイラはあちらの軍で料理人をやっていたコックと申します! 低賃金でこき使われていて困っていたところを、こちらの方々が助けてくれました!」
コックは元気よく自己紹介をした。劣悪な労働環境から解放され、とても活き活きした様子だ。
「お前、本名までコックだったのかよ!?」
「意外だな。だが、そのおかげで安心してコックと呼べるじゃないか」
マティアスとハンニバルはコックという名前が本名だと知って驚いていた。
「初めまして、コック。私はこの軍事基地の司令官を務めるウィリアムだ。この軍事基地は食堂の料理人が不足しているから、ちょうど人手を探していたところだよ。君には是非、うちの基地で働いてもらいたい」
「ありがたき幸せです! 料理の腕には自信がありますから、ここの兵士さんたちを満足させられるように精一杯がんばります!」
ウィリアム司令官が手厚くコックを歓迎すると、コックは自分の誠意をアピールしながら返事をした。
「それからハンニバルとマティアス、戦場の敵を一掃するだけでなく、補給基地を見つけて撃破するとは本当によくやってくれた。これで敵も戦いを続けられなくなるだろう」
「よし、これで戦争終結も目の前だな! やっと平和に暮らせるってわけだ!」
ウィリアム司令官の言葉を聞いて浮かれるハンニバル。
しかし、マティアスは浮かれている場合じゃないと言わんばかりに真剣な表情で口を開く。
「いや、生物兵器や人間兵器たちを作っていた科学者を取り逃がしてしまっただろう? 研究所を破壊出来たとはいえ、奴を逃がしてしまった以上、報復を仕掛けてくる可能性が高いぞ」
マティアスはあの科学者の老人に逃げられてしまったことをずっと気にしていた。
研究所を破壊したとしても、また別の場所に拠点を作られてしまえば、あの巨大ゴリラのような化け物を再び作られてしまう可能性もある。
「オズワルド博士はあのままではどこかで身を隠すしか無く、実験を続けることも出来ないでしょう。しかし、あの男は改造人間達で構成された最強の傭兵部隊を従えています。奴らが攻めてきたら、巨大生物兵器を倒したあなた達でも勝てる保証は無いですよ……」
コックはその最強の傭兵部隊のことを思い出したのか、怯えた様子で話した。
その言葉通りなら、オズワルドという名の科学者に残された道は、こちらの軍に見つからないように隠居生活をするか、傭兵部隊を連れてこちらに攻撃を仕掛けるしかない。
もしオズワルドが傭兵部隊と共に攻撃を仕掛けてきた場合、あの巨大ゴリラよりも強い敵と戦うことを覚悟しなければならないだろう。
「その傭兵部隊とやらが攻めてきても、俺より強い改造人間なんていないだろ。もしもの時は俺達が返り討ちにしてやるぜ! だろ? マティアス?」
「あぁ、私達は共にあの巨大モンスターを倒すことが出来たんだ。今更人間ごときが攻めて来ても怖くは無い」
一時期自信を無くしていたマティアスも、巨大ゴリラとの戦いで活躍出来たことで自信を取り戻していた。
「それでこそ諸君だ。次の任務の情報が入り次第また連絡するから、それまでゆっくり休んでくれ。では解散だ」
ウィリアム司令官が解散の指示を出すと、3人は敬礼し、司令室を後にした。
マティアスとハンニバルはコックを連れて軍事基地内の案内をし始める。
今まで狭くて暗い食糧倉庫で仕事をしていたコックにとって、広々とした軍事基地はとても居心地が良かった。
何より生活に必要なものを全て軍事基地内や周辺の施設で調達出来ることに感激していた。
軍事基地内の案内を終えると、2人はコックが住む場所となる兵舎へ案内する。
マティアスとハンニバルは軍事基地の中にある部屋に住んでいるが、一部の階級が高い兵士を除く通常の兵士と職員は、軍事基地の隣にある兵舎に住むのが一般的だ。
こちらの兵舎も軍事基地の中にある部屋と同じく、生活に必要なものは全て揃っている。
「ここがオイラの部屋ですね! オイラ、自分の部屋を用意してもらったのは生まれて初めてなので嬉しいです!」
「そうだよな。私も初めて軍事基地に来た時は、自分の部屋を持てたことに喜びを感じたよ」
住まいを用意してもらえて喜ぶコックを見て、マティアスも初めて軍事基地に入った時のワクワク感を思い出しながら微笑んでいた。
「みんな疲れているだろ? 今日はゆっくり休もうぜ。コックは何か困ったことがあったらここに連絡してくれ」
ハンニバルはそう言って、自分の連絡先が記入されたメモをコックに渡す。
2人はコックと別れて兵舎を後にすると軍事基地へ戻っていった。
その後、一緒に食堂で食事を済ませた後は、各自の部屋でゆっくり休息を取ったのであった。
その後もしばらくの間は新たな任務の連絡も無く、2人は戦闘続きだった日々が嘘のようにゆったりとした時間を過ごしていた。
軍人としての仕事が無い間でも基本給をもらえるが、2人は決してダラダラと休暇を過ごしていたわけではない。
万が一の強敵の襲撃に備えて、トレーニングで己を鍛えていた。
そして、前回の任務を終えた日の1週間後。2人の元に司令室から連絡が来た。
まさかオズワルドが傭兵部隊を連れて攻撃を仕掛けてきたのだろうか。
2人は司令室へ向かい、ウィリアム司令官と対面する。
「おはよう、ウィリアム司令官! 俺達をここに呼んだってことは、ついに奴らが動き出したってことなのか?」
最初に挨拶をしたのはハンニバルだった。彼は久しぶりの戦闘だと思って血が騒いでいた。
「落ち着け、ハンニバル。私はまだそんなことは一言も言ってないぞ。今回は諸君へのプレゼントがあって呼んだのだ」
ウィリアム司令官はハンニバルを静止させると、自分の机の上にノート型の"Windows95"とフロッピーを置き、パソコンを起動した。
「実はアーサー大尉の御子息から、諸君へのビデオレターを渡されたのだ」
「アーサー? あの西洋甲冑を集めるのが趣味の変わった男だよな? あいつのガキが俺たちにビデオレターをくれたのか?」
アーサー大尉とは、西洋の騎士の鎧が大好きな軍人だ。年齢は30代半ばから後半くらいで、彼には妻と10歳~11歳くらいの息子がいる。
彼と面識があるのは、ここにいる人物の中ではウィリアム司令官とハンニバルだけだ。
ウィリアム司令官はフロッピーをパソコンにセットし、フロッピーの中に入っているデータの動画ファイルを読み込む。
しばらくすると、パソコンのモニターには騎士の鎧を着た少年の姿が映し出された。
兜を被っていて素顔は見えないが、子供ながらにコスプレを楽しんでいるように見える。
画面に映し出された騎士の格好をした少年が語り始めた。
「オレは勇者! 君達に"ウェアウルフ隊"を倒してもらいたいんだ! いやー、実は偉大なる騎士であるオレの父さんが司令官に『ハンニバル達と一緒にウェアウルフ隊を倒して来い』って言われたらしいんだけどさー、急に怖くなっちゃったみたいで。オレだってあんな危険な戦場なんかに行きたくないし……。だからオレ達親子の代わりにウェアウルフ隊をぶっ殺して欲しいんだよね! 数々の化け物を倒してきた君達なら出来るだろ? それじゃ、頼んだよ!」
その台詞と共に動画は終了した。
「……こいつ、本当に勇者か?」
マティアスとハンニバルは自分たちへのファンレターかと思ってワクワクしていたのに、見事に期待を裏切られた気分だった。
しかし、このビデオメッセージを見る限り、敵の傭兵部隊と戦う日が近づいているということだろう。
「オズワルドが従えている傭兵部隊の名前は"ウェアウルフ隊"と判明した。すまないな、諸君。アーサー大尉にも諸君と共に任務に同行するようにお願いしたのだが、敵の傭兵部隊の名前を聞いた途端に怖気ついてしまってね。だから次の任務も君たち2人にお願いしたい」
ウィリアム司令官も先ほどの動画を見て苦笑しながら言った。
アーサー大尉は軍の中では比較的戦闘力が高い方なのだが、そんな彼が恐れているということは、それだけウェアウルフ隊が恐ろしい部隊だということが分かる。
「さすがアーサーは期待を裏切らないな! マティアス、今回も俺達で頑張っていこうぜ!」
「あぁ、私達はこの時の為に休暇中も己の肉体を鍛えてきたんだ。共に戦おう」
2人は自信に満ちた表情で互いに握手を交わしながら言った。
「ウェアウルフ隊の居場所が特定出来たらまた連絡する。それまでは自由に行動してくれ。では解散だ」
ウィリアム司令官が解散の指示を出すと、2人は敬礼し、司令室を後にする。
2人は次の任務の連絡が来るのを待ち続けながら、日々トレーニングを続けていた。
「只今、任務から帰って来たぜ。戦場の敵を一掃、そして敵の補給基地を見つけて破壊してきたぜ。……それと、こいつは敵の補給基地から引っこ抜いてきたコックなんだが、この軍事基地で働かせてやっても良いよな? こいつの料理は超絶品だぜ!」
ハンニバルが任務を報告し、コックの紹介をした。
「初めまして、司令官! オイラはあちらの軍で料理人をやっていたコックと申します! 低賃金でこき使われていて困っていたところを、こちらの方々が助けてくれました!」
コックは元気よく自己紹介をした。劣悪な労働環境から解放され、とても活き活きした様子だ。
「お前、本名までコックだったのかよ!?」
「意外だな。だが、そのおかげで安心してコックと呼べるじゃないか」
マティアスとハンニバルはコックという名前が本名だと知って驚いていた。
「初めまして、コック。私はこの軍事基地の司令官を務めるウィリアムだ。この軍事基地は食堂の料理人が不足しているから、ちょうど人手を探していたところだよ。君には是非、うちの基地で働いてもらいたい」
「ありがたき幸せです! 料理の腕には自信がありますから、ここの兵士さんたちを満足させられるように精一杯がんばります!」
ウィリアム司令官が手厚くコックを歓迎すると、コックは自分の誠意をアピールしながら返事をした。
「それからハンニバルとマティアス、戦場の敵を一掃するだけでなく、補給基地を見つけて撃破するとは本当によくやってくれた。これで敵も戦いを続けられなくなるだろう」
「よし、これで戦争終結も目の前だな! やっと平和に暮らせるってわけだ!」
ウィリアム司令官の言葉を聞いて浮かれるハンニバル。
しかし、マティアスは浮かれている場合じゃないと言わんばかりに真剣な表情で口を開く。
「いや、生物兵器や人間兵器たちを作っていた科学者を取り逃がしてしまっただろう? 研究所を破壊出来たとはいえ、奴を逃がしてしまった以上、報復を仕掛けてくる可能性が高いぞ」
マティアスはあの科学者の老人に逃げられてしまったことをずっと気にしていた。
研究所を破壊したとしても、また別の場所に拠点を作られてしまえば、あの巨大ゴリラのような化け物を再び作られてしまう可能性もある。
「オズワルド博士はあのままではどこかで身を隠すしか無く、実験を続けることも出来ないでしょう。しかし、あの男は改造人間達で構成された最強の傭兵部隊を従えています。奴らが攻めてきたら、巨大生物兵器を倒したあなた達でも勝てる保証は無いですよ……」
コックはその最強の傭兵部隊のことを思い出したのか、怯えた様子で話した。
その言葉通りなら、オズワルドという名の科学者に残された道は、こちらの軍に見つからないように隠居生活をするか、傭兵部隊を連れてこちらに攻撃を仕掛けるしかない。
もしオズワルドが傭兵部隊と共に攻撃を仕掛けてきた場合、あの巨大ゴリラよりも強い敵と戦うことを覚悟しなければならないだろう。
「その傭兵部隊とやらが攻めてきても、俺より強い改造人間なんていないだろ。もしもの時は俺達が返り討ちにしてやるぜ! だろ? マティアス?」
「あぁ、私達は共にあの巨大モンスターを倒すことが出来たんだ。今更人間ごときが攻めて来ても怖くは無い」
一時期自信を無くしていたマティアスも、巨大ゴリラとの戦いで活躍出来たことで自信を取り戻していた。
「それでこそ諸君だ。次の任務の情報が入り次第また連絡するから、それまでゆっくり休んでくれ。では解散だ」
ウィリアム司令官が解散の指示を出すと、3人は敬礼し、司令室を後にした。
マティアスとハンニバルはコックを連れて軍事基地内の案内をし始める。
今まで狭くて暗い食糧倉庫で仕事をしていたコックにとって、広々とした軍事基地はとても居心地が良かった。
何より生活に必要なものを全て軍事基地内や周辺の施設で調達出来ることに感激していた。
軍事基地内の案内を終えると、2人はコックが住む場所となる兵舎へ案内する。
マティアスとハンニバルは軍事基地の中にある部屋に住んでいるが、一部の階級が高い兵士を除く通常の兵士と職員は、軍事基地の隣にある兵舎に住むのが一般的だ。
こちらの兵舎も軍事基地の中にある部屋と同じく、生活に必要なものは全て揃っている。
「ここがオイラの部屋ですね! オイラ、自分の部屋を用意してもらったのは生まれて初めてなので嬉しいです!」
「そうだよな。私も初めて軍事基地に来た時は、自分の部屋を持てたことに喜びを感じたよ」
住まいを用意してもらえて喜ぶコックを見て、マティアスも初めて軍事基地に入った時のワクワク感を思い出しながら微笑んでいた。
「みんな疲れているだろ? 今日はゆっくり休もうぜ。コックは何か困ったことがあったらここに連絡してくれ」
ハンニバルはそう言って、自分の連絡先が記入されたメモをコックに渡す。
2人はコックと別れて兵舎を後にすると軍事基地へ戻っていった。
その後、一緒に食堂で食事を済ませた後は、各自の部屋でゆっくり休息を取ったのであった。
その後もしばらくの間は新たな任務の連絡も無く、2人は戦闘続きだった日々が嘘のようにゆったりとした時間を過ごしていた。
軍人としての仕事が無い間でも基本給をもらえるが、2人は決してダラダラと休暇を過ごしていたわけではない。
万が一の強敵の襲撃に備えて、トレーニングで己を鍛えていた。
そして、前回の任務を終えた日の1週間後。2人の元に司令室から連絡が来た。
まさかオズワルドが傭兵部隊を連れて攻撃を仕掛けてきたのだろうか。
2人は司令室へ向かい、ウィリアム司令官と対面する。
「おはよう、ウィリアム司令官! 俺達をここに呼んだってことは、ついに奴らが動き出したってことなのか?」
最初に挨拶をしたのはハンニバルだった。彼は久しぶりの戦闘だと思って血が騒いでいた。
「落ち着け、ハンニバル。私はまだそんなことは一言も言ってないぞ。今回は諸君へのプレゼントがあって呼んだのだ」
ウィリアム司令官はハンニバルを静止させると、自分の机の上にノート型の"Windows95"とフロッピーを置き、パソコンを起動した。
「実はアーサー大尉の御子息から、諸君へのビデオレターを渡されたのだ」
「アーサー? あの西洋甲冑を集めるのが趣味の変わった男だよな? あいつのガキが俺たちにビデオレターをくれたのか?」
アーサー大尉とは、西洋の騎士の鎧が大好きな軍人だ。年齢は30代半ばから後半くらいで、彼には妻と10歳~11歳くらいの息子がいる。
彼と面識があるのは、ここにいる人物の中ではウィリアム司令官とハンニバルだけだ。
ウィリアム司令官はフロッピーをパソコンにセットし、フロッピーの中に入っているデータの動画ファイルを読み込む。
しばらくすると、パソコンのモニターには騎士の鎧を着た少年の姿が映し出された。
兜を被っていて素顔は見えないが、子供ながらにコスプレを楽しんでいるように見える。
画面に映し出された騎士の格好をした少年が語り始めた。
「オレは勇者! 君達に"ウェアウルフ隊"を倒してもらいたいんだ! いやー、実は偉大なる騎士であるオレの父さんが司令官に『ハンニバル達と一緒にウェアウルフ隊を倒して来い』って言われたらしいんだけどさー、急に怖くなっちゃったみたいで。オレだってあんな危険な戦場なんかに行きたくないし……。だからオレ達親子の代わりにウェアウルフ隊をぶっ殺して欲しいんだよね! 数々の化け物を倒してきた君達なら出来るだろ? それじゃ、頼んだよ!」
その台詞と共に動画は終了した。
「……こいつ、本当に勇者か?」
マティアスとハンニバルは自分たちへのファンレターかと思ってワクワクしていたのに、見事に期待を裏切られた気分だった。
しかし、このビデオメッセージを見る限り、敵の傭兵部隊と戦う日が近づいているということだろう。
「オズワルドが従えている傭兵部隊の名前は"ウェアウルフ隊"と判明した。すまないな、諸君。アーサー大尉にも諸君と共に任務に同行するようにお願いしたのだが、敵の傭兵部隊の名前を聞いた途端に怖気ついてしまってね。だから次の任務も君たち2人にお願いしたい」
ウィリアム司令官も先ほどの動画を見て苦笑しながら言った。
アーサー大尉は軍の中では比較的戦闘力が高い方なのだが、そんな彼が恐れているということは、それだけウェアウルフ隊が恐ろしい部隊だということが分かる。
「さすがアーサーは期待を裏切らないな! マティアス、今回も俺達で頑張っていこうぜ!」
「あぁ、私達はこの時の為に休暇中も己の肉体を鍛えてきたんだ。共に戦おう」
2人は自信に満ちた表情で互いに握手を交わしながら言った。
「ウェアウルフ隊の居場所が特定出来たらまた連絡する。それまでは自由に行動してくれ。では解散だ」
ウィリアム司令官が解散の指示を出すと、2人は敬礼し、司令室を後にする。
2人は次の任務の連絡が来るのを待ち続けながら、日々トレーニングを続けていた。
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