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突然、幼馴染みのハリーとシルビアが屋敷を訪ねて来た。
2人とは最近は距離を取っていたから、こうして会うのは久し振りだ。
「先触れも無く、突然訪問してくるなんて、そんなに急用なのかしら?」
相変わらずベッタリとくっ付きソファに座る2人を見ると早急な用事が有るとは思えない。
「キャロル。俺達、良い事を思い付いたんだよ!お前にも悪い話ではない事だ」
ハリーの思い付いた事で私に良かった事なんて合ったかしら?
もう悪い話にしか思えないけれど、取り合えずハリーの話を聞いてみる事にした。
侍女のモコナが黙ってお茶を淹れてくれる。
「来年には俺達も学園に入学するだろう?それでさーシルビアの親父が入学する前に婚約者を決めようとしているみたいなんだ。俺は子爵家の四男だから爵位は継げないだろ。だから候補にもあがっていないとシルビアに聞いてね…」
それはシルビアの父ラモン男爵の考えは間違っていない。
娘の事を思えば貴族の嫡男に嫁がせたいのは当然だ。
ラモン男爵家に跡継ぎが居なければハリーが婿に行けば良かったのだろうがシルビアには次期当主となる兄が居る。
しかしシルビアの婚約話が私の良い話なのだろうか?
「それで思い付いたのさっ!キャロル、君は侯爵家の跡取りだよね?」
「そうね。ブライト家には私しか子供は居ないからそうなるわ」
ハリーとシルビアは、2人でニコニコと顔を見合わせてる。
2人の仲睦まじい姿を見せに来ただけなら早く帰って欲しいのだけれど…。
「キャロルは婚約者は決まったの?」
「まだよ。お父様に全てお任せしているから、どうなっているかは聞いていないけれど、きっと探していると思うわ」
私の返事にシルビアの顔が笑顔になる。
何なの?私の婚約者が決まってないのがそんなに嬉しいの!?
「ならば俺と婚約しないか!?」
「はあぁー?ハリー、貴方は何を言っているの?寝言は寝てる時に言うものよ!貴方はシルビアと付き合っているのよね?シルビアはハリーがこんな訳の分からない事を言っているのに何故笑っているのよ!?」
「キャロル、落ち着いて。あのね、私とハリーが結婚したら平民になってしまうのよ。私は平民になるなんて耐えられないの」
爵位を継げない者同士なのだ。そうなるだろう。
それでも騎士や文官になれば爵位は継げなくとも家名は名乗れるし子爵や男爵家の生活位は出来る。
だから爵位を継げない子息は皆、必死になるのだ。
「そこでだ、俺がキャロルと結婚すればブライト侯爵家当主になる。シルビアは妾としてブライト侯爵家に住む。高位貴族なら妾を持っても何も言われないからなっ。どうだ?良い考えだろう」
どこが良い考えなのだ?
2人は良くとも私には何も良い事はない。
「ハリー、貴方はシルビアが好きなのよね?それなのに私と結婚して、その…」
「ああ、閨の事か?それなら大丈夫だ。俺はキャロルと閨を共にする事は無い!俺はシルビアを愛しているんだ。浮気をするつもりは無い。それに…言っちゃあ悪いがお前の様な豚…いやデブ…太った女、無理、俺の息子も立つ気がしねぇー」
豚?デブ?太ったと言い換えだけれど、それ全て同じよね?
「やだぁ~!もうハリーったら本当の事を言ったらキャロルが可哀想でしょう♪一応、女の子なんだから優しくしてあげないとね♪」
私がこの2人から離れた理由。
2人が恋人になったのもあるけれど、いつからか私の事を馬鹿にしからかい始めて面白がる様になったから…。
それまでは2人の事が好きだった。
仲の良い友達だと思っていたのだ。
「はぁー。用事がそれだけなら、もう帰ってくれるかしら?ハリーと婚約するのは御断りよ!金輪際、貴方達と付き合うつもりは無いから、もう2度と屋敷に来ないで頂戴。モコナ、お客様のお帰りよ。玄関までお連れして」
私はお父様にハリーとシルビアの事を話した。
お父様は激怒し、子爵家と男爵家に抗議文を即送った。
両家は青い顔をし慌てて謝罪に来たので、私は「愛する2人を婚約させて下さい」とお願いした。
ハリーは気が付いていないが、シルビアは今の生活が出来ないのならハリーを捨て、男爵が決めた婚約を受ける。
そして泣きながら「父が決めた事には逆らえない」とか言うのだ。
あの女はそういう女だ。
まあ婚約が決まってなければ学園に入ってから獲物を狙おうと考えていたのだろうけれど、そんな事は私が許さない。
今回の事がなければシルビアが何をしようが別に構わなかったけれど、今回のは許せないのだ。
だから2人を婚約させる事にしたの。
お互い好きあってるんだもの結ばせてあげなきゃ。
いくら大嫌いな幼馴染みでも一時は大好きだったんだもの。
幸せになって欲しいわよ、なれるならね♪
えっ?それじゃあハリーが喜ぶだけだって?
ふふふ、あのシルビアが婚約者が居るからと何もしない訳が無いわけないわ。
学園には高位貴族子息が沢山居るのだもの。
シルビアに浮気され裏切られたハリー。
浮気しての婚約破棄となれば慰謝料が発生し当然、男爵家からシルビアは追い出されるわね。
私の事を2人は散々馬鹿にして来たのだもの。
この位の小さな復讐をしても良いでしょう!?
END
*****
最後まで読んで頂き ありがとうございます。
2人とは最近は距離を取っていたから、こうして会うのは久し振りだ。
「先触れも無く、突然訪問してくるなんて、そんなに急用なのかしら?」
相変わらずベッタリとくっ付きソファに座る2人を見ると早急な用事が有るとは思えない。
「キャロル。俺達、良い事を思い付いたんだよ!お前にも悪い話ではない事だ」
ハリーの思い付いた事で私に良かった事なんて合ったかしら?
もう悪い話にしか思えないけれど、取り合えずハリーの話を聞いてみる事にした。
侍女のモコナが黙ってお茶を淹れてくれる。
「来年には俺達も学園に入学するだろう?それでさーシルビアの親父が入学する前に婚約者を決めようとしているみたいなんだ。俺は子爵家の四男だから爵位は継げないだろ。だから候補にもあがっていないとシルビアに聞いてね…」
それはシルビアの父ラモン男爵の考えは間違っていない。
娘の事を思えば貴族の嫡男に嫁がせたいのは当然だ。
ラモン男爵家に跡継ぎが居なければハリーが婿に行けば良かったのだろうがシルビアには次期当主となる兄が居る。
しかしシルビアの婚約話が私の良い話なのだろうか?
「それで思い付いたのさっ!キャロル、君は侯爵家の跡取りだよね?」
「そうね。ブライト家には私しか子供は居ないからそうなるわ」
ハリーとシルビアは、2人でニコニコと顔を見合わせてる。
2人の仲睦まじい姿を見せに来ただけなら早く帰って欲しいのだけれど…。
「キャロルは婚約者は決まったの?」
「まだよ。お父様に全てお任せしているから、どうなっているかは聞いていないけれど、きっと探していると思うわ」
私の返事にシルビアの顔が笑顔になる。
何なの?私の婚約者が決まってないのがそんなに嬉しいの!?
「ならば俺と婚約しないか!?」
「はあぁー?ハリー、貴方は何を言っているの?寝言は寝てる時に言うものよ!貴方はシルビアと付き合っているのよね?シルビアはハリーがこんな訳の分からない事を言っているのに何故笑っているのよ!?」
「キャロル、落ち着いて。あのね、私とハリーが結婚したら平民になってしまうのよ。私は平民になるなんて耐えられないの」
爵位を継げない者同士なのだ。そうなるだろう。
それでも騎士や文官になれば爵位は継げなくとも家名は名乗れるし子爵や男爵家の生活位は出来る。
だから爵位を継げない子息は皆、必死になるのだ。
「そこでだ、俺がキャロルと結婚すればブライト侯爵家当主になる。シルビアは妾としてブライト侯爵家に住む。高位貴族なら妾を持っても何も言われないからなっ。どうだ?良い考えだろう」
どこが良い考えなのだ?
2人は良くとも私には何も良い事はない。
「ハリー、貴方はシルビアが好きなのよね?それなのに私と結婚して、その…」
「ああ、閨の事か?それなら大丈夫だ。俺はキャロルと閨を共にする事は無い!俺はシルビアを愛しているんだ。浮気をするつもりは無い。それに…言っちゃあ悪いがお前の様な豚…いやデブ…太った女、無理、俺の息子も立つ気がしねぇー」
豚?デブ?太ったと言い換えだけれど、それ全て同じよね?
「やだぁ~!もうハリーったら本当の事を言ったらキャロルが可哀想でしょう♪一応、女の子なんだから優しくしてあげないとね♪」
私がこの2人から離れた理由。
2人が恋人になったのもあるけれど、いつからか私の事を馬鹿にしからかい始めて面白がる様になったから…。
それまでは2人の事が好きだった。
仲の良い友達だと思っていたのだ。
「はぁー。用事がそれだけなら、もう帰ってくれるかしら?ハリーと婚約するのは御断りよ!金輪際、貴方達と付き合うつもりは無いから、もう2度と屋敷に来ないで頂戴。モコナ、お客様のお帰りよ。玄関までお連れして」
私はお父様にハリーとシルビアの事を話した。
お父様は激怒し、子爵家と男爵家に抗議文を即送った。
両家は青い顔をし慌てて謝罪に来たので、私は「愛する2人を婚約させて下さい」とお願いした。
ハリーは気が付いていないが、シルビアは今の生活が出来ないのならハリーを捨て、男爵が決めた婚約を受ける。
そして泣きながら「父が決めた事には逆らえない」とか言うのだ。
あの女はそういう女だ。
まあ婚約が決まってなければ学園に入ってから獲物を狙おうと考えていたのだろうけれど、そんな事は私が許さない。
今回の事がなければシルビアが何をしようが別に構わなかったけれど、今回のは許せないのだ。
だから2人を婚約させる事にしたの。
お互い好きあってるんだもの結ばせてあげなきゃ。
いくら大嫌いな幼馴染みでも一時は大好きだったんだもの。
幸せになって欲しいわよ、なれるならね♪
えっ?それじゃあハリーが喜ぶだけだって?
ふふふ、あのシルビアが婚約者が居るからと何もしない訳が無いわけないわ。
学園には高位貴族子息が沢山居るのだもの。
シルビアに浮気され裏切られたハリー。
浮気しての婚約破棄となれば慰謝料が発生し当然、男爵家からシルビアは追い出されるわね。
私の事を2人は散々馬鹿にして来たのだもの。
この位の小さな復讐をしても良いでしょう!?
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