上 下
16 / 44
第2章 軍の任務

第14話 巨大生物兵器との戦い

しおりを挟む
「フッフッフ……貴様らの相手をするのはこいつじゃ。わしはこんなところで死ぬわけには行かん」

 老人がリモコンを手に持ちボタンを押すと、天井から穴が開き、巨大なゴリラのような生物が落ちてきた。
 体高4メートルを超える巨体で、両手首には機械の腕輪が、背中には伸縮可能な砲台が設置されている。
 マティアスとハンニバルがその圧倒的な巨体を持つゴリラを見て絶句して気を取られている隙に、老人はエレベーターに乗り込んで逃げてしまった。

「あっ……! あのジジイ、どさくさに紛れて逃げやがったな!」
「ハンニバル、来るぞ!」

 巨大ゴリラは立ち上がって咆哮を上げた。その咆哮だけでこの部屋全体が揺れ、2人は思わず耳を塞ぐ。
 2人が怯んでいる隙に巨大ゴリラはこちらに向かって前進しながら連続パンチを繰り出してきた。
 その攻撃に周りの培養カプセルや機械も巻き込まれ、次々と破壊されていく。
 2人は左右に避け、双方から銃撃と砲撃を放とうとしたが、その瞬間、巨大ゴリラは両手の拳を地面を叩きつけた。
 その衝撃で地面は大きく揺れ、2人は体勢を崩してしまう。
 2人が体勢を崩している間に、巨大ゴリラは少し立ち上がり腕を上に挙げ、全身を横に回転させながら2人を殴り飛ばした。
 2人は大きく吹っ飛ばされたが、攻撃を受ける瞬間にガードしていたのですぐに体勢を立て直す。
 2人は今度こそ巨大ゴリラにダメージを与えようと、マティアスは銃撃を、ハンニバルは砲撃を放つ。
 巨大ゴリラは一瞬怯んだが、あまりダメージを受けていない。それでも巨大ゴリラを倒すには、少しずつダメージを与え続けるしか方法は無い。
 2人は攻撃のチャンスが続く限り、ひたすら銃撃と砲撃を連射し続ける。
 しばらく攻撃を続けていると、巨大ゴリラは怒りの咆哮を上げながら高くジャンプした。
 巨大ゴリラは両手首の機械の腕輪から大きな雷球を作り出し、それを空中からハンニバル目掛けて発射する。
 ハンニバルは横に前転回避してなんとか直撃を免れ、雷球が直撃した床は大きく凹んでいた。

「ふう、危ねぇ……。こんな化け物がこの世に存在していたとは予想外だぜ」
「ハンニバル、敵の攻撃後は大きな隙が出来る。その隙を狙って少しずつダメージを与えるんだ。ヒット&アウェイで行くぞ」
「あぁ、分かったぜ!」

 巨大ゴリラは地面に着地すると、少しの間硬直した。その僅かな攻撃チャンスも2人は見逃さず、攻撃を続ける。
 巨大ゴリラは2人の攻撃を受けつつも、再びハンニバルがいる方向に振り向いた。
 ハンニバルばかりが狙われるのは、マティアスよりも攻撃力が高いからだろう。
 ハンニバルは耐久力でもマティアスより優れているので、2人にとっても好都合だった。
 マティアスは引き続き攻撃に専念し、機関銃を撃ち続ける。
 巨大ゴリラはハンニバルに向かって4足歩行で突進し、ある程度接近したところでジャンプしてハンニバル目掛けてパンチを繰り出した。
 ハンニバルは巨大ゴリラの足元を前転回避で潜って背後に回る。
 巨大ゴリラのパンチが壁に勢いよく命中し、その衝撃で大きな穴が開き、部屋全体が揺れていた。

「背中がお留守だぜ!」

 ハンニバルは巨大ゴリラの背後から砲撃を放とうとしたその時、巨大ゴリラはバックステップをしてハンニバルを後ろに大きく蹴り上げた。
 蹴り飛ばされたハンニバルは着地すると同時に急いで体勢を立て直す。

「ちっ! やるじゃねぇか! だが、俺もアメリカ軍の最高傑作の人間兵器と呼ばれた男だ。獣ごときに負けるわけにはいかねぇぜ!」

 ハンニバルは巨大な生物兵器を目の前にしても、余裕で楽しそうな表情をしている。
 巨大ゴリラはそのまま高くジャンプし、空中でハンニバルがいる向きに方向転換した。
 両手首の機械の腕輪から電流を発生させて自身の身体を電流でまとい、そして縦に高速回転しながらハンニバル目掛けて激突してきた。
 ハンニバルは回避して間一髪で直撃を免れたが、電流をまとってのその攻撃は範囲が広く、激突時の衝撃で彼は吹っ飛ばされてしまう。

「ハンニバル、大丈夫か!?」
「ちょっと体が痺れちまったが、これくらい何ともないぜ!」

 ハンニバルは起き上がると、敵の次の攻撃の瞬間を待ちながら様子をうかがっていた。
 巨大ゴリラは今度はマティアスがいる方向に振り向き、両手を地面につけると、巨大ゴリラの背中に設置されている砲台の砲口が光り始める。
 砲口から電流が流れたかと思ったその時、巨大ゴリラの砲台から極太の雷レーザーが発射された。
 幸い予備動作が長かった為、マティアスは容易に避けることが出来た。
 巨大ゴリラの放つ雷レーザーは少しずつ向きを変えながら、周りの壁や障害物を破壊していく。
 雷レーザーは少しずつ薙ぎ払いながらハンニバルがいる位置に近づいてきた。
 ハンニバルはその場から離れようとするが、先ほどの電流攻撃の痺れが残っていたせいで、足を上手く動かすことが出来ない。
 
「くそっ! こんな時に痺れやがって! 何やってんだ、俺!」

 ハンニバルは頑張って足を動かすが、この歩行速度では雷レーザーを避けることは不可能だろう。
 雷レーザーがハンニバルに近づいてきたその時、巨大ゴリラの目の前に閃光が走った。
 マティアスが巨大ゴリラの顔面に向けてスタングレネードを投げたのだ。
 雷レーザーの発射が止まり、巨大ゴリラは眩しさのあまり悲鳴をあげ、目を塞いでいた。

「今だ! 集中攻撃を仕掛けるぞ!」
「やるじゃねぇか、マティアス! 俺もたった今、痺れが取れたところだから攻めに入るぜ!」

 マティアスは引き続き銃撃を放つ。体の痺れが取れたハンニバルは勢いよくジャンプし、巨大ゴリラの背中に飛び乗った。巨大ゴリラはハンニバルを振り落とそうと必死に暴れる。
 ハンニバルは巨大ゴリラに振り落とされること無く背中にしがみつき、そこに設置されている砲台を殴り始めた。

「ゴリラの癖に良いモン持ってんじゃねーか。破壊し甲斐があるぜ!」

 ハンニバルは何度も砲台を殴り続け、巨大ゴリラの武器を破壊することに成功した。
 巨大ゴリラは背中の上にいるハンニバルを両手で捕まえようとするが、ハンニバルは今度は巨大ゴリラの手が届かない位置から後頭部を何度も殴る。

「やっぱり俺は遠くから攻撃するよりも、こっちの方が性に合うぜ!」

 2人の怒涛の攻撃により、巨大ゴリラへのダメージはかなり蓄積されていた。
 そして、巨大ゴリラはあまりのダメージについに転倒した。
 横向きに倒れながらもがき続けているが、動作は遅く、これ以上抵抗する力は残っていないと思われる。
 敵が弱った状態なら近づいても大丈夫だと判断したマティアスは巨大ゴリラに近づき、ナイフを取り出して胸をメッタ刺しにする。
 胸は機械化していないのか、刺すたびに血が噴き出していた。
 一方ハンニバルは巨大ゴリラの顔に近づき、何度も顔面を殴り続けた。ハンニバルの怒涛の殴りで巨大ゴリラの顔面は徐々に変形していく。
 そしてついに、巨大ゴリラは完全に動きを止めて息絶えた。
 地上に放たれていれば多数の犠牲者を出していたであろう巨大なモンスターを、大きな被害が出る前に倒すことが出来たのは大きかった。

「今回はマティアスにはかなり助けられたぜ! 俺1人だけだったらかなり苦戦していただろうな」
「お互いよく頑張ったな。後はこの地下室の物資を全て破壊して終わりだ」

 2人は笑顔で拳をぶつけ合いながら勝利を祝う。
 この部屋の研究所も巨大ゴリラとの戦闘によって無残に破壊されてしまっているので、敵はこれ以上生物兵器の開発を続けられないだろう。
 科学者の老人に逃げられてしまったのは心残りだが、いずれどこかで再会する時が来たら、今度こそは始末してやろうと2人は思っていた。
 2人は今まで通って来た部屋に戻り、1部屋ずつ物資を爆弾で爆破していく。
 全ての物資を爆破した後、2人に料理を提供してくれたコックと再会した。

「2人とも、無事で本当に良かったです! まさか本当にあの化け物を倒したんですか!?」

 体をロープで縛られたままのコックは、驚きと喜びに満ちた表情で2人を見つめていた。

「あぁ、なかなかの強敵だったが、2人で力を合わせてなんとか倒すことが出来た。科学者には逃げられてしまったがな。待っていろ。今、ロープを解いてやる」

 マティアスはコックの体を縛っているロープを解く。

「やった! これでオイラは自由だ!」

 コックはやっと解放された思いで飛び跳ねていた。ハンニバルもそんなコックに声を掛ける。

「じゃあ、コックも俺達の軍事基地へ帰ろうぜ。ここにある食材は残念だが爆破する。食材なら軍事基地にいくらでもあるから問題無いだろ」
「それはもったいないなぁ~。でも、オイラはそっちで料理人として輝けるなら問題無いですよ!」

 残りの部屋の物資も全て爆破し、3人は最初に入って来た地上への階段を上った。
 外に出ると敵は1人もいなかったので、そのまま自分たちの軍用車が止めてある場所へ向かうことが出来た。
 ハンニバルは運転席、マティアスは助手席、そしてコックを後ろの後部座席に座らせた状態で車を発進させる。コックは初めて乗る軍用車に興味津々だ。
 ハンニバルはさすがに戦闘続きで疲れているのか、いつものように猛スピードでは走らなかった。

「なんだ、ハンニバル。今日はやけに落ち着いた運転だな」
「こんな疲れた体で飛ばす気にはならねーよ……。基地に帰ったらゆっくり休もうぜ」

 3人はゆっくり軍事基地へ帰って行った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

女子竹槍攻撃隊

みらいつりびと
SF
 えいえいおう、えいえいおうと声をあげながら、私たちは竹槍を突く訓練をつづけています。  約2メートルほどの長さの竹槍をひたすら前へ振り出していると、握力と腕力がなくなってきます。とてもつらい。  訓練後、私たちは山腹に掘ったトンネル内で休憩します。 「竹槍で米軍相手になにができるというのでしょうか」と私が弱音を吐くと、かぐやさんに叱られました。 「みきさん、大和撫子たる者、けっしてあきらめてはなりません。なにがなんでも日本を守り抜くという強い意志を持って戦い抜くのです。私はアメリカの兵士のひとりと相討ちしてみせる所存です」  かぐやさんの目は彼女のことばどおり強い意志であふれていました……。  日米戦争の偽史SF短編です。全4話。

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

闇に飲まれた謎のメトロノーム

八戸三春
SF
[あらすじ:近未来の荒廃した都市、ノヴァシティ。特殊な能力を持つ人々が存在し、「エレメントホルダー」と呼ばれている。彼らは神のような組織によって管理されているが、組織には闇の部分が存在する。 主人公は記憶を失った少年で、ノヴァシティの片隅で孤独に暮らしていた。ある日、彼は自分の名前を求めて旅に出る。途中で彼は記憶を操作する能力を持つ少女、アリスと出会う。 アリスは「シンフォニア」と呼ばれる組織の一員であり、彼女の任務は特殊な能力を持つ人々を見つけ出し、組織に連れ戻すことだった。彼女は主人公に協力を求め、共に行動することを提案する。 旅の中で、主人公とアリスは組織の闇の部分や謎の指導者に迫る。彼らは他のエレメントホルダーたちと出会い、それぞれの過去や思いを知ることで、彼らの内面や苦悩に触れていく。 彼らは力を合わせて組織に立ち向かい、真実を追求していく。だが、組織との戦いの中で、主人公とアリスは道徳的なジレンマに直面する。正義と犠牲の間で葛藤しながら、彼らは自分たちの信念を貫こうとする。 ノヴァシティの外に広がる未知の領域や他の都市を探索しながら、彼らの旅はさらなる展開を迎える。新たな組織やキャラクターとの出会い、音楽の力や道具・技術の活用が物語に絡んでくる。 主人公とアリスは、組織との最終決戦に挑む。エレメントホルダーたちと共に立ち上がり、自身の運命と存在意義を見つけるために奮闘する。彼らの絆と信じる心が、世界を救う力となる。 キャラクターの掘り下げや世界の探索、道具や技術の紹介、モラルディレンマなどを盛り込んだ、読者を悲しみや感動、熱い展開に引き込む荒廃SF小説となる。]

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

処理中です...